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眠り屋  作者: 三千
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七章 眠り姫


私は今、一枚のメモを前にしている。

はあっ、とため息をついて、空を仰ぐ。


あまり、外へは連れ出せないお母さんに頼まれたもの。


いつも学校、ではなく、図書館帰りに買い物に行くのが日課となっている。


けれど、お母さんが買ってきて欲しい物というのは、いつも私を困らせる物ばかりだ。


「豚肉 100グラム、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、カレールー」


私は再度、ため息をつく。この中で手に入る物は、と。


「カレールーだけか」


そして、手に入らなかった言い訳を、毎回のように考える。


この中で、カレールーしか手に入らない事実。

どうやってお母さんが納得できるように説明するか。


お金がないわけではない。

品薄、というわけでもない。


生鮮食品と呼ばれるものが、もうこの世に存在しないのだ。


かろうじて存在するのは、無機質な缶詰やレトルト食品、パッキングされて賞味期限が現在に近づいている商品。


賞味期限が多少過ぎていても、食べてしまう時もあるのだが。


「今日は何て、言おうかな……」


頭の中をまっさらにして、一人公園のベンチに腰掛ける。


こうしているうちに、すぐにも夕焼けが近づいてきて、辺りをオレンジに染めてしまう。


誰もいない公園で、この広く開けた空を持つ公園で、私はさらに頭をまっさらにして、リセットを試みる。


卒業できなかった中学校、卒業できていたとしたら、今は高校生。


だから、私は毎朝家を出て高校に行く振りをする。


現実には行ってないけど、でもお母さんが心配をするので、行く振りを続けている。


学校に行っていることになっている間は、図書館で勉強する。


勉強する意味は見出せないけど、他にやることもなくて。

勉強したり本を読んだりしかすること以外、何もなくて。


「またレトルト買ってくかあ」


生鮮食品が手に入らなくても、代わりになる食料を持って帰れば、お母さんは何も言わない。


そして今日も一日、生き残る。


「また、売り切れってことにしよう」


私は根っこが生えてしまったような重い腰をどうにかして持ち上げると、公園からいつものスーパーまで一本で行ける道を歩き始めた。


駅に、近くも遠くもない立地のこのスーパーには、お母さんと一度だけ一緒に来たことがある。


その時は、お母さんが店員さんらしき人と話し込んでしまって、なかなか帰れなかった。


「今日はね、シチューにしようと思ってるのよ。娘が好きでねえ。ね、美夕みゆう。だから、ジャガイモ欲しかったんだけど、売り切れなら仕方がないわねえ。でも、いつ入荷するのかしら」


「そんなの、お店の人でも分かんないよ。ねえ、お腹が空いたから早く帰ろうよ」


長く話し込んでいるお母さんの腕を引っ張り、レジから引き離そうとする。


「ほら、次の人も待ってるからさ」


お母さんは、後ろをチラッと見てから、とがめるようにして、小声で言った。


「誰もいないじゃない。まあいいわ、ご飯作らなきゃ」


レジカゴには、缶詰とレトルトのシチュー。


「桃缶、好きよね。良かったわあ、手に入って。でも最後の一つだったね」


「うん、そうだね。それじゃ、失礼します」


「あ、美夕、まだお金払ってないわよ」


「す、すみません」


そう言って財布を取り出し、千円札を一枚、レジ横のお金入れに置く。


そして、私はレジの向こうの適当な方向へと頭を下げると、カゴから商品を取り出し、マイバックに放り込んだ。


そして、もうお母さんが誰かと話さないように、お母さんの腕に抱きついてぐいっと引っ張ると、足早にスーパーを離れた。


私はその帰り道、忘れ物をしたと言い訳をしてスーパーのレジへと戻り、そこに置かれっぱなしの千円札を取って財布に戻すと、早足にお母さんの元へと戻った。


それ以来そのスーパーには、私が買ってくるからと言って、お母さんを連れて行ったことはない。


✳︎✳︎✳︎


「お母さん、誰と話しているの? 誰もいないよ、誰もいないってば‼︎」


空っぽのレジに向かって、話し掛けるお母さんを見て、最初は奇妙に思って騒いでいた。


けれど、最近ではもう慣れてしまった。


適当に話を作ったり相槌をうったりして、なるべく何事もないようにフェイドアウトを図る。


お母さんがこじらせると、後が大変だということ。

私は知っているから。


だから、勉強をする振り、買い物をする振り、誰かがそこにいる振り、それらを永遠に続けていく。

この命が続く限り。


あれは私が十五歳になる年の、三年生のクラス替えで苦手な男子と一緒になって落ち込んで帰った次の日、一年に一度しか咲くことのない満開の桜の花びらの全てを吹き飛ばして、それは落ちた。


