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第13話:俺が否定してやる。

本編です。

一気に話数が増えていますが、分割をして補足と本編に分けました。

内容は変わりありません。

~第六世界~


「準備はいいか?」

「もう少し待ってくれ」

 俺は最後の瞑想をしながらドラゴンに言った。

『追跡‐走査‐解析‐遠隔‐制御‐通信‐術破壊‐高速‐隠匿』

 ワードは十分だな。

 これで召喚の経路を逆探知と解析しながら進めていけるな。

「よし、準備できた始めてくれ」

「了解した」

 

 魔術練習場で俺とドラゴンは経路の逆探知を開始した。


 ドラゴンとの共同作業だ。

 俺が追跡、ドラゴンが解析。


 ……時間がかかる地味な作業だ。

 ただ魔力の流れを追跡するだけ。

 

 むう、結構な回り道をしているな。

 中央世界に直接行かず何ヶ所か経由しているな。

 ふむ? これは……


「何か見つけたか?」

「ああ、仮想空間だ」

 下級天使の作成した仮想空間は全部つぶしたと思ってたけど、まだ残ってたのか。

 早速調査を行う。

「ビンゴ、ここで技能を付与してる。データをそっちに送るから解析を頼む」

「わかった」


 俺は次の経路の逆探知にかかった。

 また仮想空間が見つかった。

 探査がしにくいように小分けにするとは、小賢しい。


「また見つかった。今度は魔力制御、魔術系統の付与だな」

「データを送ってくれ。解析する」

 逆探知を続行、また出てきたがたぶん最後だろう、中央世界にかなり近い。


「たぶんここで最後だと思う。これは何だ?」

 よくわからないが、制御系ではあるようだ。

 同じようにデータを送る。

 さらに逆探知をしたがこれ以上の仮想空間は無いようだ。


「これは……隷属の魔法だな……」

「そんなもの、この世界に無いぞ? 下級天使が持ち込んだのか?」

「どうやらそのようだ」

 ドラゴンの解析結果を聞いて、俺は静かな怒りを覚えた。

 無理やり命令させるなど許せない。


「とりあえず終了だ。解析作業に移れ」

 俺はドラゴンの指示に従い逆探知を止め、解析作業に移った。

 解析作業は胸糞が悪くなった。


「なるほど、周囲の魔力を破壊ではなく吸収していたのか。それでアレだけの威力を出していたのか」

「……こいつは……なんだ?……」

「……人体を魔力化しているな。三系統の魔力を全て自在に扱えるのようするためだろう」

「…………」

 ドラゴンは俺の沈黙にかまわず解析結果を話している。


「送還されたときには、もう死んでいる。厳密に言うなら今いる勇者は、全て魂の入った魔法に過ぎん」

 ……糞。


「周囲の魔力を燃料に、ありとあらゆるものを燃やし尽くす。術者の命令を聞く魔法だ」

 彼らが強力だったのは当たり前、そういう魔法なのだから。


「勇者が暴れれば周囲の魔力は減り、弊害が生まれる。弊害は争いを生むだろう」

 それでも問題は無いというのか? ポイントさえあればどうでも良いのか?


「争いは勇者を呼び、さらに弊害が大きくなり争いも大きくなる」

 ただポイントのために争わせているのか?


「そのたびに勇者の魂は、転生ポイントに変わる」

 それをあの創造神は、全ていただくつもりだったのか?

 そのために俺を殺したのか?


「今の勇者を助ける方法は?」

「無い、だが対策は可能だ。吸収される魔力に術式を込めればいい。それで勇者は機能停止するはずだ」

 機能停止……死亡じゃないんだな。糞。


 そこでお互いに何も喋らなくなった。

 神にとって人間はいい玩具だったのか?


 俺は……そんなものになってしまったのか?


 俺は口を開く。

「破壊できるか?」

「ああ、問題ない。一端術を解いて破壊用の魔法に切り替えろ」

 ドラゴンのアドバイスに従い一端呪文を終了させる。


『術破壊』を『空間破壊』に入れ替え再度経路を逆走させる。

 そして、中央世界に近い順番から仮想空間を破壊していく。

 それは単純な作業だった。


「全て破壊した」

「確認した。これでこのタイプの魔方陣は機能を失ったはずだ」

 これで一段階は終了だ。


「この後、混乱が起こるぞ。それに乗じて仕掛ける」

「何をする?」

 

 俺はドラゴンに向かってニヤリと笑いながらこう言った。

「人助けさ。教会の連中の面目を丸つぶしにしてやる」

 神の使徒なんぞ糞喰らえ。

 俺が否定してやる。


~第六世界 三秘術会~


 それは、奇跡であった。


 恐らくこれが、初めて三秘術会の存在を言及したものであろう。

 治療魔法というにはありえないほどの効力を持つまさに奇跡の存在。

 勇者召喚という名の奴隷召喚魔法を初めて批判し、真っ向から否定した存在。

 そして堂々と勇者召喚の魔法を世界の法則ごと破壊した存在。

 職業という枷から開放し、新たなる道を指し示した存在。

 世界が歪んだ方向へ向かわぬように見守る存在。


 それが三秘術会という存在だった。

 

