トランペットと日本人
――――ガラガラガラ・・・・・ガタン
馬車が止まった。
あぁ、私もとうとう、売られちゃうんだ。
馬車の鉄格子の上から被されていた布が取られた。遮られていた日の光を急に感じたものだから、目が痛い。
数秒して目をあけると鉄格子の外には賑やかな町が目の前に広がっていた。
「この果物は東洋から取り寄せた珍しい果物だよ~!!さあ、買った買った!!」
「生きのいい新鮮な魚だよ!!安いよ安いよ!!」
「さあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!可愛い奴隷たちが沢山いるよ!!今から三時間後に奴隷の販売を始めるよ!!家の雑用をさせてもよし!冒険のパーティに入れてもよし!性奴隷にしてもよし!さあ、ぜひ見に来てくれ!!」
ああ、にぎやかな声に紛れて聞こえてくる物騒な声。
私たちは商品になるんだ。人権も何もない人の私物、物に。
「――――後、三時間、か」
もう一度賑やかな町を見ようと顔を上げた時、この世界には絶対に存在しないものが視界に入った。
「え、トランペット?」
小さく呟いたつもりだったのに、それの持主はこちらを振り返った。
「日・・・本人?」
振り向いた瞬間に見えた男の顔のつくりは日本人独特のものだった。
彫のあまりない顔、黄色い肌、黒髪黒眼。あと、童顔。
いや、あれは絶対日本人だった。だって、今まで見てきた人の顔は皆、ヨーロッパ風の顔の人ばかりだったもん。
気がついたら鉄格子を挟んですぐ目の前でその男が立っていた。
「なあ、あんた何者?」
ここまで読んで下さりありがとうございました。