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第12話:ここを拠点とする。

分割をいたしました。

内容に変更はございません。

~第六世界 洞窟の中で決めたこと~


 ちょうどいい洞窟見つけ休息。

 ぐはぁ……疲れた。

 俺は歩きながら拾い集めた柴を焚いて暖を取る。

 魔術便利。

 着火が簡単にできるな。

 なお、それだけでも十五、六分かかりましたが。


 さてこれからどうするか?

 最初にすることは生活基盤の確保か……


 情報も仕入れたいところだ。

 だが、街には入れないな。

 一番の問題が職業だ。

 何この職業制って?

 職業は世襲制だから、俺の場合は傭兵になるんだけど、傭兵自体がもう廃れちゃったから、完全な不審人物なんだよね。

 転職は神殿に行ってお金払わないとだめとか、俺そんなこと言ってないよ!!

 しかも、お金は職業で働いて稼いだものじゃないと宗教税でほとんどとられるとか、いじめですか?  

 頼みの魔法チートも勇者の前では無力……


 むう、すでに手詰まり感が……


 ……よし! 情報はモノリスだけに絞ろう。

 ちょっと早いけど捨てよう、社会生活を。

 もう、世捨て人で三秘術会の活動開始だ!

 ほんとは世間をこの目で確認したかったが、無理だ! やめよう!


 そうなれば話は早い。

 俺はこの近くにあるモノリスは山の上だったな。

 人も来なさそうだからちょうどいい。

 


~ここを拠点とする!!~


 モノリスに到着した。

 山頂より少し下のところにモノリスはありました。

 万年雪の頂きはとっても寒いですが防寒の魔法で凌いでいます。


 登山? 魔法で飛びましたよ?

 魔法万歳!

 呪文とか儀式の準備とかは、歩くより楽ですなぁ。


「どうした? 主よ?」

 モノリスにはドラゴンが居た。


「人間社会から逃げ出してきた。ここを拠点にして活動する」

「そうか。何かすることはあるか?」

「飯の調達を頼む。何も食べてないんだ」

「わかった。すぐ用意する」

 ドラゴンはすぐに飛び立って行った。

 三十分くらいで野生の猪っぽいのを狩ってきた。


「まってろ、すぐ作る」

 ドラゴンは爪で肉を器用に引き裂き、平べったい岩を炎であぶってからその上に肉を置いた。

 ジュウウと肉の焼ける音ともに良い匂いが立ち込める。

 仕上げに肉の上で岩塩を爪でカリカリと削る。

 ドラゴンは焼けたころあいを見計らって、こちらを向いて言った。


「出来たぞ。食え」

「いただきまあああす!!」


 焼けた端から食う俺。

 ありがてぇ。ありがてぇ。

 うめぇ。うめぇ。

 荒塩が絶妙だぞ、この焼肉。

 モグモグと食ってるとドラゴンが話しかけてくる。


「ずいぶん痩せているな。監視リソースを割いてでも主を監視すべきだったか?」

「いや、これは想定外だった。予定なら普通に生活が出来てるはずだったんだが……」

「浮浪者同然だな。孤児にでもなったか?」

「近いな、勇者のせいで俺の親の傭兵団が山賊になったんだ」

「圧倒的戦闘能力だからな、一般兵に対してキルレシオ、一万対〇だからな」

「OH……無敵っすなぁ」


 そりゃあ他の兵器が用済みになりますわな。


「それで拠点を作るのだな? どのようなものだ?」

「魔法の修行が出来て、長期間、それこそ十年単位で五十人程度生活が可能な施設」

「寺院のようなものか? 建機は魔法のみか?」

「そうだね。俺しかいない」

「我もいる。この条件で建築可能な施設を試算する」

「ありがとう」


 うむ、持つべきものはドラゴンだね。

 バイト天使と同じくらい信頼できる。

 ドラゴンが考えている間、俺は残りの焼肉をいただきました。



~ドラゴン寺院ありきたり


「完成した」

「あっという間だな」

「石材を組上げるだけだ。そう時間はかからない。問題は内装だ」


 立派な寺院が出来ました。

 実際は一ヶ月くらいかかってるかな。

 魔法で穴掘って基礎を作って、ドラゴンが石材を運んで、俺が魔法で寸法どおりカットして、魔法で設計どおりに組上げて。

 魔法万歳!!(二回目)


 その間、野宿してました。

 まあ、その野宿してる場所も狩った獲物の毛皮で、テントやら寝袋やらをつくりまして、それなりの環境にはなっております。

 寺院のほうに移しておきましょうか。

 全部石で出来た建物は三十メートルくらいの高さがあります。

 中も広々としていてドラゴンでもゆったりの空間です。

 まあ、その隅っこで今は十分なんですがね。


「ふむ、遺跡に入り込んだ浮浪者に見えるな」

「確かに、毛皮が蛮族っぽさを醸し出してるな」


 まあ、俺らしかいないんでどうでも良いですけどね。


「では活動を開始しよう。まずは勇者についてだ」

「うむ、まず勇者召喚に必須なものは、魔術師と魔方陣の二つだ。どちらが失われても勇者は送還される」 

「送還って元の場所には戻せないじゃないか……中央に戻してる記録もない」

「追跡するか?」

「頼む、見つからないようにな」

「了解した」

 ドラゴンは飛んでいった。


 そしてひとり取り残される。

 アレ? 俺のやることなくね?


