第16話:それは紛れもなく
本編です。
~怪奇!! 建物消失事件!!~
うんむ、前回は伏線と回収ラッシュでひどい目に遭いました。
首にはまだ金属の輪っかがついてます。
どこぞかで見たようなアイテムですが、魔法を阻害するものなんてメジャーなアイテムなので気にしません。
これが一般的なファンタジーだと主人公大ピンチなんですが、全然ピンチじゃないです。
魔法、使えますから。
アイテム仕事しろ的なこと言われるのは解ります。
でも仕様ですから仕方ありません。
では現在の心境を語ることにしましょう。
いっせいのーで!
よっしゃああああ!! 俺はじゆうだああああああ!!
主にメシが自由ううううううだああああああ!!
さらば! バター山盛り生活!!
ふっふっふっ!! これで森の中で焼肉万歳が出来るぞ!!
野草と採って食うぞ!!
魚焼いて食うぞ!!
ああ!! 脂っこい食事から開放されたこの開放感!!
たまらん!! 最高だ!!
おれは火炎精霊に命じて首輪をぶっ壊した。
バキン!!
「うっしゃあああああ!! 俺は自由だああああああ!!」
貧民街の真ん中で迷惑に叫んだ。
だが、だれもそんな事気にする人はいない。
容姿がいいから、悪い人に狙われちゃうかも知れないけどね!!
まあ、俺の隣にいる火炎精霊を見て全員逃げたんだけどな!!
そこはテンプレで無謀にも襲い掛かるところでしょ!!
ふう、テンションが上げ上げマックスになってしまった。
とは言え、パパンとママンの救出はしたいな。
ここまで大切に育ててくれたのは非常にありがたい。
恩を返さねばならぬ。
というわけで情報収集をしたんだけどね。
うん、道端に落ちてる号外がね。
パパンの逮捕記事だったの。
懲役刑は確実だって書いてあるんだ。
これって重要な情報なんだよね。
だって、猶予が相当あるんだよ。
生きてるっていうか、生かされてるわけだからね。
いきなり死刑!! とかにはならんってことだ。
助ける方法は幾らでもある。
物理的なものから政治的なもの、あとは債権(お金)的なものまで多岐にな。
だが救出のミッションが難易度ルナティックなのだよ。
俺は昨晩ゴミというか新聞を漁っていたのだが、どうも戦争をおっぱじめる気らしいんだよね。
そんで、パパンの逮捕をきっかけにエルフの国にいちゃもんつけて大戦争かます気らしいのよ。
そんなに計算機って大事なのか? よくわからんな。
だから、パパンが有罪になるのは政治的に決められたことなので、取り返しがつかんのだ。
ママンも同じように有罪になるだろうね。
どっちも弁護士無しで裁判する予定らしいし。
え? 弁解は出来るのかって?
無理です。被告人には発言権は一切無いです。
お勉強で習いました!!
畜生! どうすりゃいい?
俺も指名手配されてんだよね。
子供は執事が連れ出したことになってるな。
まあ、普通そう考えるだろうけど。
犯罪者の家系は断絶が基本ですか?
逃げなければいけませんね、森の中に。
また山に篭ってSYUGYO作戦です!!
ドラゴンの手料理がまた食えるぞ!! やっほー!!
言葉はそっけないけど、あれで結構世話やきさんですからね、彼。
資材の確保を考えつつ街を彷徨うことにします。
建材~建材は落ちてねぇか~?
火炎精霊をつれて一時間、いい素材が見つかりました。
石造りの教会です。
相当昔に破棄されてますなぁ。
栄枯盛衰、盛者必衰、諸行無常ですな。
中に入っても誰もいません。
浮浪者も近づかないのですな。
これは最高です。
そんなわけで魔法の組み換えを行います。
床の瓦礫をどけて、いつも持ってるチョークで魔方陣を書きます。
そして儀式。
ワードを組み替えて『火炎―自律―高速―強化』にします。
遠くへはいけませんが警護には十分な火炎精霊にします。
次に『身体―防護―飛行―高速』で防御しつつ空も飛べるという新ワードの呪文です。
重さゼロで歩けます。
感圧式トラップもへっちゃらです!!
最後に『収納―建築―広域』でなんと!!
建築物を収納します。
ひゃっはー!! ファンタジーおなじみの収納魔法だぜ!!
って言っても神様になってから知ったんだけどなー。
だってさ、仕事で全然そんな余裕なかったもん。
さぁて! 建物をしまっちゃうぞー!!
「おい! お前、新入りか?」
後ろを振り向くと浮浪者っぽい男の子がいた。
十歳前後かね?
「貴方、だれ?」
まあ一応六歳児なのでこんなとこかと。
「新入りだな、孤児になったんだな? それとこどっかから逃げ出してきたのか?」
まさか建物を盗みに来たとは言えんわな。
さてどうする?
