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チュートリアル 1

「――んー……」



 意識が徐々に覚醒し始め、俺はゆっくりと瞼を開く。

 背中が少し痛く、硬い感触がするので、床で寝てしまったのだろうか?



「…………うん? 知らない天井だ……」



 目覚めると知らない天井だった……何てことを俺は今、経験している。

 まだ頭がボーとしており、思考がうまく働かないが、この天井には見覚えがない。

 俺は何をしていたんだっけ?

 確か……大掃除中に見つけたPCゲームを起動して、何か面白そうなゲームだったからそのままキャラメイクをして、それから……。



「――ッ!?」



 ああ、そうだ! キャラメイクをした後に突然、パソコンの画面が強烈な光を発したんだ……!。

 そのことを思い出した俺は、ガバッと上半身を起こして周囲を見渡すと、そこは自分の部屋ではなく、古びた石造りの部屋の中だった。

 俺は自分の部屋にいたはずなのに、どうしてこんな場所にいるんだろうか?

 何が何だか解らない。頭が混乱する。

 いや……落ち着け。こういう時は、冷静になって今自分に起きていることを確かめるんだ。

 俺は自分にそう言い聞かせることで、何とか混乱を抑え込むことが出来た。

 そして、自分の身体に異常がないかを調べようとして――。



「なんじゃこりゃああぁぁーーーーーーー!?」



 と、思わず叫び声を上げてしまった。

 何故なら俺は――全裸だったからだ……。

 ちょっ!? 待て待て待て待てっ! ちょぉぉーーーーと待てっ!? 何で全裸なの!? 服はどこっ!?

 ついさっき、冷静になるよう自分に言い聞かせることで、何とか混乱を抑え込むことが出来たというのに、無駄だった……。

 というか、目覚めてから今の今まで、全裸であることに気が付かなかった俺って……。



「ああっ、もう!! 本当に何が何だか解らない!」



 俺はそう喚き、頭を両手で押さえようとする。

 すると――。



「……ん?」



 何か固いモノが、頭を押さえようとした両手に触れた。



「……ん? んん? んんん!?」



 俺はその固いモノを何度も手で触る。

 これは……何だろうか?

 なんか、側頭部の辺りから前方へ、カーブしながら伸びているような……。

 というか、頭から生えているような……。



「…………………」



 無言で、その固いモノを触り続けて――。



「うん。これは角だな」



 俺は側頭部の辺りから生えている固いモノを、角だと結論付けた。

 …………うん?



「角おおぉぉーーーーーーーーーーーーっ!?」



 本日、二度目の絶叫である。

 ははは……もうね、この現実をどう受け止めれば良いのか分からない……。



「…………取り敢えず、何か着るものをどうにかしないとな」



 混乱し過ぎて逆に冷静になったようだ。

 というよりも、考えることを放棄したと言ったほうが正しいかもしれない。

 俺は立ち上がって、何か着るものが無いか探そうとする。

 しかし周りを見る限り、この古びた石造りの部屋の中には服になりそうな物は無さそうだ。



「………………」



 俺は無言で項垂れる。

 すると、足元に革製だと思われる口紐の付いた小さな袋が落ちているのが視界に映り込んだ。

 しかし――。



「あ、あれ?」



 その小さな袋の真上に、文字のようなものが見える。見間違いだろうか?

 俺はごしごしと目を擦ってから、もう一度見てみるが、確かに文字が見える。

 どうやら見間違いではないでは無かったようだ。

 その小さな袋の真上には――。

 


