第一話 殺す日常
プロットないです。
タイトル詐欺になるかも。出てくる予定はある!
誤字脱字があるかもしれません。
11/1 本文を微妙に加筆修正
人々の視線がその場のある一点に立つ存在に集う。
群れる者どもを誘う言の葉。
空間を侵食していくのは論の融和。
共有、共存、多数。
甘味の虜になる盲者の乱雑な集いは熱を帯びて場を焦がす。
ただ、その熱の中で冷淡な瞳が二つ。壇上に挙がり、恍惚と熱意に溢れる男を見据えていた。
雑多な喧騒が蔓延るその空間の中で誰にも気づかれる事のない暗がりからの視線。感情の灯も揺らぎがなかった。壇上に挙がり熱弁している男を見つめている。
視線を飛ばす男に言える事は一つ。その瞳には大衆の熱狂など関係ないものとして、男自体が漫然と漂う空気のような存在でしかなかった。そうである空気を作り出しながら、周りに溶けるかのような色調の同じ布で全身を包み込む。頭から被るフードを深く顔の半分ほどが覆い隠されていた。
その姿を意識して見るならば、浮浪者。怠惰な者。そう見えるのかもしれない。
だが、残念な事にその男を視界に捉えた者が居ようとも、そういった考えを巡らせることはないだろう。目の前に起こっている変革に、群集心理の真っ只中に居るのだから、皆な皆。この空間に酔い痴れていた。
フードの男はゆったりと、それでいて確実に壇上の男に近づいていく。人ごみを掻き分ける事はしていない。喧騒という渦。人の流れに身を任せ、川のせせらぎに押される一枚の木の葉のように。
壇上の男は気付かない。その姿は眩しく、人々が酔うにはお誂え向きな出で立ちであった。彼の眼には自分の言葉が民衆の心に届き、今まさに同志となる者たちを作りなしているという思いに浸っていることだろう。
たかだか、一人の挙動。
如何に高段より見下ろしていようとも、まして異質でもない気配に気づくはずもなかった。
そんな時であった。
フードの男が居る場所より右手数m先で女性の悲鳴が挙がった。その場の熱気を切り裂く声に皆の視線が移り始める。視線が泳ぎ、喧騒が物事に興味を持ち始め、情報を得ようと言葉が氾濫し、大衆が蠢く。
場の混乱に、フードの男は静かに歩を速め、走るに至った。
あっと言う間に人の波を突破すると、真っ直ぐに突き進む。壇上の男は人ごみを抜けてきた男にようやく気付いた。咄嗟に身構えようと身体を動かす壇上の男に、フードの男は左腕を伸ばし、握っていた左手を開く。
曇り空の暗がりに似ていた。無慈悲な刃を先に尖らせる矢が吐き出されては男に伸びていく。避けようと男は思った。それでも身体が動く事はなかった。到達した衝撃に加えて、何かが徐々に蝕んでいく。
男は胸に決して浅くはない傷を負った。身体に異物が入って来た事の激痛が考えるという行為を阻害する。必至に考えようとしても状況を把握できない男の頭は「どうして」を連呼しているばかりだ。男の身体は言う事を聞かず、ただただ態勢を崩す。
その哀れな姿を晒す壇上の男に、フードの男はとても滑らかな動きでもって右手に隠し持っていたナイフを喉に突き刺した。
瞳孔の開いていく二つの眼が冷淡で無表情な顔を見つめていたのは一瞬だった。
フードの男はすぐに壇上を飛び降りると、先ほど悲鳴の挙がった方角に走り去る。
その場を目撃した視線はただ、その男が群衆に紛れて見えなくなるのを茫然と眺めているだけであった。
第一部の完結を目指す。その後は判りません。まずは目先の事で。
ちょくちょく文章を修正しております。悪しからずご了承ください。