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プロローグ

 白と黒の動物界のアイドルと言えば、パンダを思い浮かべる者が大半だろう。

しかし、忘れてはいけない、もう一つの存在。

ペンギン。

彼らは芸こそないが、その愛らしい姿で見るものに癒やしを与える。

これは、そんなペンギンたちの、爽やかな青春譚である。







 PM8:00。

東京スカイツリー駅から数分の所にある、水族館。

ソラマチの5階にあり、入場料は大人2000円、子供800円だ。

 入り口に入って最初に目に付くのは、巨大な水槽。

海藻や、小魚なんかが遊泳している。

しばらく道なりに進み、熱帯魚、クラゲなどの展示スペースを通過すると、突然、巨大なホールにたどり着く。

ペンギンブースである。

何を隠そう、この展示スペースこそ、この水族館の最大の目玉であり、そこにいるマゼランペンギンの数は、およそ50。

 この時期、彼らは発情期を迎えていた。







「トオルは、彼女作らないの?」


 そう質問を投げかけたのは、やや小太りのペンギン、ミチキ。

2人は、カクテルブースで酒をあおっていた。


「……少しでもモテりゃ、こんなとこいねーわ」


 会場内は、夏限定の花火イベントが開催されている。

薄暗い中、デジタルの花火が水面に映し出され、ペンギン、人間問わず、周りはカップルばかり。


「あいつ、また違うメス連れ込んでるよ」


 カクテルブースは6階にあり、そのラウンジから5階のメインブース(岩場があり、ペンギンらはここで生活している)が覗けるが、その中でも一際モテるペンギンがいた。

マゼランペンギンのディーン。

年は20で、顔はイケメン。

しかも、肉食。

ディーンの周りには、常にメスペンギンの取り巻きが出来ている。


「はぁ~、あいつのおこぼれでもいいから、分けて欲しいよ」


「ばっか、お前、あいつのせいで俺たちにメスが回ってこねーんじゃねーか」


 ミチキが、恋してーっ、と叫ぶ。

発情期のペンギンらの大半は、理想の恋愛に焦がれている。

ウンウン、と頷きながら、マスターがコップを磨く。


「……」


 トオルは、グラスの氷を眺めながら、あることを考えていた。

そして、口を開いた。


「この前、屋外ブースでカラスから聞いた話なんだけどよ」


「……どんな話?」


「品川のアクアパークには、すげーショーをやるイルカがいるらしい。 そのイルカは、アイドルの音楽に合わせて歌って踊るんだと。 それが評判で、連日満員御礼らしいわ。 俺の言いたいこと、分かるか?」


「……む、無理だよ。 オイラたち、アホじゃん!」


 イルカと違い、ペンギンに芸を仕込むことは出来ない。

しかし、トオルは立ち上がった。


「俺らでアイドルユニットを結成すんだ。 ユニット名は、タキシード。 メスペンギンを釘付けにすんぞ」


 

 




 


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