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「何なんだ、コレ……」


 壺には栓がされており、中身は分からない。

他に金目の物があれば、別に気にならなかっただろうが……

とにかく、友恵はそれをつかんで船を後にした。








 引き揚げた沈没船が修復可能か、現地の人間に打診してもらう為、友恵はポートロイヤルの造船所にやって来た。


「損傷の状態によりますけど、とんでもない金額になると思いますよ」


 造船所に勤める、舟大工の黒人が言う。


「金の心配はいらねーよ。 現地の人間でも、よその専門家でも、かき集めてくれて構わねーぜ」


 そう言い残し、小屋を後にする。

トオル、ミチキを探して砂浜の方まで戻って来ると、床に腰掛けてヤシの実を飲む2匹を発見した。


「あんまうまくねーな、コレ」


 しかめっ面でストローを咥えるトオル。

ミチキが頷く。


「水族館のカクテルのが美味しいよね」


「お前らーっ、戦利品だぞ」

 

 友恵が手に持っていた壺を掲げた。

2匹が顔を見合わせる。


「それだけ?」


「さーて、何が入ってっかな」


 2匹のいる砂浜まで来ると、おもむろに栓を掴む。

力を込めると、栓は簡単に抜け、ぽんっ、という音を立てた。

壺を逆さまにして、中身を出すと、ヌルヌルの得たいの知れない塊が出てきた。


「何だこりゃ、腐ったゼリーか?」


 しかし、よく見ると違う。

ヌルヌルには8本の触手があり、こちらを窺うような目が2つ。

そう、タコである。


「……ゼエ、ゼエ。 だ、誰…… 眠りを、さま…… ゴフッ」


「この船の持ち主の子孫の友恵だよ。 おめー、大分年いってんな」


 壺の中身は、かつてトミー号でペットとして飼われていたタコ。

年齢は数百才で、生きているのが奇跡に近い。


「ゼエ、ゼエ…… 近い、内…… 厄災…… ゴフッ、3匹の、禁魚……」


「え、なんてー?」


「ち、近い、内…… 厄災、ゼエ、ゼエ…… 3、匹の…… 禁、魚……」


「小っさくてぜんっぜん、聞こえねーし」


「ち、近い、内! 厄さ…… グハアアアアアーッ」

 

 声を張ろうと力を込めた瞬間、脳内の血管が切れ、タコはそのまま息絶えた。


「えっ、ちょ……」


「めっちゃ重要なこと言おうとしてなかった?」


 ミチキが、動かなくなったタコを棒で突きながら、呟いた。






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