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皆の協力もあり、クロエは学園生活でライラに絡まれることがなくなった。

あの湖の事件以来、ライラにまた何かされるかと怯えていたクロエだったが、物理的に距離が離れていると、怯えることも少なくなった。


ギルバートとも卒業後は1年ほど公爵夫人教育を受け、その後結婚することになっている。

1年後とはいえ結婚式で着るドレスのデザインを決めなければならず、二人は忙しくも充実した日々を送っていた。

他の友人たちもそれぞれ卒業後の結婚式について話をすることもあり、婚約者のいない者たちは羨ましそうにそれを聞いているのだった。


ライラがクロエのドレスについて聞いたのは偶然だった。

やりたくもない卒業課題の為に嫌々図書館にいた時の事だ。

幼馴染の数名がライラが見えない位置に座って話をしているのが見えた。

「・・で・・・ん・だって?」

「そう・・が・・どうしてもって・・・・」

あまりうまく聞き取れなかったこともあり、ライラは近寄って行った。

いたずら心が出て、こっそりと足音をさせないように近寄ったため、ライラに気がつく者はいなかった。

「そうか、お前もあそこに頼むのか」

「ああ、ギルバートの紹介で引き受けてもらえそうなんだ」

「だけどかなり高いんじゃないのか?」

「ああ、俺もそのあたり悩んだんだけど、クロエ嬢がオーナーに口を利いてくれてな」

「クロエ嬢が?」

「オーナーのデザインでは料金が高くなるからって、勉強中の弟子の作品ではどうかって。

婚約者もその弟子のデザインを気に入ってくれたからよかったよ」

「羨ましいな、5年以上先まで予約待ちの『マダム・ラ・ファムリータ』だろう?」

「そうなんだよ、さすが侯爵家令嬢だな」

「クロエ嬢もデザインを決め始めたらしいしな、婚約者も楽しみにしてるよ」

「他にも商会を紹介してくれたり、本当に感謝してるよ」


ギルバートとクロエは自分たちの結婚式で使う商会等についても頼まれれば快く紹介状を書いてくれたりした。

紹介状があれば、商会も多少はおまけをしてくれたりしたため、皆は非常に喜んでいた。


(『マダム・ラ・ファムリータ』ですって?

クロエの奴ギルバートに結婚式のドレスをゆすったのね!!

そのドレスは本当は私の為に作られる物なのに!!!)

準男爵の娘であるライラはドレスなどは既製品がほとんどだ。

それもめったに買うことはできない。


『マダム・ラ・ファムリータ』それは社交界でも人気のドレスメーカーだ。

予約待ちは数年以上になり、そのドレスを着ていれば社交界でも注目の的だ。

当然値段も驚くほど高い。

そんなところで結婚式のドレスを作るという。

ライラにとってギルバートを縛り付けている家柄だけの女がゆすったとしか思えなかった。

(『マダム・ラ・ファムリータ』のドレスなんてあんな地味女に似合うわけないわ。

ギルバートも好きな女の子が着た方が喜ぶに決まってるわ!)


ライラはそれから『マダム・ラ・ファムリータ』でドレスを注文している令嬢達に近寄り、情報を得ようとした。

「ねえ、あんた『マダム・ラ・ファムリータ』でドレス作るんでしょ?」

「何故それを?」

「聞いたのよ、あ、あんたもでしょ?」

「それが何ですか?」

「私も『マダム・ラ・ファムリータ』に行きたいのよ」

「「「はあ?」」」

突然何を言い出すかと思えば、店にライラを連れていけという。

「ライラさんは何をしに行くの?」

「もちろん私のドレスを注文しに行くためよ」

「えっと、『マダム・ラ・ファムリータ』は紹介がないと入れませんわ」

「だったらあんたたちの誰かが紹介してくれればいいじゃない」

「私達は紹介していただいた身ですから無理ですわね」

「どういうことよ?」

「常識をご存じならわかるでしょ?学園で何を学んできたのかしら」

そう言って彼女たちはライラから離れていった。


「ちょっと、あの子の頭の中やばくない」

「どこかにお嫁にいくのかしら?」

「それにしても、準男爵家が『マダム・ラ・ファムリータ』のドレス代が払えるのかしら?」

「無理でしょう」

「そうよね、私達だってクロエ様のおかげで何とか払える金額にしていただけたのだもの」

「そうね、普通ならお店に伺うのも難しかったでしょうね」

「我が家もお母様が喜びすぎて、代々着られるように保存方法を確認していらっしゃったわ」

「他のお友達たちもドレスは無理でも小物とかを選べるように配慮してくださって、クロエ様には感謝しかないわね」


彼女たちがクロエへ感謝の気持ちを語っている頃、ライラはぷりぷりしながらギルバート達の所に向かっていた。

何か用事があったのか、ギルバートが一人でいるところを見つけた。

「ギルっ!!」

最近は二人で話すこともできなくなっており、チャンスとばかりにライラはギルバートに抱きついた。

「ギル、寂しかったわ、私。

最近はみんな忙しそうにしてるし、一緒に遊びに行ったりもできてない・・・。

ねえ、ギル、いつになったら私はギルの側にいられるの?

もうすぐ卒業だし、私、いつまで待っていたらいいの?」

そう言ってライラはギルバートにぎゅうっとしがみつき、上目遣いでギルバートを見上げるようにして見つめた。

(ギルも久しぶりの私と二人きりで嬉しいでしょ?)

そう思っていたのだが、ギルバートはにこりともせず、自分にしがみつくライラの両肩を掴むと後ろに突き飛ばした。

(なに?どうして?)

にこやかに笑い、抱きしめてもらえると思っていたライラは混乱した。

「ライラ嬢、君に愛称呼びを許してはいない、それと、僕には婚約者がいる、軽々しく接触しないでくれ。何度も言っているだろう?」

「でも、私、私はギルの、ギルバート様の幼馴染で、大切な存在でしょ?」

「単に隣の屋敷に住む令嬢、というだけだ。

それに、いつまで待つとはどういう意味だ?

僕にはクロエという大切な婚約者がいる。彼女に誤解を与えるような発言はやめてくれ」

「でも、それは政略的な婚約で・・」

「誰がそんな事を言ったんだ?ライラ嬢、もういい加減にしてくれ。

幼い頃からの友人だと思って学園内で卒業までは、と我慢していたんだが。

卒業まで我慢するのも疲れたよ。準男爵家には抗議させてもらう」

そう言ってギルバートはライラを冷たい目で見ると、立ち去って行った。

その手はライラに抱きつかれたところを払うようにしていた。



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