第20話 勝負内容
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「「「ゲーム?」」」
ジルベルト、ミリフィア、リマの3人が声を合わせて疑問の声を上げた。
声が合うくらいだから、案外仲良くなれるんじゃないかなぁ……とかどうでもいいことを考えつつ、先程『怖い』と言われた笑顔を消して、続きを言う。
「えぇ、まぁ。ゲームです。勝負内容は何でもいいですよ? ただ、俺が勝ったら授業は受けてもらいます。君達が勝ったら……えっと、どうすればいいですか?」
俺が勝ったらっていうのは考えていたけど、逆バージョンは考えていなかったよ……。
あ、俺が出て行くっていうのはどうだろう。
出て行く=自由の身!
監獄には戻らない。その選択はない。
おぉ、素晴らしいな! そしてそしてぇ、
自由の身=復讐するための時間が増える!
なんということなの!? じゃあ俺、この勝負に負けようかしらん……。
しかしこの考えはすぐに失せることとなった。
「じゃあ私達が勝ったら、あいつの過去をぜーんぶ、恥ずかしいこととかふ・く・め・て、話してもらうのはどうかしら?」
なんちゅう鬼畜なことを! ミリフィアって意外と鬼だね。
そんな風に笑いながら言うのやめようか。今の状況を他人が見たら、10人中10人が君が悪役って言っちゃうよ?
これじゃ俺は負けられないじゃないか……。復讐がぁ、復讐がぁ。
ミリフィアの意見には皆さん賛成のようで、うんうんと頷いていた。エレンはちょっと微妙な顔している。人の過去を暴くのは良くないとか思っているのか?
だとしたら、エレン、君、良い子過ぎ!
「エレン君、良い子……」
「へ?」
いかん、声に出てしまった。別にいいけど。
「エレン君、本当に良い子……」
「いや、さっきから何ですか!? ちょっと怖い……」
「失敬な。褒めてるんじゃないですか」
「それはそうなんですけど……」
何だよその変な顔は。褒められて嬉しくないの? マゾなの? それとも俺に褒められても嬉しくないってだけなの?
俺、嫌われてる……?
ガーン、とショックを受けている間にも、あっちはあっちで話は決まったらしく、エイダ教官が笑いながらこちらを見ていた。
……ん? エイダ教官、いつの間に生徒側に!?
「決まったわよ!」
ビシッ! と俺に指を人差し指を突き付け、ミリフィアが叫んだ。
「人に指を指しちゃ駄目ですよー」
「そんなのどうでもいいわ! 聞きなさい、私達が勝ったら、あんたは自分のやってきたことを全部言うのよ!」
「全部って、出自とかもですか?」
「勿論よ!」
そうか、王子だってことも言わないといけないのか。今では王子じゃなくて王の兄なんだけど。
俺がどんな人生を送ってきて、どんな奴等を殺してきたかも言うのか……。
そんなの、お断りに決まってるだろ。
この勝負、勝ってやるよ。
「分かりました。で、勝負内容は何ですか? そちらも決めていいですよ?」
「内容は……そうね、何が良いかしら?」
首を傾げて振り返ったミリフィアに、ジルベルトが舌打ち混じりに呟く。
「……戦えばいいだろ。俺は、弱い奴からは何も教わりたくない」
「でも、あいつ死刑囚よ? 人殺しかもしれないし、危険だわ」
人殺しですが!? ってか実力は確かだと思うとか、言っておいたよね!? 実際、俺強いし。ここにいる全員に襲われても勝てるくらいには、強い。
(相手が)怪我しないように手加減をする程度には。
「何だと?」
「え、聞こえてました?」
「丸聞こえだっつーの!」
ああああ独り言の癖のせいかぁああああ!
