ジロウとコジロウ
1話完結になります。
僕の名前は小塚翔平、7歳。
僕はお父さんとお母さんと妹と犬のジロウの5人家族。
その中でもジロウは僕にとって特別な存在なんだ。
ジロウは僕が生まれてからずっと一緒にいる大切な親友。
僕が怒られたときも、ケガしちゃったときも
隣にはいつもジロウがいた。
ジロウはいつも温かくて安心できる僕の居場所でもあった。
妹が生まれてからは、僕とジロウでお世話することもあった。
妹が泣いているとジロウがすぐに傍に行き、僕が妹をあやすんだ。
そしたら妹はニコニコ笑ってくれる。
僕とジロウは最強タッグ!!お母さんにだって負けないもん!
ある日、いつものように公園で遊んでいると一緒に遊んでいたはずの妹がいなくなっていた。
お母さんと僕は公園中をたくさん探した。大きな声で呼んでも声が聞こえない。
お母さんが交番へ向かおうとした時、急にジロウがどこかへ行ってしまった。
僕はジロウまでいなくなってしまったと思い、泣き出してしまった。
お母さんも僕も不安で仕方がなかった。
するとジロウの声が聞こえた。
僕はお母さんに「ジロウの声がする!」といい、声のする方へ向かった。
ジロウの声にだんだん近づいていくのがわかる。
公園から少し離れた先の林の中には、ジロウと妹がいた。
「よかった!!!」」とお母さんは妹を抱きしめて泣いた。
「ジロウ、お前は僕らのヒーローだな!!」と僕はジロウを抱きしめた。
幸いにも妹に怪我はなく、歩いているうちに眠くなってしまい、そのまま林の中で寝てしまっていたようだ。
家に帰ってから妹はすごく怒られていたけど、その後はジロウが慰めていた。
本当にジロウは我が家のヒーローだ!
でも僕が8歳の時、ジロウは死んでしまった。
いつものように公園で遊んでいたとき、急にジロウが道路に向かって走り出したんだ。
そしたらジロウはそのまま車に轢かれて死んでしまった。
本当に突然だった。なんで道路なんかに飛び出したのかわからなかった。
周りの大人たちは、ジロウが道路に落ちていた花を拾いに行っているように見えたと話していた。
どうして花を拾いになんか行ったんだ!!
そもそも道路に花なんて落ちていなければ、ジロウは死なずに済んだのに.........
僕のヒーローは、、、、死んでじゃったんだ。
とても悲しかった。僕はその日から学校に行けなくなってしまった。
ずっと一緒だと思っていたのに.........
そんな僕の姿を見ていたお父さんとお母さんは、ある日子犬を家に連れてきた。
「ほら?翔平、可愛いでしょ??」
「ジロウが死んでしまったのは悲しいが、お前が元気でいないとジロウも心配するぞ?
早く元気になれるように、新しくこの子を飼うことにしたからな。
名前も考えてあるぞ。コジロウだ!」
みんなジロウがいなくなって寂しくないの??
なんでジロウの代わりを連れてくるんだよ!!
「ジロウの代わりなんていらない!!僕はジロウに会いたいんだ!!」
お父さんとお母さんは悪くない。
わかってるけど、それでもジロウの代わりを連れてきたみたいで、僕は辛くなった。
それからしばらくして、僕はまた学校に行くようになった。
でも、新しく飼い始めたコジロウを可愛がってあげることが出来なかった。
僕の中でコジロウを可愛がることは、ジロウを忘れることになるんじゃないかと思っていたから。
コジロウを可愛がってあげられないまま7年の月日が流れていた。
僕は中学生になり、妹も大きくなった。
コジロウがジロウと同じ年齢になろうとしていた頃、僕はある書き込みを見つけた。
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【空色の手紙】
お空の上にいる大切な方からの手紙が受け取れます。
ただし、その内容を他の人に見せてはいけません。
必ずご自身で内容をご確認してください。
そしてこの手紙は24時間以内に自然消滅します。
~手紙の受け取り方法~
①手紙を送ってほしい相手の名前を書くこと
②自分の名前を書くこと
③書いた紙を午前0時に郵便ポストへ投函すること
お手紙は1週間以内にご自宅の郵便ポストへと配達されます。
なおこのやり取りは人生で一度きりしか使えません。
よくお考えの上、お書きください。
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空色の手紙?そんなものあるわけないだろ.........
