おいらんセミナー72
「いえ、私は世の中が全て悪徳塗れであるとは断じて措定していません。私は北やその一味に冒された悪徳栄える世の中を、このセミナーは修正及び是正する機能を、世の中から逆に期待されているのではないかと、そう申し上げている次第なのです」と講師は言った。
風俗研究家が露骨に顔をしかめ言った。
「しかし憶測や風評、傍証などで、こんな重要な事を決めて、教科書に載せるなど前代未聞、聞いた試しが無いわ。そんな出鱈目が通用する世の中なのか、今の世の中は」
講師が冷静な口調で言う。
「それは貪欲強欲だけの出鱈目な世の中だからこそ、このようなセミナーが開催され、それに対する反動として、必然的にそれを是正する動きが生まれるのではありませんか?」
風俗研究家がせせら笑い言った。
「学者君、あんたは世の中を全て貪欲強欲悪徳の巣窟と見做し、それに対するこのセミナーを愛ある是正行為と定義付けるのかね?」
講師が答える。
「いえ、私は世の中が全て悪徳塗れであるとは断じて措定していません。私は北やその一味に冒された悪徳栄える世の中を、このセミナーは修正及び是正する機能を、世の中から期待されているのではないかと、そう申し上げている次第なのです」
風俗研究家が怪訝な顔付きをして言った。
「風評や憶測、傍証で固めたでっちあげた内容など、誰も信用などしないわ。そう思わんかね、学者君?」
講師が言下に言って退ける。
「それは受け取る読み手の問題でしょう。私はそう思います」




