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魔王と勇者と暗殺者  作者: 泰然自若
二部 四章
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第四十八話 大剣と槍

短いです。

「おい!」


 大男――ヴィルフの掛け声が轟き、化け物の一撃を自慢の大剣で受け止めた。


「ほいよっと!」


 槍使いの男――ケルマンの鋭い突きがヴィルフの脇から伸び、化け物に吸い込まれる。


「かぁ! かてぇ!」


 そう言いながらも、しっかりと仕留めている辺りは流石と言うべきか。崩れ落ちた化け物の躯が数体転がっていた。


「どうやら、この部屋らしいな」


 扉を大剣で叩き斬ると二人は中へと入っていく。


「当たりだな。にしてもでけぇな」


 ケルマンは視線を上に向ける。目の前には見上げなければ全貌を把握できないほどに巨大な黒塗りの門が鎮座していた。ヴィルフはおもむろにその門に近寄ると、地面や門自体に、尋常ではないほど細かい術式が刻み込まれている事に気がついた。


「相当なモノを練りこんでいるようだな」


 ケルマンもそれを確認すると、ため息をついた。さて、どうしたものかと言ったところだろう。安易に近づきすぎて、変に作動されても困るということである。


「自慢の魔を絶つ剣さまはどうなのよ」


「コイツに聞いてくれ。俺はこんなモン斬った事が無い」


「つっかえねぇ!」


「……やるだけ、やってみるさ!」


 その声と共に、背中から抜刀する大きな刃はヴィルフの振りぬこうとする腕の力と、腰を落とす動作が加わり、風を切り裂く音を鳴らしながら聳え立つ門。の手前にある地面へと目掛け振り下ろされた。剣が地面に描かれた術式に触れた瞬間、昼間よりも明るい光が辺りを包み込む。


「やったか?」


 ケルマンは予想以上の反応に、目を手で隠しながら呟いた。


「無理だな」


 ヴィルフの言葉通り、地面には傷一つ付いては居なかった。


「さて、無難に爆薬でも仕掛けますか」


「駄目で元々か」


 その時、静寂を保っていた門が稼動し始める。二人は顔を見合わせる。


「敵のお出ましか」


「そうかもな」


 その時、ヴィルフはある事が気が付く。


「敵が出てくるときに、爆薬投げて着火できれば壊せる可能性があるかもな」


「適当過ぎねぇか? まぁ、可能性といわれちゃやるしかないな」


 話し合いが終わると即座に、爆薬を取り出すと門から敵が出てくるのを待った。すると、門が開かれて、一体の人型が姿を見せた。


「今だ!」


「応!」


 二人は一斉に、爆薬を投げた。化け物に当てないようにするために、上を狙う形を取った。爆薬は綺麗に門の中へ吸い込まれていったのだが、残念ながら爆発する事は無かった。二人は暫く無言であったのだが、現れた化け物と戦いたくないという直感を持って対峙してしまった。


「どうするよ」


「強い」


「判ってるわ。んなこと」


 そんなやりとりをしているうちに化け物はヴィルフに襲い掛かった。ヴィルフは自慢の大剣を振り回す。


「おぉ!」


 驚きの声を挙げてしまうが、それは目の前で右から振り下ろした魔を絶つと言われている大剣を右腕一本。片腕で防がれた事に対してであった。それでも、すかさず、ケルマンの鋭い突きが化け物に迫ると、ヴィルフはそのまま大剣に力を込めて、化け物を逃がさないようにする。


「やれ!」


「おうよ!」


 息の合った掛け声とともに、ケルマンの矛先が化け物の左胸に突き刺さった。だが、これで終わりにはしない。ケルマンはそのまま力一杯差し込んだ後に、天を目指すように矛を移動させた。骨を切り裂く感覚が直に腕を伝っていく。手ごたえはありすぎだという印象だろう。


「おい!」


「わかっている!」


 それでも、二人は攻撃を辞める事は無い。相手は未知の化け物であることに変わりは無いからだ。

 ヴィルフは左腕を動かし、腰から刀を取り出すとそのまま、化け物の右わき腹に刺し込む。それでも、化け物は微動だにしなかった。その光景に二人は背筋を凍らせる。だが、それに気圧されるわけではなく、二人は連携攻撃はやまなかった。終いには四肢を切り落として、ようやく間合いを開けたのであった。


 息を乱しながらも化け物から視線を外さない二人。


「死んだか?」


「解らん」


 目の前には四肢を失い、倒れている化け物。二人はこれで流石に終わりだろうと思う。そして、門をどうしようかと改めて話し合う必要があると顔見合わせた。その時であった。突如、化け物が動き始めた。


「!?」


「おいおい」


 四肢が突如、再生し始めたのであった。


「これは、結構きついな!」


「言うな。泣けてくるぜ」


 そのやり取りをしていると足を再生させ終えた化け物が素早く二人に迫る。


「このっ!」


 ケルマンの突きが炸裂するも胸を狙った一撃は綺麗に身体を捻られて避けられてしまう。続いて、ヴィルフの大剣の一閃も、尋常ではない反応を見せて避けた。突如、止まって身体を反ったのである。これによって避けきるとヴィルフの大剣に乗って、目を合わせた。再生していた両手でヴィルフの顔を掴んだ。


「おおぉ!」


 ヴィルフは大声を挙げて、大剣を持ち上げた瞬間に手を離し、瞬時に右手は刀を持ち、左手は短剣を持っていた。刀で足を切りつけ、短剣を化け物の右わき腹に突き刺す。その時、ケルマンの突きが化け物の首を貫いた。


「大丈夫か!」


「あ、あぁ」


 化け物は事切れたように、音をたてて、地面に倒れこんだ。ヴィルフの荒い息が静寂を妨げていた。


「顔の傷は?」


「痛みは殆ど無い。引っ掛かれた程度だろう」


 ため息をついて


「今の助かった」


 と、素直にケルマンに感謝した。


「まぁ、仕方ないな。いきなり素早くなったからな」


「とにかく、どうするかな」


「そうだよな」


 二人は、再び門を見据えた。爆薬を使っても破壊する事が出来なければ、二人にはお手上げであった。今までの遺跡の物とは明らかに違うと二人は思っていたが、どうすることもできなかった。


「ん?」


「来たか?」


 途方にくれている時、二人が入ってきた通路から軽妙な足音が一つ近づいてきていた。


「おーい!」


 案の定、カズヤであった。その言葉に、思わず安堵のため息を吐き出した二人は、カズヤの問いかけに答えて、門の破壊をお願いしたのであった。





投稿する感覚を開けると妙に長く書いてしまう。無意識のうちに読者の事を思いすぎて、逆に自分を追い詰めてしまっているのかもしれない。


と感じつつも、今回は短いです。

本当は6話くらい書いたのですが、どれも微妙すぎて結局は繋ぎ的な話にしました。

といっても、この二人の掛け合いを書きたいと思っていたので、私としてはいいのですがね。


第3部では割りと活躍させたいと思える二人です。


今まで、キャラ同士の掛け合いが少なかったと思っているので、もう少し会話を増やしていきたいと思っております。


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