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2.図書室でのハプニング

 この日の中学は委員会活動のある日。

 コウジは図書委員だ。

 放課後図書室に残って、貸し出しの仕事や本の整理整頓をする。

 活動は2人1組。

 コウジが一緒に組む相手は、2年生の羽佐間キイロだった。

 ボーイッシュな女子だ。

 放課後の図書室に本を借りに来る生徒などそうそう居ない。

「退屈だね、五十嵐君」

「そうですね……。あの、羽佐間先輩」

「なに?」

「本棚見ると、本の並び順が結構デタラメというか、ほとんど、滅茶苦茶というか……、これ、いいんですか、このままで」

「良くはないんじゃないかな」

「やっぱ、整理した方がいいですかね」

「真面目だね、五十嵐君は」

「そういうわけじゃないですけど……、どうせやることないですし」

「じゃあ、上の方からいこうか?」

 言うが早いが、羽佐間キイロはひょいと書棚に足をかけると、一番上の棚の本に手を伸ばした。

「先輩、行儀悪いですよ」

「いいでしょ、誰も見てないし」

「俺が見てます」

「かたいこと言わない」

 図書室の書棚は、天井まで届くような大きなサイズだ。

 いちばん上の書棚には脚立を使わなければ手が届かない。

 キイロは、脚立を使わず、下の書棚に足をかけて、ロッククライミングさながら書棚に張り付いたのだ。

 羽佐間キイロは、本来その棚にあるべきではない本を何冊か抜き出すと、五十嵐コウジにポイポイ渡してきた。

「これと、これと……、あと、これかな?」

 キイロはどんどん本を抜き出し、コウジに渡す。

「先輩、本棚が倒れてきたら危ないですよ」

 両手いっぱいに本をかかえながらコウジがキイロに言う。

「大丈夫よ。こういうのは、ちゃんと壁に留め金で固定してあるんだから」

「まあ、そうかもしれないですけど……」

 この図書室内の2人の様子を、廊下から覗く影があった。

 鋭い目つき。

 今朝の登校時、五十嵐コウジと光明寺ミドリを見ていたのと同じ目だった。

「ええっと……、大体抜き終わったかな?」

 書棚にロッククライミング状態の羽佐間キイロは、一番上に並んでいる本類を見た。

 ギシ……。

 その時、何かがきしむような音がした。

「羽佐間先輩、今、何か聞こえませんでしたか?」

「え、そうかな? 別に気付かなかったけど……」

 五十嵐コウジは耳をすました。

 ギギ……。

 確かに聞こえる。

 コウジは音のした方を見た。

 書棚の裏からだ。

 次の瞬間、コウジはたいへんなことに気付いた。

 書棚が動いている。

 正確には、倒れんと傾き始めていたのだ。

 このままでは、書棚に張り付いたままの羽佐間キイロは、書棚と床の間に挟まれて大怪我だ。

「先輩危ない! 本棚が倒れてくる!!」

 コウジは叫んだ。

「え……っ!?」

 キイロも事態に気付いた。

 しかし、もう遅かった。

 書棚はもう45度近くまで倒れてきている!

「先輩!」

 大きな音を立てて、書棚は引っくり返った。

 もうもうとホコリが舞い上がる。

「先輩、先輩」

 叫びながら、五十嵐コウジは、倒れてしまった書棚を持ち上げようとした。

 しかし、びくともしない。

 人を呼んでこなければ――、コウジは入口の方を向いた。

「!」

 五十嵐コウジは驚愕した。

 羽佐間キイロが入口近くの床の上に、へたりこんでいたからだ。

「先輩……、どうして?」

 何が何だから分からない。

 いったい、いつの間に、倒れた書棚の下敷きになったと思った羽佐間キイロは、図書室の出入口まで移動したのだろう?

「あ、あたしも……、何がなんだか」

 羽佐間キイロは、へたり込んだまま、ガクガク震えている。

「大丈夫ですか?」

 五十嵐コウジは、羽佐間キイロに手を差し伸べると、立ち上がらせようとした。

「ごめん。膝が震えちゃって立てないよ」

「ケガは無いですか?」

 五十嵐コウジに言われ、羽佐間キイロは、体のあちこちを触ってみた。

「どこも痛くないから大丈夫みたい」

「取り合えず良かったですね。俺、先生、呼んできますよ。1人になるけどいいですか?」

「うん」

 コウジは、廊下に出た。

 さっきまで、五十嵐コウジと羽佐間キイロの様子をうかがっていた鋭い目つきの影は消えていた。


 駆けつけた教員たちに、五十嵐コウジと羽佐間キイロは事情を話した。

 書棚に登った事で、コウジもキイロも指導を受けたが、これは学校施設の不備の問題だ。

 下手をしたら大事故になっていたわけで、教員たちもあまり厳しいことは言えなかった。

 この日の図書委員会活動は中止という事で、コウジもキイロも下校するように指示を受けた。

 教員たちの中に、図書室外の廊下から五十嵐コウジと羽佐間キイロの様子をうかがっていた鋭い目つきの者がいたが、コウジもキイロも何も気づくことは無かった。

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