第011話 少年と一日の終わり
ギルドマスターの部屋を出て1階のロビーフロアに戻る。
掲示板が気になっていたので、依頼は何があるのか見てみようとそこへ向かう。
薬草採取に街の掃除、ゴブリンの間引き……ゴブリンいるのか!アイアン級という事は一つ上のランクだな。
後は……、時間帯の為か、いつでも張り出されている常設依頼か、ずっと張ってありそうな不人気っぽいのしか残ってないようだ。
今はあまり見るものが無かった掲示板を離れようとした時、獣人の男の子が掲示板の横にぽつんと立っていた。
正直みすぼらしい格好をした、痩せた少年だ、10歳ぐらいだろうか、たぶんこっちを見ている。
さっきまでいなかった気がするあの場所で、何もせずにこちらを見ながら立っている理由が気になり、ログさんに尋ねてみた。
「ログさん、ちょっといいですか?」
「なんじゃ」
「あの獣人の男の子はなんであそこに立っているのですか?」
「ん?ああ、ジンの事か」
「ジン?」
「あやつの名じゃ。あれはあの場所で雑用が無いか、声をかけられるのを待っておるんじゃ」
「雑用ですか」
「そうじゃ、昼間は依頼があればギルドでそれを受け、余った時間で少しでも稼ぎたい奴は、ああやって立っておるんじゃ」
「ああ、なるほど」
「ウッド級は依頼が少なく取り合いな上に報酬も微々たるものじゃ。だからギルドも黙認しておる。それ故にあやつの方から声を掛けるのは禁止じゃ、だから何も言わずにああしておる」
「雑用ってどんな依頼があるのですか?」
「大体は荷物持ちや、酒場に直行するやつの荷物を宿に届けるとか、翌日必要じゃがここから遠い場所で売ってる小物の買い出し、まあ自分で行くには面倒な時に依頼するが、基本なんでもじゃ。ジンの場合は狼人族だから特に足を使う依頼が多いはずじゃ」
「それっていくらぐらい貰えるのですか?」
「大体銅貨1枚前後じゃろう、この時間帯は酒場の近くにいるやつが多いはずじゃが、お主に目を付けたのかもな」
「俺にですか?」
「この時間に掲示板を見るやつは殆どおらん。それにお主の顔は初めてじゃ。新しく来たやつなら何か依頼があるかもしれんじゃろ」
「つまりはカモに見えたのか」
「そこまでは言わんが、街や宿の案内なんかもしておるからの、そういう依頼に期待したんじゃろ」
「なるほど、でもログさんに聞かなければ、話しかけていいのかもわかりませんでしたよ」
「まあ、そこは賭けでもあるからの」
俺はログさんの説明に納得し、ジンという少年に声をかけに行こうとした。
「なんじゃ、何か依頼するのか?」
「ええ、宿の案内でも頼んでみようかと」
「この後、依頼達成の打ち上げで飲むんじゃが、お主は来んのか?」
「俺は遠慮しておきますよ、今日はちょっと色々あって疲れたので、早めに休みます」
「そうか、そうじゃの。じゃあまた今度飲むぞ」
「はい、その時はぜひ」
「それじゃあ今日はここでお別れじゃ、また明日な」
「明日?」
「おいおい、一応ワシらも明日様子を見に来るぞ」
「ああ、それは助かります、よろしくお願いします」
他の『疾風の盾』のメンバー達にも挨拶をした後、ここで今日の所は解散した。
俺はジンくんがまだいる事を確認し、そこへ向かって行った。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
「えっと、雑用とかを受けてくれるって聞いたんだけど」
「大体の事はするよ、あと足と体力には自信があるから、走るのも任せてくれ」
「そうか、それじゃあ宿まで案内をして欲しい。できるだけ綺麗でなるべく安い所、どこか知ってるかい?」
「ああ、大丈夫だよ、今から行くか?」
「頼むよ」
俺は頷き答えると、ジンくんは嬉しそうに外に向かった。
彼の後ろについて街を歩く。
この周辺には冒険者向けのお店や宿が多いようだ。
案内された宿は建物自体は古そうだが、外観からでも掃除はしっかりしている印象を受ける。
ジンくんの先導で中に入ると、かなり清潔感のある宿だ。
ジンくんが声をかけると、女性が受付にやってきた。
部屋の空き状況を確認すると、幸い1人部屋はあと2つ空きがあるとの事。
料金は一泊小銀貨3枚、食事代は別だが、一階の食堂兼酒場で宿泊者用料金で少し安く食べられるという。
延長は朝に言えば可能という事で、とりあえず2泊分お願いし、支払いをする。
銀貨1枚を渡すと小銀貨4枚のお釣りと部屋の鍵を渡された。
「部屋は2階にあるからね」
「はい、お世話になります」
