表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

クジラ

作者: 掛川 魚
掲載日:2013/06/25

私は半生を思い返す。

私は待つことが嫌いだ。それはどれもとっても例外はない。

ラーメン店の行列も嫌い。テーマパークのアトラクションも嫌い。そしてなにより、人を待つことが一番嫌いだった。

私が学生の頃はこの性格のため、様々な人に迷惑をかけていただろう。はじめて付き合った一年間私が片思いをしていた彼女は初デートの際、彼女が寝坊して10分遅刻したためすぐに別れを告げた。百年の恋も冷める思いであった。

そんな私も社会人になった。大人の社会は待ち時間が多い。上司のために待ち、同僚のために待ち、部下のために待った。そんな生活が続き、私は壊れていった。

「何にストレスを感じますか?」そういう医者に「私はあなたの診察待ちで感じました」と言い残し帰ったこともあった。

そんな生活の中にも心の安らぎがあった。

それは飼っている金魚であった。名はクジラという。

彼は普段から何もしていない。することとは私のあげる朝と夜のエサを待ち続けていること。そう、彼は待ち続けているのである。

私が目の前にくると口をパクパクとさせて、可愛いものである。

私はこうして自分の待ちに対する気持ちを金魚に押し付けている。

私は最悪な人間だ。最悪の人間だ。



だから私は不幸を背負ったのだ。

バイク事故。身体が動かなくなった私はいま、こうして今までのことを思い出すことしかできない。

半身不随で臓器もボロボロ。いつ死ぬかも分からないぐらいらしい。

待たされる人間がこうして死を待っているのだ。皮肉な話である。

そして今日の夜、私の命をかけた手術がおこなわれる。私は嫌いな待ちを望んだ。死と生のギャンブルから逃げたかったからだ。



私の手術は成功したのだろうか。分からない。頭がフワフワする。

そういえば、忘れていたことがある。クジラにエサをやっていないや。

やっぱり待つことは嫌いだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。 拝読させていただきました。 ずっと待ってるクジラちゃんと待つのは嫌いだけれどクジラちゃんを待たせる「私」という構成が何とも鮮やかで丁寧に描かれていると思いました。 加えて文…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