巨大な隕石。


信じられないけれど、それは地球の人間全てを一掃してしまったのだ。


私とお母さんだけを残して。


どうしてそんなことになったのか、全く分からない。


とにかく、私とお母さん以外は誰もいなくなってしまった。

この世界には、お母さんと二人きり。


父親は私が幼い頃、離婚して家を出て行ったからうちには居ない。

それはそれで良いとして。


クラスで一番苦手な男子もいなくなってしまったし、いつも通学途中で会うスキッパーと呼ばれていた、黒いラブラドールを連れたおばさんもいなくなった。


学校へ行っても、うざい先生も生徒も。

誰一人として存在しない。


そこかしこのお店へ行っても店員はおろか、お客にも巡り逢わなかった。


そう、どこへ行っても、どんだけ行っても、どこにも誰一人として、いないのだ。


そんな中、お母さんと二人きり生きていく。


最初は、誰かいないかと辺り一帯を探してみた。


時には泣きながら、時には発狂寸前で、時には自暴自棄になりながら。


けれど、やっぱり誰一人として存在しないのだ。


なぜなのか、屍体の一つさえも有りはしない。


そして、さらに不思議なことに、テレビは見ることができる。


隕石がロシア(だと思う)の山脈をなぎ倒して落ち、大パニックになった映像しか映さないのだけれど。


冷蔵庫だって使える。


電気や水道などのライフラインは、今まで生活してきた通り、何の問題もない。


なぜか生き延びる手段を持っていた。

いや、持ち続けていた。


こんなおかしなことがあるのだろうか、それは一体どうしてなのか、どんなに考えても考えてもその理由が分からない。


私たち二人のだけのために電気は作られ、水道は流され続けている。

それらを操作したり点検したりする、誰かがいるはずなのに。


二人だけが生き延びるなんて、あり得ないのに。


そして、お母さんはそんな現実を受け入れられないというように、誰もいないレジに向かって延々と話し続けるし、隣の安田さんちにちょっと顔を出してくる、と言っては腕一杯のレトルト食品を抱えて帰り、奥さんにおすそ分けして貰ったわと、意気揚々と帰ってきたりしていた。


隣の家にだってその隣にだって、誰一人居るはずもないのに。


この信じられない狂気の世界。


私とお母さん、二人を中心に回っている。


けれど、正気なのは私だけ。

私がお母さんを守らなくては。


誰にも頼れない、私がお母さんを守らなくては。


✳︎✳︎✳︎


「……と、このような内容です。ご理解は頂けますでしょうか」


ここは白がよく似合う。


白い壁、白い天井、何もかも白一色。


白衣の天使に白い羽根が見える、などとそこまで考えたところで、僕は深く深く失笑した。


僕の営む「眠り屋」のドアを、事前のアポなしで叩いたのは、一人の老婦人だった。


老婦人、いや、名前の次に告げられた歳からいくと、老婦人などとははなはだ失礼にあたる表現であったのだが。


ぽつぽつと出始めている白髪をそのままやりたい放題にさせていて、しかもこの憔悴しょうすいしきった表情。


その瞳からは、何の感触も得られない、両手を伸ばしても空を掴むことしかできないというような、そんな無力さが感じられた。


背中は丸くなり、唇は口角が下がり、毎日のように泣き腫らしてきたのだろうその目蓋まぶたは重く閉じかけている。


ぽつり、ぽつりと、外で雨音がする。


少しずつ、暗く陰っていく部屋を明るくしようと、京子さんが灯りのスイッチを入れる。


仕事柄、この事務所の灯りには、白く明る過ぎてしまう蛍光灯ではなく、ほんのりと暖かみのある白熱灯を用いている。

その方が依頼者の心をほぐし、暖める効果があるような気がして。


オレンジ色にぼんやりと照らし出された部屋の中で、次には容赦なく降り注ぎ始めて窓をパチパチと叩いては流れていく雨の音を聞きながら、この疲弊ひへいした婦人に京子さんが上手に淹れてくれたであろう、温かいアールグレイの紅茶と一欠片のチョコレートを勧める。


何がこの人を。

ここまでの抜け殻にしたのか。


紅茶にも手をつけず、彼女は訥々(とつとつ)と話し始めた。


ご婦人は、傘を持っていただろうか。


その悲劇的な話が終わる頃には、雨は本降りとなり、彼女と同様に僕の心をも洪水にでもするような激しさで、降り注いでいた。


✳︎✳︎✳︎


そして、この真っ白に塗り潰された病室で。

目の前には、今回の真の依頼主である少女が、横たわり眠る。


薄っすらとした薄い顔色。

こんこんと眠り続けている。


この真っ白な部屋で、まるでその命さえ白く染め上げられたような少女の血の通わない蒼白な顔。


そんな少女の頬をそっと撫でて、その生を確かめるように指をその曲線に沿わせた指先。


少女と同じような白さの表情を漂わせている、その婦人の指は、少しだけ小刻みに震えているようにも見えた。


そこには愛おしさを通り越した、深い慈愛の情が存在している。


「彼女は必死になって、お母さんを守ろうとしています。いえ、守り抜いています。事実、あんな設定の狂った世界であるのに、彼女の中のあなたはいたって普通に生活し、毎日を平穏に過ごしていますので」