女性はそう言って別の仕事に戻っていった。
俺は待っているジンくんに声をかける。
「ありがとう、おかげでいい宿で休めそうだ」
「兄ちゃん、部屋が取れてよかったな」
「ああ、それじゃあこれが案内料だ」
俺はそう言って小銀貨1枚を渡した。
「え、これって」
ジンくんは驚きで一瞬体を硬直させた。
「助かったからね、気にせず取っておいて」
俺は強引に押し付ける。
ジンくんは恐縮しながらも、尻尾は正直なのか左右に振れている。
「あ、ありがとう」
「また今度、何か頼む時はよろしくね」
「うん、それじゃあな」
嬉しそうに去っていくジンくんと別れ、俺は部屋に向かう。
2階にある部屋の扉を開け、中に入る。
中は狭く、ベッドと簡単な収納棚があるぐらいだ。
それでも部屋は綺麗なので十分満足できる。
俺は鍵をかけ、硬めのベッドに座り込む。
そして今日の出来事について考えを巡らせた。
交通事故にあい、くじ引きで俺にとっての当たりを引き、キックボードに初めて乗って、マルクさん達との出会い、ギフトが現地の人には異常と知り、レベルも上がって、領都に到着、そしてギルドマスターと早々に対面。
……まだ、死んでから半日ぐらいしか経ってないんだよな。
そして転生時に会った少年の言った通り、最初の出会いにかなり助けられている。
そんな事を考えていた時、外から鐘の音が聞こえた。
この街では午前6時に1回、8時に2回、10時に3回、正午に1回、午後2時に2回、4時に3回、6時に1回、鐘を鳴らすとの事。
時間は現在時刻が分かるスキルを持っている人が確認するらしい。
今は1回の鐘が鳴った、もう午後6時のようだ。
俺はベッドから起き上がり、食堂へ向かう。
食堂には結構な人がいたが、なんとか空いてる席を見つけて着席。
給仕係の人に声をかけ、鍵を見せると、パンと野菜スープのセットが銅貨5枚で食べられるらしい。
それを頼み、小銀貨を渡す。
暫くするとお釣りと共に料理が提供された。
パンは黒パンのようだが、俺が切ったのとは違い、綺麗に薄く切られていた。
野菜スープもかなり大きめに切った野菜がたっぷりと入っていて、小さいが肉もあった。
優しく香る温かいスープを前に、俺はごくりと喉を鳴らしてスプーンを手に取った。
「いただきます」
そう言ってからスプーンをスープに沈め、そっと口に運んだ。
正直、少し味が薄く感じられたが、このスープの温かさは俺を優しく包み込んでくれる。
薄く切られた黒パンも、スープに浸すとすぐに柔らかくなり、俺の腹を満たしていった。
大きく切られた野菜たちも、しっかりと食べている、という実感を湧かせる。
俺はそのローテーションを繰り返し、あっという間にすべて平らげてしまった。
しかし、お腹も心も十分に満ち足りた。
「ごちそうさまでした」
そう呟き、俺は部屋に戻った。
部屋に戻り、しっかりと施錠したのを確認した俺は〈有料トイレ〉へ行き〈研磨洗浄〉で体と共に歯を綺麗にし、洗面台に付属しているマウスウォッシュで口内をスッキリとさせた。
水を1本買って部屋に戻ると、外はだいぶ暗くなっていた。
普段ならまだまだ寝る時間ではないが、色々な疲れもあってか、ベッドに横になった俺はすぐに眠りについていた。
1分ぐらいかけて鐘を鳴らす
6時と正午:カーン……カーン……
8時と2時:カーンカーン……カーンカーン……
10時と4時:カーンカーンカーン……カーンカーンカーン……
緊急事態:カンカンカンカン、カンカンカンカン……
緊急事態解除:カーン、カーン、カーン、カーン……
時間確認できるスキル
パッシブスキル〈時刻表示〉など:常にプレートに時間が表示される
アクティブスキル〈時刻確認〉など:知りたい時間が分かる。ストップウォッチやタイマーなども
ギフト『時空魔法』の能力などの時間操作系の一部
スキルとギフト
人のほぼ100%は5歳の時にパッシブスキル(常時発動型)を一つ得る
人の75%は10歳の時にアクティブスキル(任意発動型)を一つ得る
人の20%は15歳の成人の時にギフトを一つ得る。得られない場合、種族平人族は生活魔法を得る。
1日目終了
現在のMPは198
残金は、小金貨1、小銀貨2、銅貨6、小銅貨1
MPとは
MagicstonePoint, MiasmaPoint, MonsterPurification,
MagictoolPoint, MileagePoint, MovingPoint, MoneyPoint, etc.
主に魔法系ギフトを持つ人が消費する魔力とは別のもの