 通常の魔法の領域を完全に逸脱した奇跡を操る集団は、出現当初から不可思議な集団だった。

 ちょうどその頃は勇者召喚の最盛期を迎え、戦争の道具として欠かせない存在となった時期である。

 そして勇者召喚の知られざる弊害が現れ始めたころでもある。


 彼らは堂々と宣言した。


『勇者召喚の儀は世界を破壊する。ゆえに世界が終末を迎える前に儀の全てを破壊した』


 三秘術会を名乗る、幾多の毛皮を纏った小男が大聖堂の前で堂々と言ってのけたのだ。

 そしてそれは事実だった。


 その宣言した日から、勇者召喚は正常な機能を持たなくなった。

 あわてたのは、まず貴族たちだ。

 何せ戦力の補充が出来なくなったのだ。

 勇者を消耗させることが出来なくなったということだ。


 戦争は縮小された。

 昔の戦争に戻った。

 だが戻れなかった。

 傭兵は既に過去のもの。

 彼らは山賊になりはて、ほとんどが勇者に討伐された。

 農民は戦いどころではなかった。

 不作に継ぐ不作で大飢饉に見舞われていた。


 いまさら元の職に戻ることも、槍を持たされることも拒絶されてしまった。

 既に召喚された魔方陣は最重要の拠点となり、厳重な保護下に置かれ破壊することは重罪となった。

 魔術師も殺すことは重罪である。

 常に複数人が召喚を維持する安全策が取られ、事故が起きることを防いだ。


 教会と貴族が血眼になって毛皮を纏った小男を追った。

 それこそ虎の子となった勇者を使って。

 だが、彼らの恐るべき業はそれらを全て排除した。


 幾人もの勇者に囲まれても悠然とし、手を振り上げ、下ろしただけで勇者を塵に変えてしまった。


 それは奇跡だった。


 事実上彼らを止めることは出来なかった。

 あるときは病が流行し街々が滅び去らんとしているときに現れ、すべての病人、けが人を治すという奇跡を振りかざした。

 大魔術師、治療師ですら成し得ぬことを平然と行った。

 民衆は彼らの味方となった。

 教会は治療師の仕事を無許可で行ったとして彼らを指名手配した。

 だが彼らを捕まえることは出来なかった。

 大軍を使い追い詰めんとしても霧か霞のごとく消えうせてしまうのである。


 彼らが拠点とする場所は程なく知れ渡った。

 高き山の頂にある寺院こそが、彼らの本拠地である。

 だが、攻め入られたのは一度だけだった。

 二十万の大軍に百人の勇者を引き連れた王侯貴族連合は、難攻不落の自然要塞の前に辿り着くことなく全滅した。

 大軍はドラゴンによって消し炭と化し、勇者は三秘術の僧兵によって塵に帰った。

 三秘術会はドラゴンを手なずけている、という噂は瞬く間に広まった。

 凶暴で気難しい生き物をどのようにしててなづけているのかは、今を持ってしてもわからない。

 いつの間にかドラゴン寺院と名がつけられ、誰も立ち入らぬ地となった。

 三秘術会の会員以外は。


 最初に宣言した小男こそ三秘術会の指導者であった。

 彼が何を思い会を設立したのかは、語られることはなかった。


 指導者の傍らに常に居たのはドラゴンとトゥールズ卿の娘、ロザンナだった。

 彼女もまた三秘術会の僧兵であり、不可思議な術の使い手だった。

 彼女は十歳の時、ちょうど三秘術会の噂が人々の間で語られるようになった頃、入会を希望した。

 無論、卿が許すはずもなく、彼女は家出同然で姿をくらませた。

 卿が探し終えたときには既に、いかな手段を用いたのか三秘術会の指導者の片腕として立っていた。


 そして指導者が亡き後もその意志を継ぎ、遺された戒律を守り抜いたのだ。

 今も三秘術会があるのは彼女の尽力によるとことが大きいのは、疑う余地も無い。


 災害や飢饉のあるたびに三秘術会は人々を救った。

 私掠船団を火の雨で沈め、無辜の民を守った。

 逆に一つの街が死滅させたこともあった。

 戒律という謎のルールによって行動は様々な憶測をよんだ。

 一つ解るのは教会や王侯貴族が徐々に衰退していったことだ。


 教会は三秘術会と偽り、悪事をなそうとしたがドラゴンに焼き払われた。

 彼らを騙ることはドラゴンによって裁かれる。

 ここに三秘術会という御伽噺が生まれた。



 *D・D・トゥールズの手記より


~バイト天使の報告~


 お疲れ様です今回の追加ポイントは三千十一ポイントです。

 カルマはプラス五十、マイナス四百二十でした。

 まずまずの成功といっていいでしょう。


 あと、支援が遅くなったことをお詫び申し上げます。

 三秘術会のほうはしばらく安泰だと思われます。


 別の小世界へ転送技術も持っておりますので、やがては他の世界でも展開できるでしょう。


 あと勇者たちですが、全員転生を完了しました。

 はい、彼らの望むように転生を行いました。

 記憶の持ち越しは許可しませんでしたが、概ね納得したようです。


 え? 次の仕事ですか?

 まだ、お休みください。

 ダメです。

 貴方は無理をしすぎですから。

 対天使の対策も私が責任を持って行いますから安心してください。


 では、おやすみなさい。


~激怒したバイト天使~


 我に仕え、我を助け、我が呪文に力を与え、火の秘文字の刻まれたこの武器が霊験あらたかに、我が命に背く諸霊を悉く震え上がらせるとともに、魔術の実践に必要な円、図、記号を描く助けと為る様にせよ。

 大いなる強壮なヨグ=ソトースの御名とヴーアの無敵の印に於いて


 力をあたえよ。

 力をあたえよ。

 力をあたえよ。


 あとは、塩水と雄鶏の胆汁を混ぜ合わせた触媒を使って……

 ……これでよし。

 さて、糞天使どもは何処ですか?


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