「私を、守っているの? あなたを、守れなかった私なのに。美夕、美夕……」


頬をなぞっていた指が、その頬から緩やかなカーブを描いてつながっているおでこを覆う。


そしてそのまま前髪を梳いた。


涙が溢れて落ちていく。

次々と。

とめどなく。


人生はいつも、いつかの時点で転換する。

その転換点は、急にその眼前に現れ、人々を翻弄する。


僕も経験した、道を踏み外すという行為。


どれだけ慎重に、どれだけ気を遣って足を運んでも、いとも簡単につまずいて転んだり深い穴へと堕ちたりするのだ。


軽い怪我ですむ時もあり、一生の傷を負う時もある。


このご婦人も、そんな転換点を歩いて越してきたのだ。

土についた手にあるだけの力を入れて握り締め、唇を噛んだ歯をさらに食いしばりながら。


そうして過ごした苦痛の日々の長さが、実際は年老いてない婦人の姿形すがたかたちを、このような老婆のように変えてしまったのだ。


しかし、そんな疲れ切った表情の中にも、最愛の娘を想う情愛の念は、光り輝いてそこに存在する。


娘を見る、眼差し。


涙に縁取られてはいるけれど、美しい、という一言に尽きるのだ。


✳︎✳︎✳︎


「美夕、今日は図書館に行くの?」


私は振り返ってカバンを肩にかけると、お母さんの方へと顔を向けて、用意していた嘘を告げた。


「そう、今日は学校、創立記念日で休みだから。図書館の方が静かで落ち着いて勉強できるし、結衣ゆいにも勉強教える約束、してるしね」


結衣とは私が創り上げた、「友達」だ。


出席番号が近いから席も近く、話が合うという設定になっている。


友達がいないとお母さんは心配するから、中学時代の友達をベースに、二三人の友達を用意してある。


私はそれらを会話のあちこちに散らしていった。


「勉強の進み具合によっては、遅くなるかもだから、先ご飯食べてていいからね」


机の上にあるレトルトのおかゆとスープのセットをちらりと見る。


多分、これが今日の夕食のメニュー。


不味くはないが、美味しくもないこの組み合わせ。


「あんまり、外をうろうろしないでよ。お母さん、すぐ迷うから」


「分かってるって、ここら辺しか出ないから」


「遠くに行くと帰ってこられなくなるから、絶対だめ。気をつけてよ、何かあったら、携帯に電話してね。でも、外に出たら……」


「わかってるってぇ」


もうこの世界に。

二人きりしかいないのに、もしお母さんまでいなくなったら、と考えるとぞっとする。


だから、下らない細かいことまで注意してしまう。


悪寒のする結末を考え始めてしまわないように、そこで思考をストップ。


私は少しだけずれてしまった靴の先を、玄関の床にトントンと打ちつけて履き直すと、じゃあねとだけ言って、玄関を出た。


✳︎✳︎✳︎


駅の近くまで歩くと、そのままのスピードで、図書館とは反対方向の道を選んで進んでいく。


カバンを持つ手の反対の手には、一つのキーホルダー。


その手にぐっと力を含むと、ゴツゴツとした部分が手にめり込んで鈍い痛みを感じた。


これは二日前、いつもの誰もいないスーパーで買い物をした時、いつものように形だけではあるけどレジを通ろうとした時、カウンターに置いてあったものだ。


私はカゴを置こうとして、ビクッとした。


この世界には誰もいないはずだから、私が動かさない限り商品などの移動もあり得ない。


今までなかったものがそこにあるという事実。


それは、私をちょっとした恐怖に陥れた。


お母さんがここに来たのだろうか。

お母さんがここに置いたのだろうか。

それとも他の誰かが存在するのだろうか。


それしか考えが回らなかった。

帰ってお母さんに確かめるまでは、生きた心地がしなかった。


「行ってないわよ、今日はどこにも。それ、どうしたの?」


その返事を聞いてからは、もっと生きた心地がしなくて。


可愛らしいイルカのキーホルダー。


水色が少しだけげていたけれど、愛嬌のある可愛らしい顔は、見てると少しだけ癒される。


誰が、そこに、何故、置いたのか。


それを考える時以外は。


最初は、あまりに怖くて考えられなかったけれど。


そのキーホルダーになぜか愛着みたいなものを感じられたし、それを手にした時、モヤモヤとして思い出せない何かを感じて、私は私の中の記憶からその何かについて分かることはないかと探ってみたりした。


