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手土産

 手土産かぁ、とトオルが独りごちていると、アザラシが言った。


「まあ、手土産なんて本当はいらねーのかもだけど、俺が苦労して覚えた技をタダで教えるのもシャクだしな」


 確かに、それはシャクである。

それに、彼らは同じ魚で、同じ館内に展示されている仲間同士ではあっても、アザラシとペンギン。

その隔たりは、けして無くなりはしない。

とか、アザラシが考えてるかは不明である。


「とりあえず分かった。 明日また来るわ」


 手を上げて軽く挨拶をかわし、ペンギンが水槽から降りようとした時だった。

そこが断崖絶壁であることに気づく。


(やっべ! 上がって来たはいいけど、降りらんね!)


 地上からの高さは約3メートル。

人間ならば、着地の際足首を捻って、ダサい思いをする程度の高さであるが、ペンギンの身長は人間の3分の1。

体感的には、東京タワーから飛び降りる位怖い。


「いや、そこまでいかねーけど…… なあ、ミチキ、聞こえっかー」


 下であぐらをかいていたミチキが立ち上がり、右手を上げる。


「一ヶ月くらい更新してなかったくせに、良く俺の名前覚えてたな」


「……まあ、キャラは忘れちまったけどな。 俺がジャンプしたら、お前下で俺をキャッチするか、無理なら方向変えてくれ。 よっ」


「えっ、ちょっ」


 勢い良く飛び降り、時速70キロ位の速度で落下。

ミチキは腹をくくり、下でトオルをキャッチすべく、手をかざす。

衝突まで、後3.2.1メートル……

ミチキの目の奥で、キラリと何かが瞬いた。


「受け流し!」


 トオルの落下方向が、90度曲がった。

落下してきた体を受け止め、無理やり向きを変えたのである。

ローションでツルツルの体は、そのままダストボックスへと突っ込み、豪快にストライクを決めた。


「おらあああーっ、てめぇら何遊んどんじゃあああーっ」


 





「ふぅん、手土産ねぇ。 これなんてどうよ?」


 飼育員の生田知美 (漢字忘れた)にしごかれた後、事情を説明。

水族館の土産コーナーで、手土産を探す事となった。


「ちんあなごの抱き枕っすか。 アザラシさん、気に入りますかね」


「んー、だったらコレ? ダイオウグソクムシのクッキー」


「……これにしますか」


 トオルは、じゃがりこを手に取り、レジに並んだ。


「おまっ、そんな定番のでいいのかよ」


「ダイオウグソクムシのクッキーよりか、マシじゃないすかね」







「そうそう、こういうのでいいのよ。 仮に、ダイオウグソクムシのクッキーでも持ってきた日にゃ、どーしよーかと思ったもんだが」


 じゃがりこを口に運びながら、アザラシは言った。


「そんなセンスない土産、絶対選ばねっすわ。 で、ダンスの方は?」


「オケオケ、約束だからな」


 じゃがりこを傍らに置き、アザラシは腕を前に持って、ポーズを取った。


「何すか、それ」


「今からお前に伝授するのは、ダンスはダンスでも、一味違うダンス。 ブレークダンスだ」


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