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第6話 恐ろしい子でした

 無事に用を足して教室の前の廊下に戻ると、大層お怒りの様子のエイダ教官が鳩尾を肘で突いてきた。


「ごぶっ!」


 避けずに受けたら、案外強かったので倒れてしまった。エイダ教官……流石この学園の教官をやっているだけのことはあるな。

 蹲りながらエイダ教官を見上げると、そこには秘密の花園が存在していた。


「パンツ……白なん、て……! いいチョイス、で……ぐはぁっ!」


 背中を思い切り踏まれて、体が床に叩きつけられた。肺から空気が抜けて、ちと脱力した。


「うぐぅ……」


「最低です! 今までこんな失礼な人、見たことありませんっ!」


「さっき、のは……不可抗力です……!!」


 エイダ教官から鳩尾食らったから倒れちゃったから……見上げたらパンティがあるなんて、思わなかった。

 白のパンツは目に優しいね。


 耳まで真っ赤にしているエイダ教官もなかなか可愛い。純情だなぁ。


「学園長が変だからこんな人が来るのですね……! 立ってくださいノア教官! 生徒を待たせてどうするのですかッ!」


「立てないくらいのダメージを与えたのはエイダ教官で……いえ、何でもありませんですとも!」


 ギロリと睨まれ、再び俺の背中を踏みつけるような素振りを見せたため、俺は反論を止めた。

 たぶんエイダ教官、結婚したらかかあ天下になるんじゃないかな。


 よっこいせと立ち上がり、伸びをして痛みを和らげようとする。まだ痛いな……手加減しなかったのか?

 あぁそうだ、まだ聞いていなかったことを聞いておかないと。ちょっとしたのを感じるからな、教室の中から。


「エイダ教官、質問です」


「教えません!」


「スリーサイズではありませんよ?」


「……何ですか。早くしてください」


 俺が『質問』と言うだけでそっちの方を考えてしまうとは、よほど気にしているのか。ちょっと悪かったな。

 気を取り直して、こほんと咳払いをする。


「エイダ教官の取得属性魔法を教えて下さい」


「属性ですか? 治癒と火です」


「治癒ですか、珍しいですね」


「解毒も使えますよ!」


「おぉ、頑張りましたね」


 えっへんと胸を張ってドヤ顔になる美女……。イイ画だ。




 取得属性魔法、とは。


 魔法は8種類存在する。

 火、水、風、土、雷、光、闇、そして治癒だ。

 治癒以外は攻撃魔法だが、補助に使えるのも一部ある。

 前の5種には派生魔法があるとされている。

 火だとより高温の青い炎が出せる。

 水だと自在に氷を作れる。

 風だと天候を操れる。

 土だと植物に影響を及ぼせる。岩を作りもできる。

 雷だと……うーむ。これは微妙だな。でも慣れると静電気まで操れるようになるから、冬にバチッてならなくて便利だけど。派生って言えるのかねぇ。


 光は元々祝福の類いの魔法で、こちらは派生魔法は存在しない。

 闇も光と同様に、派生魔法はない。元々は呪いをかける魔法だ。ただし深くのめり込むと危険な目に遭う……らしい。


 取得属性魔法に含まれない魔法も存在する。魔力を持つ人間ならば誰にでも使える『強化魔法』がそれだ。マスターすれば物理的な攻撃を防げるようになる。



 このように、人にはそれぞれ使用できる魔法がある。だが人によって使える属性は変わる。

 取得できた属性の魔法が何なのか聞くから、取得属性魔法と呼ぶのだ。

 一人が取得できる属性は最高で4つ。しかし一般人は最高で3つだ。

 4つ取得できたのは、皆王族だ。王族だけは治癒と他に属性を取得することが多い。治癒は確定だ。


 一般人は最高で3つだが、ほとんどが2つだけだ。3つもあれば相当才能があると言っていい。

 エイダ教官は2つなので平均並だが、治癒がある。

 治癒の魔法取得者は出現率が低く、この世界の0.1%の確率でしか取得した者が現れない。故に貴重なのである。


 さて、王族は最高4つでしかも治癒が絶対に入っている。どれだけ不公平なのか、お分かり頂けるだろうか。


 この国の王族のことだから、他の国の取得属性魔法事情は知らないけどな。



 そして、エイダ教官が胸を張って言った通り、治癒には解毒が含まれている。

 ただの治癒魔法は傷を癒すことしかできない。しかし解毒魔法取得まで才能を開花させると、毒を解せるのだ。

 治癒魔法を取得した者の中で解毒魔法まで取得できる才能があるのは、治癒魔術師の中で1.0%。つまりエイダ教官は1万人に一人の逸材という訳だ。


 美人で笑顔が可愛く性格も悪くないのに体つきもよくて、しかも1万人に一人の才能を持っているなんて……恐ろしい子……!!


「ノア教官の取得属性魔法は何なのですか?」


「え、俺ですか? 俺は闇と水と雷ですよ」


「3種類ですか、凄いですね!」


 相当才能があるレベルだしな。


「じゃあ本当にそろそろ教室に入りましょうか。先延ばしにされてる感が半端ないので!」


 痺れを切らしたのだろうエイダ教官が、俺の後ろに回って背中を両手で押してくる。

 教室かー。教官になる実感がして嫌だなー。


 ……腹、括るか。


 そう決めて教室のドアに手をかけたその瞬間、


 ドッゴォォォォンッ!


 と、凄い音がした。明らかに教室の中からだ。


 後ろのエイダ教官を見ると、彼女は眉をしかめていた。

 予想外の出来事、か。


 勇者候補っていうくらいだし、血気盛んなんだろう。ドンパチやってても不思議じゃない。

 ここは教官らしく、仲裁に入るかぁ。

 お読みいただきありがとうございますm(__)m


 この1話の登場人物

 ノア・アーカイヤ 主人公。黒髪黒目。今回は運良く(?)美女のパンツを見ることができた。

 取得属性魔法:闇、水、雷


 エイダ・ギレンラ 水色の髪と群青色の瞳。セクハラ嫌い。⬅(これによってノアを軽蔑中。

 取得属性魔法:治癒、火

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