いい加減に直さないといけない。自分の考えていることが筒抜けになると、恐ろしいことが……ある、かもしれない。
あ、俺が考え事している間に勝負内容決まったっぽい。
さっきの俺も独り言でやる気が出たらしく、戦うとかなんとか。アホか。俺強いって言ってるじゃん。
「じゃあ、決まりね!」
真正面に仁王立ちのミリフィアが、またもや俺に指を突き付けながらニヤリと笑った。
「私達5人対あんたよ! 10分間戦えれば良いということにしてあげるわ!」
「10分間……。いいでしょう。余裕ですよ、余裕」
ミリフィアの後ろではジルベルトが殺気駄々漏れで俺を睨んでいる。ルツは興味なさそう。リマは不安そうにしているだけだ。
たぶん、このメンバーにエレンを含めて戦っても、普通に勝てると思うんだが。
「あー、ハンデを付けていいですか?」
ジロッとミリフィアは目を動かした。怖いよ、女の子がそういう目をするもんじゃありません。
「ハンデですって?」
「えぇ。例えば、俺からは攻撃しないとか、半径1メートルから動かないとか」
「そういうハンデなの?」
ミリフィアの眼差しが、戸惑うように揺れている。実際、戸惑っているのだろう。自分から自分が不利になるようなハンデを言っているんだもんな、俺。
だがな、いくら5対1と言ったって、戦闘初心者と玄人では実力差が有りすぎるんだ。何かハンデがないと瞬殺してしまう。
「皆さんの実力は知りませんが、子供に負けるほど俺は弱くありません」
見たところ、ジルベルトはそこそこ強いだろう。貴族だし、俺を攻撃しようとした時のあれはセンスが良かった。
ミリフィアは分からない。でもこんなに強気だから、強いのかな? うん、性格は強い。
リマは明らかに戦えないだろう。12歳の少女が戦えるなんて言われたら、凄すぎて崇めたくなるわ。
ルツは眠そうだな。そのまま寝てしまえ。戦わずに済むならそうしたい。
エレンは……
「エレン君、君って強いですか?」
「なんですか、いきなり」
うん、いきなり『強いですか?』なんて聞かれても戸惑うよな。だから俺のことを怪しむような目で見るのはやめようか。俺は教官として君の実力を……まぁいいや。
「えっと、気になったので」
「強い弱いで言うなら、弱いんじゃないすかね。今までは近所の知り合いのお爺さんに鍛えてもらってただけなんで」
あっさり教えてくれる。
弱いとは言うが、強い奴ほど謙虚なものなのだよ。能ある鷹は爪を隠す、っていう。
と言うか、近所の知り合いのお爺さんだって? 何そのお爺さん。
「ほう、そんな人が」
「本名も知らないお爺さんなんで、強さも分からないんすけどね」
「そうですか。ところでエレン君、話しづらいならタメ口で良いんですよ?」
貴族はまだしも、平民出身だと敬語は息苦しいものなのだ。調査済みです。特におっさんとか、敬語使うの苦手そう。
酒場とか行くと、敬語にしようとして変な言葉遣いになる人が多かったんだよ……。
「……そうですか? でも無意識に使ってるんで、大丈夫です」
「そうですか」
でも、敬語だと距離を感じるみたいで嫌なんだよなぁ……。俺は敬語のままだけど。
いいんだ、これは。癖っぽいものだから。
本人が敬語で良いと言うなら、良いのだろう。俺は教官だしな、うん、敬語で当然なんだ! ……たぶん。
ミリフィアの覚悟は決まったらしく、ツンと顎を上げ、仁王立ちのままで口を開いた。
「……いいわ。じゃあ、さっきあんたが言ったハンデ、使わせてもらうわね。
10分間、耐えてみせなさい!」
ザッ、とエレンがあちら側に下がった。他の4人も構えている。エイダ教官はストップウォッチを構えていた。
もう始めるのか。作戦とか考えなくていいの? いいのか、そうですか。
「監獄から出て、初の戦闘か……。準備運動程度に動きましょっ」
俺は武器を召喚した。武器を召喚することは誰でも出来ることで、特別でも何でもない。
武器は自分の魔力で作られている亜空間に収納できる……って誰かが言っていた。ちなみに武器以外は収納できないらしい。微妙に不便だ。
武器はは、刃の部分が真っ黒の刀だ。全体的に地味だが、装飾が綺麗だと思う。
王子時代にオーダーメイドで作られた武器で、どこまでも俺専用の特注品だ。
勇者候補全員も自分の武器を召喚したところで、エイダ教官の声が中庭に響き渡った。
「では10分間……始めッ!」
その時、俺は襲いかかってくる生徒に夢中で、こちらを見る部外者2人分の視線に気付かなかった。
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この1話の登場人物
ノア・アーカイヤ 主人公。黒髪黒目。死刑囚。
取得属性魔法:闇、水、雷
エイダ・ギレンラ 水色のロングヘアーと群青色の瞳。
取得属性魔法:治癒、火
リマ・ニフェン ピンクゴールドのショートボブに琥珀色の瞳。12歳。
ミリフィア・メイデン オレンジ色の髪をポニーテールしている。瞳もオレンジ色。15歳。正義感が強く、勝ち気な性格。
ルツ・ディルス 新緑色の髪を長い1本の三つ編みにしている。瞳は深緑色。細身。18歳。常に読書している。
エレン・オスタリア 明るい茶髪。蒼い瞳。お人好し。17歳。
ジルベルト・ド・ワーシレリア 濃い灰色の髪。くすんだ緑色の瞳。17歳。ワーシレリア公爵家の長男。