糸を手繰るようにして得たものは、小さい頃の思い出。


これは、父親に買ってもらったキーホルダーだ。


初めて行った水族館で。

これが欲しい、これしか要らないと言って、駄々をこねて買ってもらった、父親との唯一の思い出。


そうだ、父がいなくなって、いつまで待っても帰ってこなくて、子供心にお父さんはもう戻らないんだと悟った日、ゴミ箱に捨てたんだったっけ。


それがどうして、こんな所に。


私はそんな唯一の思い出を、ゴミ箱に投げつけるようにして捨てた罪悪感からくる痛みと、同じくらいの痛さでその手をぐっと握り締めながら、目の前にある一本道をひたすら歩いていった。


✳︎✳︎✳︎


「お母さん、それは……出来かねます」


雨が一通りざっと降ってしまうと、僕がその依頼に対する返答をする頃。


雨は小降りになり、しとしとという擬態語が当てはまるような静けさで、申し訳なさそうに降り続いていた。


今までに、これほどの危機感を感じた依頼はない。


僕の中で、警告音が大きな音をさせて鳴り響いていた。


受けられない、受けるべきではない。


キッチンで聞き耳を立てている京子さんも、きっと断るようにと進言してくるだろう。


けれど、ご婦人はとてつもなく強い意志と決意で、僕に面と向かって言った。


「眠っている娘を目覚めさせて欲しいとか、治して欲しいと言っているわけではないのです。万に一つのチャンスとか、そういった類の奇跡を期待している訳でもないのです。ただただ、どんな夢を見ながら眠っているのか、夢の中で美夕は幸せに過ごしているのか、それが知りたくて。今までも気が遠くなるほど……長い時間、美夕が眠っているのを見つめ続けていました。私は無力で、何もできないんです。それに……美夕のこと、何も分からなくて、苦しくて……」


そこまで一気に話すと、ぐぅと喉を詰まらせて、言葉を呑む。


溢れる涙はそのままにして、彼女は感極まったというように、ハンカチで口元を押さえた。


その、握り締めてクシャリと潰れた黄色のハンカチ。

そのハンカチに、嗚咽おえつを吸い取らせるようにして、慟哭どうこくする。


僕は言葉を探していた。


もちろん、これまでも出来るだけ依頼者に寄り添ってきたつもりだし、出来る限りのことを考え行動してきたという、自負もある。


けれど、今回は違う。

今回だけは、何としてでも断らなければ。


そんな焦りの気持ちで一杯になり、僕は今にも溺れそうになって、あっぷあっぷと息をするのも覚束ない状態に陥っていた。


僕にはそれを、コントロールすることすら、出来なかった。


「けれど、それほど深く眠る娘さんの眠りを、さらに深くしてしまう恐れがあります。また、何かの琴線きんせんに触れてしまって、心を壊してしまうことも考えられます。そうなると、娘さんから……美夕さんから、目覚める可能性すら奪ってしまうかもしれません。これはかなりの危険性を伴います、僕には出来ません」


そして、これが最後というつもりで、強く言った。


「恐ろしいことを言うようですが、死に繋がる結果となってしまうこともあり得ます。出来ません、僕には出来ません。無駄足となってしまい、大変心苦しいのですが、お断りさせてください」


