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幼馴染の女


クロエの婚約者ギルバートには友達が多い。

彼は公爵家の令息だが、王都で育ち、公爵家が幼い頃から周囲の子供たちとの交流を盛んにしていたため、学園に通う今でも仲良くしている友達がいるのだ。


婚約してからクロエもその友達とのお茶などに誘われることが多くなった。

ほとんどの友人たちはクロエに気を遣ってくれ、話の輪に入れるように話題を振ってくれたり、ギルバートがクロエの話しやすいように誘導してくれていた。

唯一人、ライラだけはクロエは苦手に思っていた。

ギルバートの唯一の女友達だからだ。


ライラは準男爵の令嬢なのだが、屋敷が隣り合っていることもあり、幼い頃から家族ぐるみで仲良くしているらしい。

他にも令嬢が数名いたようなのだが、10歳を過ぎた頃から適度に距離をとるようになっていたらしい。

唯一残ったのがライラだけだった。


婚約後、公爵夫人に呼ばれて公爵邸に行った時の事だ。

「クロエさん、ようこそ」

「公爵夫人、本日はお招きいただきありがとうございます」

「ギルバートもすぐに帰ってくるでしょうから、先にわたくしとお茶をしてもらえると嬉しいわ」

そう言ってテラスに準備された席に案内された。

お茶を飲みながら、今後の公爵家での教育について説明を受けていると、パタパタと足音がして、いきなり誰かが声をかけてきた。


「おばさま~またきちゃいましたぁ」

彼女はそう声をかけてあいている席に座ろうとしていた。

「ライラ、今日はお客様がいらしてるのよ」

「え~!誰っ?あ、この人ですかぁ?」

そう言ってライラはクロエをじろじろと見てきた。

「あの、わたくしはクロエ゠レイ゠ハイアットですわ」

クロエはとりあえず席を立って自己紹介をしてみた。

「ふ~ん、クロエね、私はライラよ」

そう言ってライラは勝手に座ると、メイドにお茶を要求した。 

公爵夫人は頬に手を添えて、軽く首を傾げて 困った子ねぇ と小さな声でつぶやくだけで特に注意をする様子もない。

立ったまま、クロエは困惑を隠せないでいた。

無作法にも勝手に座り、挨拶も適当なこの女性は何なのか?一体どういう身分の関係者なのか?

ライラだけがベラベラとよくわからない話をしている場所に、ギルバートがやってきた。


「ギルバート様・・「あ~、おかえりギル~」」

クロエが声をかけようとした時、ライラがぱっと立ち上がってギルバートに抱きついた。

「ライラ、また勝手に来てたのか」

ギルバートは驚く様子もなく抱きついたライラの手をそっと外した。

そして、クロエに向き直ると  

「クロエ嬢、ようこそ。どうぞ座ってください」

そう言ってクロエの所まで来ると立ったままだったクロエを座らせた。

「もう~ギルってば~、この人だれなのよ」

そう言ってライラは無作法にもこちらを指差してくる。

クロエはあまりの事に固まった。

「彼女は僕の婚約者だよ」

ギルバートの返事にライラは驚いたのか、

「うそでしょ!!こんな地味な女が??本当に婚約者なの?」

そう叫んだ。

「ライラ!クロエ嬢に失礼だろう!」

「ライラちゃん、クロエさんに失礼よ」

公爵夫人もギルバートもライラを怒ってくれたのだが、クロエは何となく気まずくなりそのまま帰宅したのだった。

二人とも必死に謝ってくれていたし、公爵からも謝罪の手紙が来たのだが、クロエはあの場からライラを追い出さない公爵家にもやもやしたものを感じてしまった。


その後も、公爵邸に行けば、ライラによく会ってしまう。

どうやら彼女は出入りを自由に許されているらしい。

(おかしいと思わないのかしら?)

良い年頃の令嬢が頻繁に屋敷に出入りして自由にしている、そのうえ、婚約者でもないのに愛称呼びを許している。

もやもやした思いはいつもクロエの中にくすぶっていた。


婚約者のギルバートはクロエの事を大切にあつかってくれる。

毎朝クロエの屋敷まで迎えに来てくれるし、週に2,3回は昼食を一緒にとっている。

休みの日にはデートに連れて行ったり、手紙や贈り物もしてくれる。

だが、クロエの事は クロエ嬢 と呼ぶのだ。

ライラの事は呼び捨て、愛称呼びを許しているのに、だ。


「面白くないわ・・・」

クロエの不満は徐々に積もっていくのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 頭の足りない子だから優しくしてあげよう。下々に慈悲を与えるのは貴族の役目みたいに思っているならちょっとわかる。
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