おいらんセミナー104
「常識、非常識という線引きは明らかに階級闘争の顕在的差別化なのではないのかね。例えば常識的な人間の美醜観念と非常識な人間の美醜観念が違うとするならば、或は犯罪者や変質者の美醜観念は犯罪を犯してはいない常識的人間とは違うから、異端だという差別化に発展するのは、どうにも否めない事実だとわしは思うが、どうじゃろう?」と風俗研究家が菜摘に尋ねた。
七瀬の言葉を尻目にして風俗研究家が言った。
「貴女の言う常道的主観とは何かね、説明してくれないか?」
菜摘が答える。
「常識的な人の主観という意味です」
風俗研究家がしたり顔をしてから言った。
「常識、非常識という線引きは明らかに階級闘争の顕在的差別化なのではないのかね。例えば常識的な人間の美醜観念と非常識な人間の美醜観念が違うとするならば、或は犯罪者や変質者の美醜観念は犯罪を犯してはいない常識的人間とは違うから、異端だという差別化に発展するのは、どうにも否めない事実だとわしは思うが、どうじゃろう?」
菜摘が答える。
「それは違うと思います。卑近な例になりますが、犯罪を犯した人も犯してない人も、美しい景色は美しいというのは当然ですから、そこに分け隔ては無いと私は思います」
風俗研究家が鼻をわざとらしく鳴らしてから言った。
「ならば概ね眼が見える人達は全部ひっくるめて常道常軌主観を持っているというならば、眼が見えない人は常道常軌主観を持っていないと、貴女は言いたいのかね?」
菜摘が答える。
「それが詭弁が詭弁を生む論理展開だと私は申し上げているのですが」
七瀬が口を差し挟んだ。
「詭弁には詭弁をで上等じゃないか。阿婆擦れが!」