僕は背筋を流れる一筋の汗のように、何かひやりとしたものを感じずにはいられなかった。


人の生死に関わる線。


僕はその線を越えることは出来なかった。


その線をまたごうとして、足を引っ込めたというより、またごうとする足自体が地面に引っ付いてしまって、離れない感覚。


「お願いです、少しだけで良いんです。どんな夢を見ているのか、その一端を知ることが出来たら、私は……」


これ以上、このご婦人の言葉を聞くのはまずいと、僕の頭でさらにアラートが鳴り響く。


「私は……これからも美夕を慈しみながら、見守ることが出来ます」


声が、彼女の涙声が。

僕の心の耳を塞ごうとした手を。

ぐっと握って引き止めてしまう。


「きっと、出来ます」


強さを帯びた、けれど震える声。


僕のそこかしこに入り込んでくる。


僕は雨の音に耳をすませてみた。

どうやら雨は止んだようだ。


ぽつん、ぽつん。

雨樋からだろうか、雨粒が落ちる音が遠くで聞こえる。


その音が、いつも夢へと入る際に数えるカウントのように聞こえてくるのを、僕は好きなようにさせておいて、すでに冷えてしまった紅茶を乾き切った喉へと流し込んだ。


✳︎✳︎✳︎


かなりの長い時間を費やしたに違いない。


「はああ、もう疲れたよう」


腕時計はもうお昼を指している。

やはり腹時計は正確らしい。


おなかがすいてきたことをしっかりと身体が確認し、音によってそれを表現するんだなあ。


ぐうぐうと鳴り続けるおなかを少しさする。

カバンに放り込んであった、ラップに包んだいびつな形のおにぎりを手にとってから思い直して、水筒のお茶を一口飲む。


目的地まではもうすぐのはずだから、行きながら食べれば、着く頃には食べ終われる。


「お父さんに逢いに行く、みたいな。……そんな感じなのかな」


よくテレビでやってる、行方不明の親を探し出して会わせる番組のようだと、心のどこかで思う。


「こんな気持ちなのかな。逢えるかなあ、というより、そこに居たらどうしようって感じなんだけど」


そう言って、苦笑した。


私は、父親との唯一の思い出である水族館に向かっている。


普段なら、電車で行く距離。


無謀にも、歩いて行こうと計画していた。


けれど、この世界に誰もいないって、便利な時もある。


道すがら。

拝借した自転車で、かなりの距離を稼ぐことができた。


私は手にしたおにぎりを、器用に自転車のハンドルを片手で操作しながらほうばると、途中で入った本屋でこれまた拝借した地図を、頭の中で広げて道を確認した。


もう直ぐだから、あと少しだからと気持ちを立て直すと、すでにだるくなっていた太腿に力を入れてペダルを踏んだ。


予想通り、二個のおにぎりを食べ終わってからしばらく自転車をこいでいくと、大きなドーム型の建物が見えてきた。


水族館の入り口は閉まっていたけれど、関係者以外立ち入り禁止のドアを一応ノックしてから開けると、すんなりとそれは開いて、私を入れてくれた。


父親が居るはずもないことは分かっていたけれど、このイルカのキーホルダーがどうして私の前に現れたのか。

それを知る意味もあって来たのであって、自分自身に父親を探しにきたのではないのだからと何度も言い聞かせて、歩を進める。


きっと水族館の水槽で、何も知らずに幸せそうに泳いでいた魚達は、世話をする飼育員を失い息絶えて、凄惨せいさんな姿をさらしているであろうと考えていた。


いや、それより隕石が落ちた時に、建物自体が吹き飛んでいるかも知れないと。


けれど、自転車をこいで来て見続けた光景は、呆気にとられるくらい、そのままだ。


相変わらず、誰一人出くわさなかったし、人の気配すら感じなかったけれど。


誰もいない世界。

それは間違いないようだ。


不思議に思う気持ちは湧いてくるけれど、それを確かめる術がない。


私は、私とお母さんで、この世界を生き続けるしかない。


「途中で寄ったスーパーが、まだ色々と残っていて良かった」


カバンにはいつものスーパーでは手に入らないような鯖の缶詰や、高級そうな蟹の缶詰がいくつか詰められている。


重いけれど、その重みが幸せだ。


「これ、お母さんが、喜ぶわ。カニ、好きだもんね」


水族館の展示室に続く廊下を慎重に歩きながら、カバンを抱え直す。


この先には確か、大きな水槽があったっけ。

一度だけ、ギネスに載ったくらいの大きさの。


すぐにシンガポールだか、どこかの国に抜かされてしまったけど。


父親とは一度だけだったけど、父親が居なくなってからも、お母さんとは何度も来たから覚えてる。


大きな水槽の前にいつも立たされて、写真やビデオを何度も撮られたっけ。


そしてそのギネス並みの水槽がある展示室に足を踏み入れて、私は動けなくなった。


水槽は壊れてなく、そして魚はそれぞれ元気そうにあちらことらへと泳いでいるのに。

ジンベイザメがその巨体を揺らしながら夢見がちに悠々と泳いでいるというのに。


その事実に驚いているのではなく、水槽の前に誰かが居ることに。


誰かの姿がそこに存在することに。


知らず知らずに後ずさる。

両足が意思とは関係なく、勝手に後ろへ、後ろへと。


「美夕」


野太い声で名前を呼ばれ、私は金縛りにあったようにそのままその場にへたり込み、そして動けなくなった。


それは懐かしさを帯びた、けれど私の中に眠るすっかり色褪せてしまっていた存在。


不思議とその声の持ち主が、私とお母さんの目の前から突然に去ってしまった父親であることをすぐに理解し、受け入れることができた。


