第5話 咲夜の手料理
俺は家の中に入ると、キッチンにあるテーブルにキノコと野草を分けて置く。樹海の中で取ったキノコはシメジやマイタケなどに似ている。野草はいまいちよくわからない。どれも雑草にしか見えない俺は他の物と端の方に置いていく。それとユーナが調合に使いたいと言っていた薬草は袋に入っている為、難しい仕分けはしなくても良かった。
俺は仕分けを終えると窓から外を見る。ユーナはイロシシの解体を続けており、イロシシから流れ出た血で地面は少しずつ赤く染まっていった。その姿を見て俺もいつか解体をしないといけないなと思う。しかし、まずはユーナの為に風呂でも用意するかと思い風呂場に向かった。
浴槽をブラシで掃除をすると、水の魔法『アクア』で汚れを流す。掃除を終えると、浴槽の端にある穴に栓をし湯口の魔法陣に触れ魔力を込める。湯は浴槽に溜まっていき、適量になったことを確認すると魔法陣に触れ湯を止める。
「これでよし!」
準備を終えた俺はキッチンの方へ向かうとユーナの姿が見える。ユーナは俺を見つけると声をかけてくる。
「解体が終わったのですがイロシシを運ぶのを手伝っていただいてもよろしいでしょうか?」
「わかったよ。ユーナも今日は疲れたでしょう? あとは俺がやっておくから先に風呂に入って」
「いいのですか?」
「もちろん! その為に準備してきたから」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて」
ユーナはそういうと風呂場の方へと向かっていく。俺は外に行くと解体した肉をキッチンの方へと運び、壁に刻まれた魔法陣に手を触れ魔力を込める。少しずつ壁が開くと中から冷気がキッチンに広がっていく。中には棚がたくさん並んでおり、肉と野菜などが種類ごとに分けられている。その中に肉を次々と運んでいき、今日の夕食の分だけを残し扉を閉める。
「次はユーナの為に料理を作ろう」
俺は肉を手に取るとまな板に並べ下ごしらえを始める。下ごしらえをしていると風呂場の方からユーナの歌声が聞こえてくる。綺麗で優しいユーナの声は俺の疲れを癒してくれているような感覚がする。ユーナの話だとこの世界の子守唄らしい。俺はユーナの歌を聞きながら料理を進めていく。
下ごしらえをすると瓶に作り置きしていたソースを鍋に入れ、今日取ってきた野草を入れ香りを立たせ味は濃すぎないように温めると最後に柑橘系の汁を少々入れてソースを完成させた。ソースを完成させた俺が肉を焼き始めるとユーナの足音が聞こえてくる。
「お風呂ありがとうございました。気持ち良かったです」
ユーナの髪は少し濡れており、薄着で髪を拭きながら現れるユーナは色っぽく感じる。俺は見惚れていた自分が気がつくと、ユーナに気付かれないうちに慌てて焼いている肉に目をそらす。
「あともう少しで出来るから着替えてくるといいよ」
「いいえ、今日は少し暑いくらいなのでお見苦しいですがこのままで」
ユーナは椅子に座ると長い髪をタオルで拭き始める。三か月も一緒に暮らしているけどユーナの可愛い姿を目で追ってしまう。目でユーナを追いながらもテーブルに料理を並べ椅子に座るとユーナは嬉しそうな顔をしながら料理を見ている。
「どうぞ。ユーナが獲ったイロシシのステーキだ」
「はい。いただきます」
お互いに料理にナイフをいれるとイロシシの肉から油が溢れ作ったソースと混ざり合う。フォークで切った肉を口に運ぶと甘い肉汁が口に広がった後にソースの塩味と野草の苦み。最後に柑橘のスッキリとした後味。イロシシの美味しさにこれならいくらでも食べられそうだと思う俺だった。
「う~ん! 美味しいです!」
「ユーナが喜んでくれて良かったよ」
ユーナは一口一口美味しそうに食事をする。ユーナの姿に嬉しい気持ちが沸いてくる俺は、自分の料理に再びフォークを付けると口に頬張る。初めての樹海で見たことのないモンスター。ユーナの言っていた通りこの樹海のモンスターは旨いということを知ってしまった俺は、他にどんなモンスターがいるか気になってしまった。
「ごちそうさまでした。とっても美味しかったです!」
「喜んでもらえて俺も嬉しいよ」
俺は皿を流しに置くとユーナに質問を問いかける。
「樹海には他にはどんなモンスターがいるんだ?」
ユーナは笑みを向けるとリビングの方へ歩き俺を手招きする。俺はソファーに座らされるとユーナは本棚から一冊の本を取り俺の隣に座るとページをめくる。
「今日のイロシシは樹海の中では弱い方です。しかし、このモンスターは……」
ページをめくる本を見るとなぜか俺はこの世界の文字が読めることとユーナと普通に会話が出来ることに疑問を持つ。なんでだろう? そう思っているとユーナはページをめくりながら口頭で説明してくれる。今はそれよりもユーナの説明を聞かないと思った俺は本に描かれているモンスターの絵を見る。地球にいる動物や虫など似ている絵が多かった。ユーナの説明を聞くと、樹海にいるモンスターたちは大きさ、強さなど計り知れない。
説明を受けている最中で、段々と今日の疲れのせいで瞼が重たくなってしまい、いつの間にか眠りについてしまった。
~ユーナside~
「それで、このモンスターは……あれ?」
私が横を向くとサクヤは眠りについてしまいました。今日は慣れない樹海に疲れてしまったのでしょう。
私は近くにある毛布をサクヤにかける。私はサクヤの頬に触れると指先から体温が伝わってきます。男性と女性はやはり違うのですね。いつも私に微笑んでくれる顔、私に魔力について真剣に聞く顔、そして、目の前の寝顔。私は手を頬から上半身へとなぞっていきます。私と違い胸板は固く。なんだか愛おしく感じていた私はふと我に返った。サクヤから手を離そうと手を遠ざけた瞬間、サクヤは私を抱きかかえ私はサクヤの上に乗ったまま横向きになってしまいました。
「ごめんなさい!」
その言葉はサクヤに届かない。サクヤは気持ちよさそうな顔をしながら眠っている。
「サクヤ……」
なんて、温かいぬくもりなのしょう。胸の鼓動が早くなることに気が付く私。サクヤに抱かれながら全身で体温を感じると私はサクヤの匂いを嗅いでしまいました。
「少し汗の匂いがしますね。でも……」
私は少し変な気持ちに襲われるが今日の疲れのせいでサクヤの体温が心地よく感じ、いつの間にか眠りについてしまいました。
~ユーナside END~
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