どうやらこの建物は子供が占拠してるみたいだな。
そうなると、ここの子供たちが困ることになりますな。
「おい、何か言えよ。新入り」
「ローレル」
「あ?」
「私の名前はローレル・グラフトンよ」
「あ? 名前なんて意味ねぇよ。お前は新入り。それで十分だ」
なんかいやらしい目つきで見てますな。
「お前は今日から兄貴たちの玩具兼商売道具だな。売りでちゃんと稼げば良い目がみれるぜ?」
ニタニタ笑ってますな。
よし、この建物は接収しよう。
魔法発動!!
接収ううう!!
「えっ? 建物が消えた?」
「じゃ、さよなら」
飛行魔法発動!!
脱出!!
「え? 白? 白のレースパンツ?」
呆然としてる少年を置いてけぼりにして、俺は再度モノリスまで飛んでったのだ。
パンツを見られたか。これも業である。
~またか? 何? 救出作戦?~
日暮れ前にモノリス前到着。
ロケーションは当然山の中ですが、今回は中腹程度ですな。
ドラゴンが居ました。
「またか? もう少し後ではなかったのか?」
「お家崩壊して指名手配になったんだ」
「……今回は商家の子女だったはずだが? 商売に失敗したのか?」
「近いな、商売で嵌められたんだ」
「詐欺か? 指名手配とは一体どういうことだ?」
「エルフに売るとだめな計算機を売ろうとした罪らしい。たぶん貴族が関わってる」
「……戦争が近いな」
「ファッツ!? 何故わかった?」
ドラゴンがため息をついて言った。
「はぁ。エルフ族が人族側の最重要戦略物資を奪いにきたと、人族は思うだろうからだ」
「最重要? 計算機が?」
え? 何で呆れてるの?
「……魔力の威力計算や高度な計算の補助とする。魔法を放ったときの放物線による弾道の計算とかな」
「へぇぇぇ」
「あとは、魔力計測機器も売買禁止だ。魔力検知で威力を一定に保ち射撃を行えば、計算した弾道と同じ軌跡を描くからな」
「同じことが重要なのか」
「そうだ、兵器としての運用が非常に楽になる。兵士の質が一定となるからな」
「ファンタジーならさ、どぎゃーんと行ってずばーんでどどどーんな感じで済ませればいいのに」
「それで戦争に勝てればな。現実は非情だ」
「大ギア長さんてそんなすごい発明家なのか。兵長さんの親戚かね?」
え? 何でそんなに呆れるんだよ!! ドラゴン!!
「ギア長は……パソコンで言うところの計算速度とメモリだ。ギアという人間ではない。解析機関だからな?」
そうですか……よくわからん!
ま、とりあえず収納した建物を出すとしますか。
シュワン!!
微妙な効果音を出しながら石造りの教会が出現した。
「随分と手入れされていないようだな」
「ま、孤児たちが使ってたからな。分捕ってきた」
「それでいいのか?」
「人のこと商品にしか思ってないやつらに同情は出来んよ」
「貧民街ならばいたしかたないだろう。そうでなければ生活できん」
「そして次のミッションだ。パパとママの救出作戦だ」
「何? 救出作戦? 不可能だ。幾ら証拠があっても政治的に決定している。あきらめろ」
「いや、そこをなんとか」
「無理だ。それにその体は幼い。負荷がかかりすぎている。今日は休め」
「うぐ、どうして皆休ませたがるの?」
涙目で上目遣いで、懇願してみる。
「だめなものはダメだ。寝ろ」
「ううう、わかったよ」
ドラゴンに急き立てられるようにして寝かされました。
無理とか言わんといてください。
~翌日~
「起きろ、仕事だ」
「仕事っ!? どこっ!? 仕事どこ?!」
うおおおお! 仕事だ!! 仕事をするぞ!!
「よし、まずは蒸気馬車競馬場に行き、貴族席の人物を確認しろ。人物画はモノリス参照。次に貧民街に行き、孤児を三十名以上雇い半数はトリス川を浚わせろ。もう半数は街のゴミをかき集めろ。糞尿も回収し、生ゴミも回収。金属類も回収すること。それ以外の可燃物は焼却処理せよ。次に指定する金属の採掘を行い精製せよ」
「ラジャー!!」
俺は指令書をもらったら、早速儀式を行い最適な魔術をくみ上げていく。
仕事だ! 仕事が出来る!!
モノリスに接続する魔法と飛行魔法と火炎魔法と治療魔法と収納魔法をくみ上げて出発だー!!
ひゃっはー!!
みなぎってきたあぁぁぁぁ!!
空を飛ぶぜぇぇえ!!
「……両親のこととか、これがどんな仕事か一切聞かんのか?」
ドラゴンのつぶやきは俺に一切届いていなかった。
~一ヵ月後~
朝、貧民街に行き孤児たちに仕事を与える。
そのまま蒸気馬車競馬場に行き、お貴族様たちの賭け事を観察。
お~、あのラッセル卿ってひとずっと負けが込んでますな。
大貴族ですから、身持ちを崩すまでに時間があるだけですなぁ。
メモしつつお昼ご飯を食べる。
夕方、孤児の仕事の成果を確認、回収。報酬を渡す。
夜、精霊で採掘、精錬ずっとさせているので成果の確認と資材の受領。
そしてドラゴンの指導の下、回収した資材を加工。
これが一ヶ月毎日続きました。
ビバ!! お仕事!! 充実した時間だなぁ。
あ、ドラゴンから次の指令が。
「指定した布の発注および、当該貴族への接触を行え」
らじゃ!!