そしてその受け入れるという行為。


その事実が、どこからか悲しみを呼んできて、水槽の中で悠然ゆうぜんと泳ぐ魚達のように、私の中をぐるぐると回り始める。


そして、私をこれでもかというほどに、打ちのめすのだ。


父が目の前に現れるのを待ち続けていた訳ではない、私はそう自分が納得できるようにと何度も言い聞かせてきた。


言い聞かせないと、イルカのキーホルダーをゴミ箱に投げつけるようにして捨てた意味が無くなってしまう。


今までお母さんに迷惑を掛けないようにと、お母さんを早く楽させてあげたいと思って、早く大人になりたいと駆け足で生きてきた意味が無くなってしまう。


「美夕、美夕、美夕……」


けれどそうならば、なぜ私はここへ来たのだろう。


何かに急かされるように、はやる気持ちを両手で抑えつけながらも、一度の休憩も取らずにここへと辿り着いた。


イルカを手に入れたことで、これがどうしてスーパーのレジなんかに置いてあったのか、それを確かめたいという気持ちもあった。


確かめるならばここしかあり得ないと、何の根拠も無いけれど、そんな風に確信さえしていた。


そう、確信できたのだ。


「……美夕、」


憶えている音より、少し高い声で、私の名前を呼び続ける。


へたり込んで、ずっと握り締めている両手。

頑固なまでに、その両手を見続けていたけれど、何度名前を呼ばれたか分からなくなってくる頃。


私は彼の顔をようやく見上げることが出来た。


顔は覚えていない。


こんな輪郭の顔だっただろうか。


彼のくしゃりと歪んだ表情が、私の記憶を妨げて思い出しにくくしているだけであろうか。


「お父さん……」


言葉にしてみると、意外とするっと口から出たのも驚きだったし、けれどやはりしっくりくるものではなかった。


私の中に存在する、こぶのような、何かのできもののような、手を滑らせていくと、ついと突っかかるその凹凸。


「今さら、何よっ‼︎」


私は、私の中で何かがプツリと音をたてて切れたのを機に、手の中に握り締めていたイルカのキーホルダーを、父に投げつけた。


その投げ方が余りにぞんざいだったからだろう、父の顔が酷く歪む。


けれど、父は少し歩を進めて、そのキーホルダーに大きな手を伸ばして拾い上げた。


しばらくの間、手に乗せたままキーホルダーを見続けた。


「美夕、これはお父さんの大切な物なんだ。だから、貰っていくね」


そう言うと、それから父が背にしていた大きな水槽の海に抱かれるようにして、彼は溶けていった。


そう、消え去ってしまった。


幻でも見たのだろうか、幻影を創り上げたのだろうか、逢いたいという気持ちが少しでも、私の中にあったのだろうか。


私はぐるぐると回り続ける頭を冷やりとした床にそっとつけると、その場で気を失ってしまった。


✳︎✳︎✳︎


「美夕さん、お父さんの声を聞くことができました。夢の中のお父さんは、美夕、と何度も名前を呼んでました。6歳で別れたとお聞きしましたので、そこまでの記憶はないと思っていましたが、美夕さんの記憶の中にちゃんとあったようです」


「そうですか、そうですか」


男泣きとはこういうことを言うのだろう。


その男性は肩を震わせながら、嗚咽を抑えようともせず、涙を我慢しようともせず、大いに慟哭どうこくした。


初めて、眠り姫の夢の中へと入ってから、一ヶ月近くが過ぎようとしていた、風が肌に心地よく馴染む季節の、この日。


僕は今回、二度目の仕事をこなしていた。


美夕さんが夕暮れ時、薄日の中をぼんやりと歩く学校帰り、点滅する信号を無視して走ってきた車にかれて眠りについてから、丸三年が経とうとしている。


彼女はそれ以来、ずっとこの白い病室で眠り続けているのだ。


外科的な怪我は時間と共に治っていって、見た目には病人には思えないほどにまで回復している。


ただ、眠っているだけなのだ。


こうして眠っている顔を見ていると。


どこも悪い所はなく、そして何らの病気でもなく、眠っている間は夢など見ているのだろうか、それはどんな夢だろうかと、知りたくなる気持ちも理解できる。


僕はどうアプローチしていっても、取り除くことの出来ない危険がつきまとう今回の依頼を、どうやってでも断るべきだった。


こうして眠りにつく彼女を前にして、今でさえ足が震える思いがする。


けれど、疲弊した婦人と、彼女の美しい横顔に出逢ってしまってからは、どのような理由を付けることも出来ずに、依頼を断ることが出来なかったのだ。


そして、そうこうしているうちに現れた、この男性。


美夕さんが事故にあってからは頻繁に見舞いに足を運んでいたであろう、美夕さんの父親に出逢ったのだ。


こんな得体の知れない職業を生業なりわいとしている僕だからであろう、その不信感からか一度目に夢に入る時には不在であった。


けれど、二度目に入ろうとしていた、少し前の時間。

彼は、イルカのキーホルダーを握り締めて、僕の目の前に立っていた。


怒ったような、哀しいような、複雑な表情を織り交ぜながら。


そして僕はこのキーホルダーを、眠り姫の夢へと届けてきた。


「美夕との思い出は……これしかなくて。ペアで買ったんです。その時はもう離婚が決まっていたので、そういうペアで持てるものがどうしても欲しくて。美夕が嫌がると思って、まずは美夕に買い、後でこっそり自分用に買ったのです。これを美夕と思って、大切にしてきました。でも、あんな事故に遭うなんて……まさか美夕がこんな目にあうなんて、まさか、まさかって……」


