補足2 第一世界 2
分割をいたしました。
内容に変更はございません。
~第一世界 青空の下で~
少年は喫茶店で頭を抱えている。
「どうしたの? 食べないの? 食べないなら貰っちゃうよ?」
「ずるーい。私も食べる!!」
人族の少女とドワーフ族の少女が言う。
なお、ドワーフ族の女性は成人しても人族の十代前半程度の姿にしかならない。
女性で見分けるべき身体的特徴は手の大きさと肩幅しかない。
目の前の従姉妹も肩は少々ガッシリとしていて、手も人族にしては不自然なほど大きい。
人族の成人男性程度はあるその手で、器用にケーキを切り分けながら口に運んでいる。
人族の少女は日直の元相方で幼馴染。
ドワーフ族は少年の従姉妹で、幼く見えるが同い年だ。
別に親戚にドワーフが居るわけではなく、彼女は人間の親から生まれている。
取り替えっ子というやつだ。
極々稀にそういったことが起きることは知られていて、吉事であるとされる。
なぜなら、神から与えられた三つの魔力を全て受け取ったとされるからだ。
そして、チェンジリングは例外なく魔術の才能が高い。
一系統しか持てない種族固有の魔力を、生まれながらにして二系統持ち、呼吸をするように自在に操れる。
彼女の場合は人族のプラーナとドワーフ族のプリマ・マテリアの二つだ。
本人は魔術の才能を気にもとめず、ラジオスターや雑誌等に掲載されるアイドルをやっているが。
ちなみに、ハーフというものは存在ぜず、必ずどちらかの種族になる。
親子関係は魔力の波動で簡単に確認が出来るため、不倫を疑われることは無い。
「ウェイトレスさーん! この果物ケーキ追加で」
さっきから黙って黙々と食べていたエルフ族の少女が、追加注文をする。出資者に無断で。
「うぉい! それ以上頼むな!! 頼むから!!」
「頼んでいいのか悪いのかわからないよ。お兄ちゃん」
少年の叫びに、ドワーフの少女はツッコミを入れた。
「あきらめさない。今までサボってた罰なんだからね」
「賄賂を受け取ってたくせに何を言う」
恨みがましい視線を少年は幼馴染に送るが、まったく効いていない。
そう、今まで日直をサボっていたことが、エルフの少女にバレてしまったのだ。
対価にケーキを差し出していることまで全部。
あとはご覧の通りである。
従姉妹は何処で嗅ぎつけたのか知らないが、ちゃっかりとケーキをいただいている。
「食事中は静かにしなさい。みっともないわね。あ、フルーツティ追加で」
「ひいいいいいい」
少年の悲壮な叫びは、少女達のガールズトークに消えていた。
そうして少年のおこづかいは、少女達に食い荒らされてしまっていた。
そんなことがあったのが先週の日曜日である。
こづかい日まであと二週間。
こづかいには昼食代も含まれていたので、死活問題である。
「さて、どうしたものか」
屋上でひとりラジオを聞きながら悩んでいる。
「なるほど、あなたの言う通りね」
「そうでしょ? こいつ昼休みはいつもここなの」
エルフの少女と幼馴染が来た。二人とも片手に袋を持っている。
「今日は日直じゃないけど?」
「ちがうわよ。一緒にお弁当でもどうかと思って」
「どうせ、すきっ腹抱えてるんでしょ。ほら、食べなさいよ」
そういって少女たちは袋を差し出す。
包みに入っているのは、蒸したこぶし大の木の実をスライスして、間に具材を挟んだ手作りエルフ料理だ。
もうひとつは、パンをスライスして、間に具材を挟んだ手作り人族料理だ。
どちらも伝統的な弁当である。
「ありがとう。いただくよ」
遠慮せずに少年は包みを受け取った。
そして一緒に食べ始める。
昼休み、屋上の空は今日も青かった。




