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第二話 まじで?

 「で、何でこんなことしてんの?」

 ヴァードが首をかしげた。

 ここは古城。王国が滅んだあともこの城だけは残った。が、戦争のあとが残り傷や土、血などで所々汚れていた。それはお世辞にも美しいと言えるものではなく、いまや博物館扱いとなっている。

 ヴァードたちが居る場所は天井、この城を支えている校倉造のような構造の柱に座っていた。下には点々と軍服を着たものが立っているのが見える。怪盗を捕まえるための準備万端といったところか。それはこちらも同じである。現れようものならすぐさま飛び降りる覚悟。まあ、何かあっても天下の鳥人間様が何かしてくれるだろう。

 「うじゃうじゃいるわね・・・」

 「それが問題なんだよなあ」

 ふと2人が振り向くとそこには一人の少女が居た。少女の瞳は赤く、炎のように燃えているかのようだった。髪は長く、深海の色。彼女はその髪をなびかせてこちらを見つめている。指を指していった。

 「「「あんただれ?」」」

三人の声がいっせいに重なった。その声は古城の隅々まで響き渡った。いっせいに軍人が上を向いた。気づかれた―軍人は銃の狙いをルイズたちに向け―

 ヴァードがルイズの肩を押した。その勢いは強く、天井からまっさかさまに落ちた。何をするんだ。声も出ずに着地の構えをした。ふと後ろでは彼女も飛び降りている。無謀。その一言に尽きる。のは普通の人間ならばである。ヴァードはいつの間にか鷲になっていた。その太い右腕でルイズの襟をつかみ空を飛んだ。後ろに急旋回をすると赤い髪の少女も左手でつかみ、スピードを落としながら地面に足をつけた。

 「ありがとう」

少女は少し照れくさそうに礼をした。いいってことよとルイズが言う。

 ふと周りを見ると銃が、たくさんの銃口がこちらに向けられていた。まったくどうにも逃げるすべは無い。いきなり飛んだとて、打ち落とされるのが落ちだ。(別にかけている訳ではない。)じりじりと銃が近づいてくる。軍人は容赦と言う言葉を知らないようだ。今度辞書で引いてみると良い。

 自分の力なら逃げられる。頭を名案がよぎった。まさに明暗を分ける名案である。(別にかけている訳ではない)

 1、地面を破壊する。

 2、地面は粉になる。

 3、目くらましとなる。

 4、たこ殴り。

    レッツトライ!

 ルイズは地面に右手を置き、力を注ぎ込んだ。あたかも雷が落ちたような耳を劈く音と地響きががとどろいた。ルイズの周りを中心に煙が爆発したかのように巻き上がる。木でこの建物ができているらしく、木の破片も飛ぶ。見事にこれは目くらましとなった。目だけではなく鼻、口にも入り咳をする軍人が絶えない。

 ヴァードもこの作戦を瞬時に理解してくれた。少女も同じ。その太い腕でヴァードは2,3人一気になぎ倒した。ルイズも軍人の腹に蹴りを入れる。間髪いれずに隣の男の顔にも回し蹴りを食らわした。

 煙の中を1人勢いよく抜けたものがいた。その男の足は速く、ルイズは一瞬たじろぐ。顔面にパンチを食らわせられそうになり、腕を真剣白刃取りのように受け止める。こちらも蹴りをみぞおちに繰り出す。相手も蹴りで威力を相殺した。ルイズは後ろに2歩分間合いを開ける。こいつは明らかにほかのやつらと何か違う。誰でも思えるほどだった。

 「指名手配犯ルイズ・アルバート、ヴァード・ルウ。怪盗ソルマー・ジャン。お前らを捕まえる!」

 「怪盗?」

 他にいなかった。信じられなかった。この少女が怪盗。軍が嘘をつくわけがない。嘘をつくならもっとまともな嘘をついてほしかった。もっともルイズもヴァードも嘘どころでは説明が付かない体をしているのだが。

 頭をかすった。男の腕を右目で判断。人間技とは思えないほどの動き、力。こいつに対応できるのは自分だけしかなかろうか。こちらも相手の攻撃をかわし一気に攻めに転じる。そうだ、少女が怪盗だろうと関係は無い。今をこの男を何とかするのが先決である。煙も薄くなってきた。いよいよ腹を決めることになりそうである。

 そのとき、鼻っ柱が何かにぶつかった。鼻を瞬時に抑え後ろに下がる。そこには壁があった。信じられない光景だった。何も無かった地面に壁ができ、壁の周りの地面はその分陥没している。理屈で言えば地面を掘って浮かせたようなものだが現実にありえるわけが無かった。

 「邪魔をするなソルマー!」

男が怒鳴る。青い軍服は土ぼこりで汚れていた。

 「あたしの命の恩人を助けるのに訳があるの?そのためだったら魔法だって使うわ」

 魔法?怪盗?覚えることがありすぎる。しかし瞬時に理解した。

 怪盗ソルマー・ジャンは魔法使いの少女である。と。


 「まじで?」

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