最後の方は聞き取れない程の弱々しさだった。


声を震わせながら、絞り出す。


「そのキーホルダー、美夕さんは持っていないようでした。夢のさわりしか見ていないので、断言は出来ませんが、そして辛いことを言うようですが、どうやら捨ててしまったのではないかと思われます。けれど、それを手にして、直ぐに決心して水族館まであなたに逢いに行った。あなたの姿、声を思い出そうと、懸命に記憶から引っ張り出そうとしている、そんな印象を持ちました」


僕の話に耳を傾けながら、一生懸命に相槌を打つ。


そしてそんな彼の様子を、涙を伴う穏やかな表情で見つめる母親。


僕が僕に立ち返る時、一つの指針となる一本の「骨」になって、僕の中に存在し続けるもの。


愛情とは、これ程までに強く滑らかで美しいのだ。


「水族館の水槽は、例えようのない美しさでした。そう、とても美しかったのです。きっと、彼女が見たそのままの場面を大切に心に仕舞っているのでしょう。夢とは、人の想いの結晶ですから」


僕の言葉を聞き終わるやいなや、彼は大柄な背中を小さく丸めて、声を殺すことなく泣いた。


イルカのキーホルダーを痛いほどに握り締めて。


そしてひとしきり泣くと、母親も涙を流しながらそっとその背中に手を添えて寄り添った。


その姿を見て、僕は自問自答する。


どうして僕はこんな仕事をしているのだろうか。

悩んで悩んで悩み抜いて相談に来る依頼者を、ともすれば悲しみや苦しみの淵へといざなう仕事。


例えそれが依頼者が望んだものの、結果であろうとも。


詰まる所、誰もかれもが望んだ形での決着、となることは無いに等しい。


どれだけ慎重に依頼内容を精査していっても、依頼者の欲っする結末には遠くかけ離れ、その希望通りにいくのは、皆無と言っても過言ではないのだ。


これだけ依頼者を疲れさせて慟哭させ、何の意味があるのだろう、と。


僕はこれまで受けてきた仕事に意味があるのか、いや、それ以前に僕という存在自体に果たして意味があるのだろうかと、両の手をただただ握り締め、唇を噛むことしか出来なかった。


