おいらんセミナー103
「そんなのは明らかに詭弁です。人間存在の常軌的と言うか常道的主観に於いての醜さに相対する概念は美的概念であり、その二元論をなし崩しにすれば、それは美醜論理の破綻を招来し、全て無に帰し、詭弁が詭弁を生むだけの論理展開になってしまうではありませんか」と菜摘は言った。
菜摘が念を押すように言う。
「例えばここでの論理軸を人間主観から外してしまうと、そこには全くの混沌しか生じなくなり、論理自体が破綻してしまうわけです。ですから私はあくまでも人間主観の善悪観念や美醜観念を中心に論理を展開しているわけです」
風俗研究家が言った。
「ならばその論理展開に準じて物を申せば、人間存在は自然に相反する言わば汚物存在であり、その美醜の観念に照らし合わせても、自然との調和が、その根本的存在理由からして、どうしても出来ない汚物異端的存在ならば、その美的観念をも目論んだ矢先から畢竟醜いものとなり、そこには美しさという概念すら発生能わず、その醜さが平行移動して、心の美をも心の醜さに変換せしめ、心の美イコール心の醜さならば、その美を愛でる事則ち醜さを愛でる理となるではないか。違うかのう?」
菜摘が眼を細めてから反論する。
「そんなのは明らかに詭弁です。人間存在の常軌的と言うか常道的主観に於いての醜さに相対する概念は美的概念であり、その二元論をなし崩しにすれば、それは美醜論理の破綻を招来し、全て無に帰し、詭弁が詭弁を生むだけの論理展開になってしまうではありませんか」
七瀬が焦れながら喚いた。
「現代人の心には清廉潔白なるもの無し。美しさなど一欠けらもなく醜いだけの存在だと先生は言っているんだよ。分からないのか、阿婆擦れが!」