そう思ってはいるけれど、どうしてもこの書き込みが気になって仕方がなかった。
僕はおもむろにノートの端を破り、『ジロウ』と書いた紙を
午前0時に家の近くの郵便ポストへと投函した。
そして5日後の朝、母親から「翔平宛てに手紙が届いているわよ」と起こされた。
日曜日の朝に起こされた僕は、学校でもないのに何でこんな朝早くから起きないといけないんだと、少し苛立っていた。
「翔平、これあなた宛ての手紙よ。
差出人の名前がないけど、、、あんた怪しい人とかに住所教えたりしたんじゃないの??」
「そんなことするわけないだろ?ってか誰からなんだよ。」
手紙を開けてみると、その中には水色の便箋と菊の花がに入っていた。
水色の便箋には犬の肉球スタンプが押されているだけで、特に何も書かれていなかった。
「意味わからんもの送ってくるとか、どんだけ暇人なんだよ」
そう呟いたとき、コジロウがワン!と吠えた。
コジロウが家の中で吠えることなんてなかったので、家族が驚いていると
コジロウは僕のところに来てまたワン!と吠えた。
なんでこんなに吠えられるんだ??
「邪魔ってことですか、、、、はいはい、部屋に戻りますよ.........」
コジロウに吠えられるとか、どんだけ嫌われているんだよ.........
そう思った時、「コジロウ.........コジロウ.........ジロウ.........」とふと呟いている自分に気づいた。
そして僕は慌てて部屋に戻った。
空色の手紙。
僕の頭の中をその言葉が駆け巡った。
部屋に入りもう一度手紙の中身を確認した。
水色の便箋は肉球が押され、その間に赤い菊の花が押し花のように挟んであった。
「まさか、、、、ジロウからの手紙、、、なのか、、?」
半信半疑だったが、僕はこれがジロウからの手紙だとしか思えなかった。
これは絶対にジロウからの手紙だ!!
でも菊の花は、、、いったいなんだろう?
他に何か書かれてないか確かめたが、何もない。
手紙の中にも他には何も入ってなかった。
「ジロウ、、、お前は僕に何を伝えたいんだ............」
何もわからないまま時間だけが過ぎていく。
このままだと手紙が消えてしまう、、、その前には何とかしたい!
そう思っていると、「お昼食べに降りてきなさーい」と母親の声がした。
そういえば朝ごはんも食べてなかったっけ。
いったん休憩しようと思い、リビングへ降りる。
お昼を食べていると、庭でコジロウが遊んでいるのが見えた。
ジロウ、、何を伝えたいんだろう、、、
そう考えながらコジロウを見ていると、コジロウが何かを咥えて僕の方へ来た。
そして庭に植えてあったガーベラを僕の膝の上にのせたのだった。
それを見た母親は笑ってこう言った。
「あらよかったわね翔平。翔平にプレゼントみたいよ。
もしかしたら翔平と仲良くしたいのかもねぇ。」
「仲良くねぇ、、、朝、あんなに吠えてきたのに?」
「翔平は知らないの?ガーベラの花言葉。」
「花言葉?」
「そう。花にはそれぞれに花言葉ってのがあってね、
ガーベラの花言葉は、希望とか常に前進、って意味があるのよ。
きっとコジロウは翔平のことを励ましてくれているのね。」
花言葉............
「花言葉って全部の花にあるの!?菊の花にも??」
「!?!?あ、あるわよ?どうしたの?そんなに慌てて」
「菊の花言葉って何??」
「それはわからないけど、調べたら出てくると思うわよ」
僕は急いで部屋に戻り、菊の花言葉を検索した。
「菊、、、菊、、、菊、、、」
僕は一心不乱に花言葉を検索した。
そしてその意味が分かったとき、僕は泣いた。ただただ泣いた。
親に気づかれないように声は抑えていたけれど、僕は泣き崩れていた。
「ジロウ、、、僕も、、、僕もずっと、、、」
今まで溜めこんでいたものが全て流れていくようだった。
その夜、僕は手紙を枕の横に置いて眠った。
まるで昔みたいにジロウと一緒に寝ているような感じがして安心できた。
翌朝、手紙はなくなっていた。
ただひとつ、赤い菊の花を残して............
僕は残った赤い菊の花を栞にし、肌身離さず持っていた。
そして手紙が消えた翌日から僕はコジロウを可愛がるようになった。
「あら、珍しいわね。翔平がコジロウと遊んでいるなんて」
「色々思うことがあったけど、コジロウもちゃんと家族なんだよなって。
今更かもしれないけどさ。コジロウのおかげで大切なことを教えてもらったし............」
「??よくわからないけど、コジロウはジロウの代わりなんかじゃないわよ。」
「あぁ、わかってる。ジロウは僕の家族で兄弟で、≪親友≫だ」
ジロウ、見てるか?
僕は元気だよ。ジロウの手紙ちゃんと届いたからね。
僕らは離れていたって心はずっと一緒だからな。
いつかまた一緒に遊ぼうな。
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・菊
・花言葉:あなたはとても素晴らしい友達
・赤い菊の花言葉:I love you
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Fin
ご覧いただき誠にありがとうございます。
拙い文章化と思いますが、今後とも精進していきたいと思います。
次話もご覧いただけると嬉しいです。