✳︎✳︎✳︎


長い間、私は眠っていたようだ。


冷んやりとした床が体温で温くなっている。


飛び起きて、辺りを見回す。


そこに父親の姿は無かった。


「夢でも見ていたのかな……」


まだ、少しふわふわとする頭と身体を両手で支えながら起き上がる。


相変わらず、大きな水槽はそこにある。


魚達が泳ぎ回り、ぶつかりそうになる寸前でそれぞれが方向を変えながら。


さっきと何ら変化の無い水槽を前にして、床を手で探り回す。


そう、イルカのキーホルダーも見当たらなかった。


すると、何故か涙が溢れてきて止まらなくなった。

自分では止められなかった。


「お父さん、」


言葉にしてみる。


すると床に置いていた手の甲の部分に涙が落ち、冷たい感覚を覚えた。


涙とは、こんなにも冷たいのなのだ。


お父さんも失った。

キーホルダーも失った。


あの時と同じ様に。

そう頭の隅で考えた途端に悲しみで身体中が満ち溢れて重く、重く沈んでいくような感覚。


私は身体の中にある悪いもの全てを吐き出すように、一時間ほど泣き続けた。


お父さん、と何度も言葉にして精一杯、泣いた。


そして突然に思いついた。


そうだ、家に帰ろう。

お母さんが待ってる。


私はあれだけ涙とともに苦しい想いを吐き出したのに、まだ泥をまとったような、そんな重い身体を起こし直した。

手で膝を掴んでようやく立ち上がると、辺りを見回してカバンを探した。


この広い水槽の部屋につながる入り口の方向に、ぽつんと落ちているカバンが見える。


重い足を引きずりながら近づいていき、手を伸ばす。


チャックが半開きになり、中から蟹の缶詰が転がりだしていた。

それを拾って、カバンに押し込む。


「帰ろう、帰ろう、帰ろう」


何度もそう口に出して繰り返す度に、鉛を抱えたように重く苦しい心も少し軽くなっていく気がした。


「帰ろう、帰ろう、……」


カバンの中の蟹の缶詰の存在を想いながら、呪文のように繰り返す。


カニ缶は、お母さんの大好物。

サラダにして、マヨネーズと和えるのが特に。


「早く帰ろう、お母さん、今から帰るよ‼︎」


大声で叫ぶようにして出口を目指す。


心が急いて、急ぎ足になり、そしていつしか走っていた。

全力で。

全力で。


開けっ放しだったドアが、大きく口を開けて待っている。


外から入り込む光が眩しかった。


私はそこがゴールのようであるように、ゴールのテープを切るようにして、ありったけの力を両手両足に込めて飛び込んだ。


✳︎✳︎✳︎


「お疲れ様でした」


事務所に何とか辿り着き、今までにない大きな疲労感に襲われながらドアを開けると、温かな光をまといながら、京子さんが出迎えてくれた。


そして部屋へ一歩入ると、ふわりと鼻をくすぐるこの香り。


毎年秋になると、またこの香る季節がやって来たと、心も浮き立つこの花の香。


僕にとってこの季節、最も心が安らぐ香りであった。


「頑張りましたね」


痛みを混ぜた柔らかい笑顔で、そう京子さんが労ってくれた次の瞬間、僕の全身からあっという間に力の源が奪われていってしまい、僕はその場にへたへたと座り込んでしまった。


京子さんの言葉と部屋中に満ちたこの甘い香りが、それまで張り詰めていた緊張の糸を切ったのだろう。


僕は何とか、声を絞り出して言った。


「金木犀ですね」


京子さんはふふ、と笑うと、窓際に置かれているガラス瓶を指差した。


丁度いい花瓶が無く、何か調味料が入っていたのであろう、透明な硝子瓶で代用してある。


「一本向こうに入った道の先に、大きなお宅の玄関先にあるでしょう」


「ありますね、毎年僕も不審者のごとく、近づいていっては香りを堪能しています。もう咲いていたのですね。今年は失念していました」


この手に余るほどの、今回の依頼。


その重みと苦悩で、押し潰されそうになった心。


「忙しくて、それどころじゃなかったですものね」


京子さんはにこにこと笑っていた顔を急に、真面目な顔に戻すと、


「その家の玄関先から、ちょっくら、拝借してきました」


僕は、いつも真面目で正直で真っ直ぐな京子さんしか知らなくて。


だからであろう、その少々乱暴な言葉に面食らってしまい、座り込んだままぽかんとした顔で見上げていた。


すると、何だか可笑しい気持ちが湧き上がってきて、僕は自分では抑えられないほど腹を抱えて笑った。


「一応、声は掛けたんですど、大家さんがご不在だったもので。でもまあ、それもラッキーって思って」


「あはは、あはは、すみません、でも有り難う、あはは、」


僕はそのまま笑って笑って、笑いながら泣いた。


京子さんも、ひとしきり笑ってから、僕の顔を見ないようにと、キッチンに入って薬缶がかけてあるコンロのスイッチをひねった。


✳︎✳︎✳︎


「先生がお帰りになる少し前に、依頼者の方からお電話があって、」


京子さんが作ってくれたコーンスープの入ったマグカップを両手に持ってくるくると傾けていたのを止めて、僕はそう言葉を始めた京子さんを見た。


「美夕さんのお母さんから、」


僕は目を伏せて、京子さんの続きの言葉を待つ。


「先生がお帰りになってすぐに。美夕さんが『お父さん』と何度も、そしてその後直ぐに、『お母さん、今から帰るよ』と仰ったそうで。その言葉を聞けただけでも嬉しいと、矢島さんに本当にありがとうございましたと、心から感謝しますと伝えてくださいと、何度も何度も仰っていました」


僕はそのまま目を伏せたまま、複雑な想いでこの京子さんの言葉を聞いていた。


何が正解で何が不正解なのか、何を信じれば良いのか、何が正しいのか。


このご両親の言葉を聞いても尚、喜ぶことも出来ず、悲しむことも出来ず、これで良かったという確固たる自信も持てず、僕の気持ちはふわふわと何処か知らない世界を漂っているような感覚であった。


けれど、それで良いのかもしれない。


これという結果の出ない、難しい依頼であったから、着地点を無理矢理にこじつけて決めなくても良いのかもしれない、そう思った。


いや、そう思わせてくれた。

目の前にいる、この女性が。


金木犀の花言葉は、真実の愛。


今回の依頼者の親子の愛情に、そっと寄り添うような意味の、この花。


この花を選んで迎えてくれた京子さん。


そして大笑いさせて、身体中に詰め込まれていた負の気持ちを、情けなくも涙とともに吐き出させてくれた京子さん。


「ありがとうございます、京子さん」


「金木犀のことは、くれぐれも内密に」


京子さんは、いつものようにふふ、と笑うと、スープをぐっと飲み干して、また笑った。


つられて僕も、声をあげて笑った。

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