【魔法の袋】



 と、表示されていた。



「…………」



 俺はその【魔法の袋】と表示されたものを、拾おうとして恐る恐る手を伸ばしたその時――。



『――に――接続――――完了』



 何か声のようなもの聞こえたような気がした。



「気のせい……だよな?」



 俺がそう呟くと――。



『――聞こえいますか? 聞こえたのなら返事をしてください』



 という声が頭の中に響いてきた。



「うわっ!?」



 俺は咄嗟に後ろへと飛び退くと、両方の拳を前に構えて、周囲をキョロキョロと見渡した。



『すみません、驚かせてしまったようですね。今、貴方の脳内に直接語り掛けているのです』



 その声は、男のようであり、女のようであり、老人のようでもあり、子供のようでもある、そんな不思議な声だった。

 いきなり声を掛けられて驚きはしたが、それほど混乱することはなかった。

 というよりも、先ほどからいろいろあり過ぎて、俺は「もう何でもど~んと来いやっ」という心境なのである。

 そうやってこの状況を深く考えずに、全てを許容してしまったほうが楽なのだ。



「……脳内に直接語り掛けているってことは、テレパシーみたいなものなのか?」



 俺は声の主に、そう問い掛けると――。



『そんな感じのものです』



 そう答えが返って来た。

 というか、結構アバウトだな、おい!



『そんなことはありません』



 し、思考を読まれた!?

 いや……相手の脳内に直接語り掛けることが出来るなら、思考を読むことだって出来るんじゃないか?

 まあ、今はそんなことよりも――。



「アンタ何者?」



 俺の脳内に直接語り掛けてくる存在の正体だ。



『私は次元世界創造思念体――この次元世界を創造した……いわゆる“神”と呼ばれる存在です』



 …………はい? 今コイツ“神”とか言わなかったか?



『言いましたよ』



 ああ、そうか……聞き間違いじゃなかったのか……。

 次元世界創造思念体……要するに、世界を創造した存在ってことで良いのか?



『その通りです』



 というか、勝手に思考を読まないでほしいのだが……。



『解りました』



 うん、そうしてください。

 それにしても、声の正体が神様だったとは……。

 まあしかし、神様なら今のこの状況を説明できるだろう。



「その神様に聞きたいんだけど、ここは何処で、俺の身に何が起きたんだ?」

『ここは“ムンドゥス・パンタシア”と呼称されている惑星で、貴方はこの場所に転移したのです』

「……はい? ゴメン……もう一度言ってくれない?」



 おかしいな、俺の聞き間違いか?

 その口振りだと、ここが別の惑星だと言っているようなものじゃないか。



『ここは“ムンドゥス・パンタシア”と呼称されている惑星で、貴方はこの場所に転移したのです』

「…………」



 聞き間違いじゃなかった……。

 俺が転移したってことは、状況的に間違いないだろうが、その転移先が別の惑星だったなんて……。

 それに“ムンドゥス・パンタシア”……確かここへ飛ばされる前にプレイした謎のPCゲームがそんなタイトルだった。これは偶然の一致なのか?

 いや……この状況を見るにそんなことは無いだろうし、あのPCゲームがこの転移に何かしら関係しているんだろう。



「ここは……地球では無く、別の惑星ってことで良いのか?」

『その認識で間違ってはいませんが、より正確に言えば、異次元世界の惑星です』

「異次元世界の惑星? それはどういう意味だ?」

『貴方が住んでいた“地球”と呼称される惑星が存在する次元世界とは、異なる次元世界に存在する惑星という意味です』

「異なる次元世界に存在する惑星? えっと……つまりそれは……“異世界”ってことか?」

『貴方達はよくそう呼んでいますね。その認識で一応合っています』



 一応合っていますって……。

 まあ良い……要するに、ここは地球とは別の惑星だけど、異世界の惑星ってことでFA(ファイナルアンサー)

 しかし……よくゲームや小説の主人公が異世界に飛ばされたりするけど、まさか自分がその経験をするとは思わなかった……。



「――異世界に転移したっていうのは解った。でもなんで、俺はこの世界に転移してしまったんだ?」

『私が貴方を転移させました』



 神様は平然とそんなことを言ってのける。



「…………お前が原因かああぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!」



 そうなんじゃないかと薄々感じてたけど、やっぱりそうだったのかよっ!

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