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おいらんセミナー101
「つまり、あんたは全く嘘八百の猿芝居を、やれ美しい心の所作だとか、心の美と論い、喜び喜悦の涙を流す真正のお馬鹿さんなわけだ。阿婆擦れさんよ!」と七瀬は菜摘を詰った。
七瀬が畳み掛ける。
「つまり、あんたは全く嘘八百の猿芝居を、やれ美しい心の所作だとか、心の美と論い、喜び喜悦の涙を流す真正のお馬鹿さんなわけだ。阿婆擦れさんよ!」
菜摘が形勢不利をもろともせず反論する。
「私は百ある嘘の中の一つの真実としての心の美を全身全霊で感じていたいのです。それ以上は何も望んではいません」
七瀬が腹を抱え引き攣るように笑い言った。
「おい、阿婆擦れ、勘弁してくれよ。百ある中の一つの心の美なんか広がるわけがないじゃないか。そんな理屈誰でも分かるぞ?」
菜摘が否定する。
「いえ、それが真実の心の美ならば、その広がりは果てしないものとなるに違いありません」
七瀬が切り返す。
「そんなの幻想だ。絵空事に過ぎない戯言じゃないか?!」
「いえ、絵空事なんかじゃありません。真実の愛は必ずあるのです。私はそう思います」