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【1000文字小説】役に立てない未来が分かる力

 今のようにユーチューブやスマホがなかった時代は、貧乏学生といったらラジオから流れてくる曲を神業のごとくカセットテープに録音しないと好きな曲をいつでも聞くことはできなかったものだ。ある時、女性シンガーの曲をラジオで聞いたとき衝撃を受け、この人はかなり売れるぞと、何も知らない素人ながら確信したことがあった。私の周りではまだそのシンガーのことを知っている人は少なかったが、しばらくして日本を席巻することになる。


 またある時は、海パンをはいたムキムキの芸人が、音楽に乗せて開き直る芸をテレビで見て、絶対売れると確信したこともある。私の周りの人は半信半疑だったが一度彼の芸を見ると爆笑だったようだ。しばらくして彼は売れっ子芸人への階段をすごい勢いで駆け上がっていった。ただ直感的に売れると感じただけだが、そういうことがたまにある。


 しかし、この便利な『才能』は欲のためには全く機能しない。私がFXでちょっとばかりお小遣いを稼げた話を聞きつけた友人の武藤が初めて外貨を買うか売るか迷っていたときのことだ。


「迷う必要はない。どう見てもドル高や。」電話越しに強く言う。

「絶対やな。責任とれよ」武藤は言う。

「投資には絶対はない。ないけど見てみろ。この10分だけでもドル高に進んだぞ」

 チャートは全てを語っていた。10分前も彼が悩み始めた一時間前でも一日前でもその時にドルを買っていたら今は儲かっている。

「よし、ドルを買う」そう言って武藤は初めての通貨投資を行なった。するとしばらくして1000円程度の儲けが出始めた。

「おー!プラスや」ただ待つだけでお金が増えることに感動している。よく分かる。

「だろ、あとはいつ決済して利益をいくらで確定するかや」


 明るい未来しか見えないこの楽しい時間。電話越しに二人で見ているドルのチャートは、夜に行くコンビニのアイスコーナーのような小さな興奮しかなかった、はずだった。


「おい、ドル安になってるぞ」突然、緊急音を鳴らした武藤は電話越しに語気が強い。大丈夫、チャートは上がったり下がったりを繰り返すもんや、と言い時間稼ぎをしたものの、武藤は含み損を膨らまし損切りを行った。一万円近くの損が出て、それからしつこく弁償せえと詰め寄られたものだ。


 この『才能』は先日、ある韓国グループが日本でヒットするだろうと私に教えてくれた。その後、日本はKPOPブームに沸き立つことなった。


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