第9話 新しい家族
目を覚ますと寝息を立てながら眠っているユーナの姿が目に入って来る。俺は微笑みながらユーナの髪をかきわけ、おでこに口づけをすると起き上がる。テーブルの籠に目を向けると狐は気持ちよさそうに眠っていることを確認する。
俺は服を着ると籠を持ち一階のリビングのテーブルへと向かい籠を置き、顔を洗う為に洗面台の鏡を見ると昨日の出来事を思い出してしまうとにやけてしまう。シャキっとする為に自分の頬を叩き風呂の準備をすると身体を綺麗にし二階で眠っているユーナを起こす為に自分の部屋に戻る。中の様子を窺うとまだユーナは眠っていた。
「ユーナ? 起きて……起きて」
何かおかしい。いつもなら声をかけるとすぐに起きるユーナなのに……。何回か声をかけるがユーナは起きない。そう思っているとユーナの瞼が微かに動く。これは寝たふりをしていると気づいた俺はユーナの耳に口を近づける。
「起きないと昨日のように……」
耳元で囁くとユーナの身体がビクンと震え、顔を見ると唇を突き出していたが俺はおでこに再び口づけをする。ユーナは勢いよく目を開く。
「おはようございます」
「よく寝れた?」
「はい……」
「ユーナ? 寝たふりしてたでしょ?」
「いいえ……あの……。ごめんなさい」
「それとも続きをしてほしいのか?」
俺は冗談で言うとユーナは身体をモジモジさせながら上目遣いをする。俺はユーナの頭を撫でる。
「冗談だよ。身体の方は大丈夫か?」
「ちょっと、その……違和感があるぐらいです」
「そうか。今日はあんまり無理はしない方がいいな。それと風呂沸かしてあるから入ってきな」
「わ……わかりました」
俺はそっと手を出すとユーナは手を掴み立ち上がる。ユーナは片手でおでこを触ると嬉しそうに微笑み一緒に一階に行く。ユーナは風呂場に、俺はキッチンで食事の準備を始め作り終わる頃にユーナがキッチンに現れる。
「ありがとうございます。食事まで」
「いいよ。それより食べよう」
テーブルを囲むと食事を摂るがお互いに恥ずかしいせいで言葉が出てこない。今まで恋愛もしたことがなかった俺だったが昨日のことで一線を越えた。ユーナの方を見るとユーナの顔が赤くなっている。昨日のことを思いだしてしまったのだろう。
その時、狐が起きたのか鳴き声がリビングの方から聞こえユーナと一緒に見に行く。
「起きたんだな。よかった……このまま目を覚まさないと思ったよ」
「大丈夫ですよ。傷は浅かったので後で薬を塗りましょう。それよりご飯をあげた方がいいですね」
ユーナはキッチンに生肉を取りに行き狐の前に出す。狐は皿の上に置いた肉の匂いを確認するとむしゃむしゃと食べ始める。そんな姿を見て俺とユーナは笑い合う。これだけ食欲があるのならどうやら心配はなさそうだ。食事が終わるとユーナの部屋に狐を連れていき傷口に薬を塗る為に包帯を取る。
「お前も早く治るといいな」
俺はそう問いかけながら狐の頭を撫でると頭のこぶが小さくなっていく。
「ユーナ!?」
棚から薬を取ろうとするユーナを呼ぶとユーナは駆け寄る。ユーナが見ている目の前で狐の傷を撫でると傷が少しずつ消えていき最後には無くなってしまった。
「サクヤ! 今、何をしたんですか!?」
「俺にもわからない」
この世界では、傷を治す魔法はないと言っていたし俺がそんな凄い魔法を使えるわけがない。
「もしかして! サクヤがいた世界ではこのようなことが出来るのですか!?」
「いや! そんなことが出来ないよ!」
「それならどうしてでしょうか?」
二人で話をしている間に狐の傷は治り元気になった。狐は籠から出ると俺とユーナの周りをグルグルと回り始め嬉しそうに尻尾を振っている。
「そういえば、この狐もモンスターなのか?」
「多分……。そうなのでしょうが私はこの狐というモンスターは見たことがありませんね」
「そうなのか……。それよりこの狐どうしようか? そのまま樹海に戻したらまた危険な目に遭うかもしれない」
俺の気持ちはこの家で飼いたいという気持ちがあるがユーナと相談しないといけない。ユーナは狐を見たことがないと言っているということはどれだけの力を持っていて危険かわからないからだ。
「私も樹海に返すのは危ないと思いますのでこの家で飼うことにしましょう。しかし、この子が危険とわかったらその時にまた考えましょう」
「じゃあ、名前を考えないといけないね。黄色の毛並み赤色の瞳……」
二人で名前を考え始める。お互いに名前を言い合いながら、なんとなく違うような気がしてまた名前を考え始める。
「ひまわり……光……。なかなか名前をつけるのは難しいな……」
「リリー……。リリーなんてどうでしょうか?」
「リリー?」
「リリーはこの樹海に生えている黄色い花で、黄色の花びらで外側が少し赤くなっているのですがとても綺麗で好きなんです」
「いいね! 今日から狐の名前はリリーだ。これからよろしくな!」
「あっ!? ちょっと待ってください」
ユーナはリリーを抱きかかえると何かを確認している。
「どうしたんだ?」
「いえ……男の子か女の子どっちなのかなと思いまして」
「あっ!? そういえば! それでどっちだった?」
可愛い姿で勝手にメスと勘違いしてしまっていたが確かにオスならリリーではしっくりこない。
「女の子でした」
また名前を考えなくてもいいと感じながら今日から新しい家族のリリーが加わり、一緒に過ごすことになったことで楽しくなっていくだろうと確信する。
ブックマーク登録ありがとうございます。これからも頑張っていきますので応援お願いします!!
三回目の投稿する作品ですので誤字、脱字などあるかもしれませんが、楽しく読んでいただけると嬉しいです。
面白いと思っていただけたならコメントや評価、ブックマーク登録よろしくお願いします。評価などしてもらえると自分の励みになります。
少しでも面白くなるように頑張ります!!
もしよろしければ『異世界樹海生活記』も読んでいただけると嬉しいです。