~三ヵ月後~
「……おお、俺はこれがやりたかったんだ」
俺は感涙であった。
なぜなら、転生チートですばらしい
目の前の巨大な物体は、軽金属で出来た十メートルほどの卵を横に倒し、下に箱型のゴンドラを取り付けたものだ。
卵の中には糞尿から精製した水素ガスが入っている
メタンや硫化水素を魔法で分解して水素に変換している。
そしてスターリングエンジンという外燃機関によってプロペラで飛行するのだ。
もちろん燃料は糞尿からのバイオガスである。
それは魔法も使わずに空中に浮いている。
実際に飛行して、拠点から大分離れた場所にいる。
そう、それは紛れもなく。
「飛行船だ。間違いなく技術チートだ……」
ドラゴンによる適切な指導により、それは完成した。
「チートであるかどうかはわからぬが、これは取引の材料だ。まだ先がある」
「なんと……まだ先があるのか」
ドラゴンマジパネェ。
「それよりも貴族がちゃんとここに来るように脅迫したか?」
「したよ。もうすぐ来るはずだ」
なるほど、この成果を利用してパパンとママンを救出するのだね。
「最後の仕事だ。この文面を確認し貴族と交渉せよ」
どれどれ……マジですか? パパンとママンはどうなっちゃうんだよ!!
信じるけど!! 大丈夫なのか!?
「こ、これは! 飛行魔力を感じないぞっ!?」
「はい、父がエルフより強奪した設計図を元に作製したものです」
俺の言葉に賭け事で借金がかさんでる大貴族、ラッセル卿は目の色を変えた。
「ほほう……で、何が望みです?」
「父と母の釈放を」
「これはおかしなことを言いなさる。あなたはエルフとお父上がつながっている証拠を見せたではないですか?」
「これを国に提出すればどうなるか、貴方にもわかるはずです」
まあ、エルフの国を警戒するよね。
技術を調査して製作可能か調べるわけだ。
軍事利用のために量産もするだろう。
この世界で魔力の発生しない飛行というのは、ステルス戦闘機と同じことだ。
売りつけるのは誰でも同じことだ。
そう、誰でもだ。
俺でも、ラッセル卿でも、他の第三者でも。
「ふむ、なるほど。パーシー卿に掛け合いましょう」
「ありがとうございます。ラッセル卿」
商談は成立。
かくして後は結果を待つのみ。
~ミッションコンプリート!!~
「パパ、ママ!!」
「「「ローレル!! 会いたかったよ!」」
感動のご対面である。
あのあと、ラッセル卿は約束を守った。
パパンとママンは冤罪ということで一件落着。
戦争への雰囲気は少し和らいだ。
パーシー卿もパパンから奪い取った財産を返却した。
パパンはいくつかの製品をパーシー卿に提供することになった。
アルミニウムという素材を安定して製造するため、秘密裏に雷撃魔法が研究された。
パパンは政界に少し勢力を伸ばすことが出来た。
そして国はラッセル卿を主体にある秘密兵器の開発を命じた。
その兵器とは……
~えるふのくに~
ここは人族の国境を越えてエルフの国の森の中にいる。
「信じられん。これが人族どもが作ったものだと?」
「魔力を一切感じない。通りで国境を越えられるわけだ」
「こんなものが量産されたら、ひとたまりもないな」
エルフの国のお偉いさんと技術者たちである。
「はい、彼らはこれを開発しました。設計図と試作品を秘密裏に持ち出すのは苦労しましたよ」
金髪碧眼の妙齢の美女が、妖艶な微笑でそういった。
俺の変装である。
魔法って便利! (三回目)
「何が望みだ?」
「お金、と言いたいところですが、ここはご縁をとりましょう」
「随分と安いものだな?」
「おや? 私は高く買っているのですがね?」
営業スマイルはプライスレス。
おお、悩んでる悩んでる。
しばらく悩んでからお偉いさんは口を開いた。
「わかった。それでいい。これはもらっていくぞ」
よし! かかった!
「では今後ともよろしく」
そういって俺は姿を消しながら飛行魔法で立ち去っていく。
「……情報収集を徹底しろ。走り書きのメモの一文字すら逃すな。計画は延期だ」
お偉いさんは忌々しげに部下に指示してますな。
さあ、これで両国とも戦争するのを一時中断するでしょう。
新兵器製造の時間とそれの訓練の時間、それらが十分に整うのは、ドラゴンの計算で約十年。
俺はどうにか十年の時間を稼ぐことが出来たのだった。
十年後が勝負だ。それまでに準備を整えなければ……




