ミチキサイド2
岩の106号室。
ここは、ペンギンブースにある岩場の中に作られた、ペンギン達の住まい。
岩の中をくり抜いて、扉を付けたのが、その住まいだ。
電気を消して、耳にはイヤホン。
そこから流れてくるのは、「となりのト〇ロ」のテーマソングだ。
「……っし、行くか!」
ミチキは、イヤホンを外し、扉から出た。
「おめーら、準備はいいな」
ペンギンブースの中央に、数匹のペンギンが集まっていた。
今日は水族館は休園日で、代わりにダンストーナメントが開催される。
審査員は生田知恵(30才独身)
集まったペンギンは、ミチキを初め、ナオト、ティム、ゴエモンの計4匹。
トオルはまだ、ブレークダンスの習得に手こずっている。
その為、初戦はミチキに任されることとなった。
「ナオト、ミチキ、前に出な」
ミチキの心臓が早鐘を打つ。
3Dアニメのごとく、ハートマークが胸から飛び出しそうだ。
ミチキとナオトが向かい合う。
すると、ナオトが軽快な口調でミチキをディスり始めた。
「おめーペンギン、鳥類のクセしてダンスなんて、超、ナメてる、超、ベリバ」
ナオトが口ずさむのは、いわゆるラップ。
ミチキは、しめた、と思った。
(何を勘違いしたのか、ダンストーナメントをラップトーナメントだと勘違いしてやがる。 もらったぜ!)
知恵が、まだ勝負は始まってない、と注意を促す。
「ったく、血の気の多い奴らだな。 今から勝負のルールを説明すっから、良く聞けよ。 試合は、ダンスダンスレボリューションで高得点を叩き出した方の勝ちだ、いいな?」
「……は?」
知恵が黒い布を剥ぎ取ると、そこにはダンスダンスレボリューションの装置一式が置かれている。
四方に矢印の描かれたシートが2つ。
中央には、液晶ディスプレイ。
訳も分からず、2匹がシートの上に乗ると、音楽が流れ始めた。
更に、ディスプレイを見ていると、突然、矢印が上から流れてきた。
「上 下 下 右」
「わっ、わっ、わっ」
慌てふためくも、その矢印の通り、シートに描かれている矢印を踏む。
GOOD! という文字がディスプレイに映し出された。
「二人とも、ナイス! でも、今のは序の口だぜ」
更に、矢印が流れてくる。
「上 上 星 下 下 跳」
「ちょっ……」
上、上、までは良かったものの、星、という文字に戸惑う。
苦し紛れに、左右の手を開いて、「星」マークを体で表現、更に、跳、でその場からジャンプ。
NICE! の文字がディスプレイに浮かぶ。
「オーケー、スピードアップだ!」