第3話 初めての魔法
ユーナを見ていると何かを閃いたような顔をし提案してくる。
「それでは、一緒に魔力の修行をしましょうか?」
「やろう!」
俺はその提案に二つ返ことで頷いた。
玄関の扉を開くと大きな湖が広がっていた。一歩ずつ歩いて行くと湖は静かでとても綺麗だ。俺は辺りを見渡すと木々が家と湖を囲むように生えている。
「サクヤ!」
周りの光景に見惚れている俺に対してユーナは手招きで家の裏に誘導し、魔力について説明を始める。
「魔力は空気中に漂っています。その魔力を集めイメージをします。自分のイメージが魔力と反応して呪文を唱えると魔法が発動します」
ユーナは俺に話すと湖に身体を向け手を突き出した。
「見ていてください。ファイヤーボール」
ユーナの掌から小さな火の玉が現れると火の玉は少しずつ大きくなり野球ボールぐらいの大きさになる。掌から湖の方へと火の玉が放たれ長い距離を飛んでいき、湖の中心の辺りに当たり蒸気を上げながら消える。
「凄い!」
「まずは魔力を感じましょう。目を閉じ空気中の魔力を掌に集めるイメージです。目を閉じるのは魔力を感じやすいからです」
俺はユーナのいうように手を前に出して目を閉じる。感覚を研ぎ澄ませ集中する。その時だった。空気中の中に温かなものを感じ魔力を掌に集めるイメージをする。
「これが魔力か……。なんか温かい感じがする」
目を開けるとユーナは笑みを浮かべながら説明を続けた。
「魔力を感じることが出来たのなら、次は目を閉じずに感じ取りながら頭の中で火球をイメージをして呪文を唱えてください。先ほど私がやったようにあの湖に向かって放ってください」
湖の方向を見ると俺は深呼吸をし掌に魔力を集める。掌に少しずつ魔力が集まってくることを感じると呪文を唱える。
「ファイヤーボール!」
呪文を唱えると掌に火の玉が現れ勢いよく放たれるが湖に届く前に消えてしまった。
「凄い! 出来ていますよ、サクヤ!」
「出来た! 出来たけどユーナみたいに湖までは届かなかったよ」
「いいえ、こんなに早く出来るなんてサクヤは才能がありますね」
「ありがとう。ユーナの教え方がいいんだよ」
「いえいえ」
俺はこの世界に来てすぐに魔法が出来るなんてちょっと不思議な感じがしたがユーナの喜んでいる姿を見るとそれだけで良くなってしまった。
「魔法はイメージで強くなります。しかし、いくら強力な魔法をイメージしても魔力が足りなかったり、イメージがしっかりしていないと魔法は発動しません」
「難しいな。それに空気中の魔力を集めるのも大変だし……」
「そういう場合は自分の中に魔力を貯めて必要な時にその魔力を使う方法もあります」
「魔力って自分の中に溜めることが出来るのか!?」
「はい。自分の身体を貯蔵庫とイメージしてください。貯蔵庫に魔力を溜めておき使う時に自分の貯蔵庫から魔力を出して魔法を使うような感じです」
「なるほど……」
「その為、普段から空気中の魔力を自分の中に貯蓄しておく必要があります」
「ユーナ? 空気中の魔力と貯蔵庫にある魔力との違いはなんだ? どっちにしろ、魔法を使うなら空気中の魔力だけでいいんじゃないのか?」
「それはですね。空気中の魔力を集めるより遥かに魔法の発動速度は早いですね」
再び、ユーナは湖の方へと身体を向けると手を突き出した。
「もう一度見ててください。今度は私の魔力を使います。ファイヤーボール」
掌から火の玉が一瞬で現れると湖に飛んでいく。しかし、さっきのファイヤーボールとは違い水面に当たると水しぶきと蒸気が立ち昇る。
「凄い! さっきのファイヤーボールより発動も威力も違う!」
「少々、魔力を多く込め過ぎました。空気中の魔力との違いがわかってもらえたようですね。それと自分の中に貯蓄しておく必要がもう一つあります」
「なんだ?」
「この場所では魔力が満ちていますが樹海に入ると魔力が薄い場所もあります。そういった場所で魔法を使おうとすると時間もかかってしまい、その隙にモンスターに襲われてしまうからです」
「なるほど」
「続いてサクヤは魔力を自分の中に取り込んでみましょう。先ほどは掌でしたが身体全体で魔力を感じて自分の中に魔力を吸収していく感じです。」
「わかった!」
今度は魔力を身体で感じ始めると身体の表面に魔力が集まってくる。魔力を少しずつ中に入れるイメージをすると魔力は俺の中に入っていき身体が温かくなっていくのを感じる。その時、俺の身体に痛みが走る。
「痛った! 今のはなんだ?」
「魔力上限がきてしまったのですね」
「魔力上限!?」
「はい。自分の貯蔵出来る最大量は人それぞれ違います。このことを魔力上限と呼ばれています。上限を越えて取り込もうとすると全身に痛みが走ります」
「そういうことは早くいってほしかったな……」
「すみません。サクヤがこんなにも早く出来ると思ってもみなかったので……それに私が最初に魔力を集める修行をした時はもっと時間がかかってしまいました」
「そうなのか? じゃあ、俺の貯蔵量が小さくて一気に魔力を取り込んだせいで満タンになってしまったのか……」
「そうかもしれませんが、もしかするとサクヤの魔力吸収が早すぎて私と違って時間がかからなかったのかもしれませんよ。なにより、これからは魔力の最大保有量を増やす修行と魔法を覚えていきましょう!」
「頑張るよ。ユーナよろしく頼む!」
「はい! これからよろしくお願い致します」
魔法の修行と魔力上限の修行の日々、あの日、死ぬはずだった俺はユーナという可愛い同居人と共に新たなる第二の人生を歩み始めた。
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