おいらんセミナー134
セミナーが再開され、全員危機感を跳ね退けるように意気軒昂に参加する中、講師が現状の推移を鑑みて、冒頭の所見を陳述した。
セミナーが再開され、全員危機感を跳ね退けるように意気軒昂に参加する中、講師が現状の推移を鑑みて、冒頭の所見を陳述した。
「何かこのセミナーに歩調を合わせるが如く、詐欺一味の大々的な逮捕劇に端を発し、世の中の支配階層は真っ二つに分かれ、政治闘争、官僚同士の激しい汚職のリーク合戦、間断無い粛正淘汰が繰り広げられ騒然としている中、身に迫る危険を顧みず、一人として臆する事なくここに全員集まって頂いた事に感謝します。それでは通例通りフリートークの形式で議題を進めて行く所存ですので、何卒よろしくお願いいたします」
帽子を被った女子大生が挙手してから菜摘に尋ねる。
「私は怪しい男達に何度も狙われたのですが、その度に見知らぬ人に救われました。警察も適材適所素早く動き、好意的に接してくれます。これは菜摘さんのお陰だと思えるのですが違いますか?」
菜摘が表情一つ変えず答える。
「私は何もしていません」
長身の男子大学生が追随するように言った。
「官界や政界、財界や黒い社会の人間達がお互いに北の黒い影をなすりつけ合う様は、益々政治不信を招いていて、民衆は皆浮足立ち、何を信用していいのか分からない最中、司法ラインだけが公明正大に動いているのを見ていると、菜摘さんが裏で動いていると僕も思うのですが、菜摘さん、違いますか?」
菜摘が再度とぼけて事務的に返答する。
「残念ながら私は何もしていません。世の中がこのセミナーに歩調を合わせるように動いているのは単なる偶然の一致だと思います」