 いや、魔法の修行だ。

 ドラゴンが帰ってくるまで修行してよう。

 俺は修行広間に行きました。



~魔法の修行~


 修行広場はちょっとした体育館ぐらいの広さがあります。

 俺は中心に座り込んで瞑想をする。

 独特の真言を唱えながら、世界とのつながり、周囲の魔力の流れを感じる。

 そして十分に把握し終えたら、魔力の流れを動かすように念じる。

 これが俺の魔法の基礎だ。


 魔力の流れを区切ったり、入れ替えたり、衝突させたりして呪文を生み出すのだ。

 俺の魔法はいくつかのワードで作られる。

 たとえば『熱』のワードだと熱を生み出したり、奪ったり出来る。

 今、俺の周りには『防―熱』で構成された呪文がまとわりついている。防寒の魔法というやつだ。

 別に今度は『火』『制御』『高速』で呪文を組む。

 これによって炎による攻撃や防御が出来るようになるのだ。

 組んだ呪文を早速使ってみる。


 立ち上がって軽く構える。

 右ストレートを繰り出す!!

 すると右腕が燃え上がり、繰り出した拳から火球がすばやい動きで飛んでいく。

 飛んでいった火球は壁にぶつかる前に、ピタッと止める。

 そして俺の元にゆっくりと戻してから消す。


 ええ、右ストレートいりませんでした。カッコつけたかっただけです。

 よし、魔法はちゃんと発動する。


 俺は座りなおして、瞑想を再開する。

 そして俺の周りに『防―熱』の呪文と『火―制御―高速』の呪文がまとわりついていることを確認した。

 そう、呪文は使い捨てではございません。

 何度でも使えちゃうのです。

 そういうわけで次は『自律』『遠隔』『通信』を呪文に組み込みます。

 すると『火―制御―高速―自律―遠隔―通信』で遠くまで動ける炎の精霊さんが出来上がるのです。

 こうやって呪文を事前に組んでおかないと、戦闘では役に立ちません。

 まあ、組んでおいたら延々と使えるから、弾切れの心配はないけどね。


 ちなみに瞑想だけだと炎の精霊で軽く八時間ほどかかります。

 呪物とか儀式を使ってたら三時間位かな?

 空飛ぶときは『浮遊』『高速』のペアと『防』『熱』のペアで今の大体四分の一くらいですね。

 儀式をして四十五分かな?


 ワードが多くなるとそれだけ時間が増えるのが欠点ですな。

 ワードを組むのも限界があって、大体全部で十二、三個が限界で、それ以上だとワードが壊れていきます。

 いまだと八つ使ってますから、後六個ですな。

 ここら辺をどうやって調整していくかが、勝負どころですな。


 さて、そろそろご飯にしますかね?

 俺は食料庫のほうに歩き始めた。


~ドラゴンの帰還~


 食料庫は地下にあります。

 基礎工事の際に地下を作りましたので大変でしたが、それに見合うだけの設備です。

 まあ、食料庫って言ってもぶちゃけ干し肉が干してあるだけです。

 ぶら下がってる干し肉をいくつかとって齧るだけです。

 お腹も満足したところで食料庫を出ると、ちょうどドラゴンが帰ってきたようです。


「だたいま」

「お帰り」

 短く挨拶して報告を聞きます。


「送還された勇者の末路がわかったぞ」

 末路って、それだけで不吉なんですが?

「世界の狭間に引きずりこまれ、やがて他の世界に転送用パワースポットを通じて排出される。バラバラに分解され魔力としてな」

「最悪すぎる」

「最悪なのはここからだ。いくつかの世界では、排出された魔力が不具合を起こし生命環境に悪影響を及ぼしている」

「……どうにかできんか?」

「呼び出し方を修正しないことには無理だ」

 だめだ、別方向から攻めよう。


「勇者の能力については?」

「解析前に勇者に気づかれた。一部しかわからないが戦闘行為において、必ず魔力破壊を行うようだ」

「必ずか?」

「うむ、対人、対物戦闘、規模の大小を問わず必ず魔力破壊を行う。これは他の勇者の観察記録からも同様だ」

「他の勇者も? 全員?」

「そうだ、全員だ。推論だが召喚の際のスキルセットであろう。勇者自体の能力、技能に関係なく付与されたスキルセットを優先する設定なのかもしれん」

「戦闘のセオリーなのか?」

「確かに魔力破壊は有用だが、周囲への影響を及ぼしすぎる。生態系への影響が計り知れない」

「周囲の影響を考えないところが、余計に腹立つな」

 下級天使ェ……


「対策を考えないとな。魔力破壊を防ぐ方法はないか?」

「魔力破壊のメソッドが不明だ、解明しないと無理だ」


 むうう、これは困った。

「召喚の魔方陣は解析出来ないか?」

「魔方陣には中央世界からのランダム召喚機能しかない。恐らく召喚経路中に何らかの仕掛けがあるようだ」

「……隠匿のためか?」

「いや、コスト削減が主な目的だろう。ログにその旨の発言がある」

「逆探知するか……ドラゴン、逆探知の準備をする」

「了解した」


 さて、鬼が出るか蛇が出るか?

 ここで勇者を無力化しないとどうにもならん。

 せめて対抗策ぐらいは見つけたいな。


 これが三秘術会の初仕事になるのかな?

 まだ一人と一匹しかいないが、いづれ神の手から離れて人の手で動いて欲しいものだ。

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