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暴力表現があります
昼になり、それぞれが持ち寄った食べ物で昼食をすませた。
午後からは男性たちが体を使った遊びをしていた。
女性達はボードゲームや刺繍などしながら男性たちを応援したりして過ごしていた。
クロエは刺繍をしていたのだが、外での刺繍は慣れておらず、少し歩いて来ようと他の令嬢に声をかけた。
何人かが賛同してくれたため、彼女たちの支度ができるまで少しだけ先に歩いていくことにした。
大きな木の陰に差し掛かると、ライラが飛び出してきた。
「クロエ、話があるわ」
「何でしょうか?」
「あんた、ギルにふさわしくないのよ。
ギルは本当はあんたと婚約なんてしたくなかったのに、無理やり家の力で婚約したんでしょ!
ギルを早く解放してあげて!!」
「何をおっしゃっているのかわかりませんわ」
「なんですって!!」
「ライラさん、貴女はギルバート様の何なのでしょう」
「仲の良い幼馴染よ!!」
「子供の頃のお話でしょう?」
「今もよ!」
「そうですか、でも婚約者はわたくしですわ。
お話がそういう事でしたら、公爵家へ直接文句をおっしゃればよろしいのでは?
仲良しなのでしょう?」
クロエがそう言うと、
「うるさいうるさいうるさい!!!ギルは私の物なのよ!急に出てきて奪っていくなんて卑怯よ!」
そう叫ぶとクロエの髪を掴み、引きずっていく。
「やめて!」
クロエが必死でそう抵抗したのだが、
「うるさい!」
そう言ってライラはクロエの腹を蹴った。
「うっ」
と言ってクロエは体の力が抜けてしまった。
「ふん、これくらいで弱っちいわね。ギルは私の物よ。ずっとずっとこれからも」
力の抜けたクロエはそのまま湖に突き飛ばされた。
そこは木が生い茂り、周囲からはわかりにくくなっている。
「あんたは先に帰ったって言っとくわ。
夜になれば獣が出るか、ごろつきが出るか、ふふふ」
ライラはそう言って笑うとクロエの頬を殴りつけてそこを立ち去って行った。
助けて、
誰か
ギルバート様・・・
クロエの衣服が水を吸い、暴力を受けたショックから、クロエの意識は遠くなっていった。