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3話


村へ後もう少しというところだった。

村の方角から猛烈な勢いの何かが俺達を目掛けて飛んでくる。


「紫音!!!」


妻が飛んでくる何かを器用に旋回し回避する。生前そんなに運動神経良い子だったかな?

まぁそんなことはいい、よくやった、間一髪ってところだ……

やっぱり歓迎されてないのだろうな、間違いなく俺達を狙って今の一撃は放たれていた。

矢だか何だか知らないけれど、俺の妻を狙うとは許さん。でもドラゴンが村に来るって思ったら迎撃もするか……


「少し離れたところに降りよう」


妻は頷くと村から少し離れたところへ着陸をする。周辺の草花が風圧で揺れる。

フワッと着地すると妻は頭を下げ俺を下ろしてくれた。ありがとう、と優しく撫でてやると妻は嬉しそうに喉を鳴らした。


「人が乗っていたのか」


人の声がする、ここに来て初めて会う人だがあまり友好的ではなさそうだ。

手には小柄な身体には似合わない長い槍を持ち、その矛先を俺たちに向けている。

少年と思わしきその人は俺を睨みつけた後、妻の事を吟味するように見ていた。

もしや俺の妻の美しさに見惚れたか?


「なぁ、村人か?俺も紫音…ドラゴンも人を襲うわけじゃないから村に入れてくれないか?」


「純白のドラゴンか…… それも毛並みが…… 珍しいな……」


少年は俺の話なんて聞きもせずに妻の事をジロジロと見てはブツブツ呟いていた。もしかしてドラゴンはこの世界でも珍しいのか?よく見ると少年の後ろの方には村人と思わしき人々が物陰から、恐る恐るこちらを伺っているようだ。


「おーい、俺もドラゴンも何もしないから村に入れてくれないかー!」


少年に何を話しても無駄だと思い村人たちに声をかけてみることにする。


「おい、聞いたか?」


「何もしないですって」


「彼も竜騎士様なのかしら」


「それにしては身なりが変じゃないか?」


ひそひそと話す村人達。竜騎士様?

竜騎士ってファンタジーでは定番の職業だけど、彼もってことは他にもいるのか?

そもそもこの世界においての竜騎士ってどういう立ち位置だ?

それにしても身なりは確かに目立つかもしれない、俺が着ている現世の服はこの世界の人の服に比べると些か派手なようにも見えた。妻の美しさに見惚れていたのであろう少年が俺の方を向き聞いてきた。


「おい、そこのおまえ。この白竜はおまえのか?」


「妻だ」


「はぁ?」


少年が呆気にとられた声を出す。こいつ頭がおかしい、そんな顔で俺のことを見てくる。

村人達も何を言い出しているのだ、と言うような顔で俺のことを見てくる。


「……どういうことだ」


「俺等、違う世界から転生してこの世界に来たのだけれど。妻はこの姿になっていた」


「違う世界?転生? ……巷で噂の転生者か、お前は」


少年が怪訝そうな顔で俺を見てくる。巷で噂? 転生者は他にもいるのだろうか?

ぶつくさとだからそんな変な恰好を……とか失礼なことを呟いている。


「で、妻がそのドラゴンにでも食われたか?」


「違う! このドラゴンが妻だよ!」


「転生時に頭打ったのか? それともお前の生きていた世界ではドラゴンが嫁になる世界なのか?」


「そうじゃない、転生したら妻がドラゴンだったってこと!」


そんな事例があるのか? と少年は頭を抱えだした。村人たちもざわついている。

狂人のような扱いを受けていないか、俺?でも事実だし……

いやでも本当に妻は喰われていて、ただの人懐っこいドラゴンなだけとか言わないよな?


「紫音、おまえ、紫音だよな」


「くぅううう」


俺の呼びかけに応えるようにドラゴンは顔を摺り寄せてくる。やっぱり妻だ。この感覚、安心感、俺にはわかる…… 呼びかけに応じてくれた妻を優しく撫でてやると、妻は嬉しそうに小さく尻尾を振った。


「少なくともそのドラゴン、おまえに懐いているな」


「夫婦だからな」


「おまえも竜騎士なのか? そもそも竜騎士という概念がある世界から来たのか?」


「いや、竜騎士は御伽噺でしか聴かない存在だった。おまえもってことは……」


この小さな少年は竜騎士ってことなのか? でも槍って確かに竜騎士のイメージあるな。

少年は頷くと俺達に向けていた矛先をやっと仕舞った。


「そう、僕は竜騎士。名はデュラム。俺は竜騎士の中でもドラゴン討伐を生業としている」


「討伐……! 俺の妻は討伐しないでくれよな!」


「ああ、もう、頭おかしくなるからその妻って言うのをやめてくれ!」


少年はため息をつくと村人達に、俺達のことを大丈夫だと説明し、もしも何かあったら責任もって自分が討伐すると条件つけて村へ案内するようにお願いしてくれた。

村人達は戸惑ってはいたものの、俺のことを村へと案内してくれた。

妻は家屋が壊れないようにと、村の外の方で待ちたがっているようで、村の中へ案内しようとしても首を横に振るだけだった。


「寂しいけど、少しだけ待っていてくれ」


そう言って妻の口元にキスすると妻は静かに俺を見送った。



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