第2話 樹海の家とユーナの家族
話を終えるとユーナは俺の身体から離れ、そのまま俺の手をひっぱり立ち上がらせる。そして、一緒に廊下へ出るとユーナは嬉しそうに二階にある各部屋の説明を始めた。
「ここの部屋は、そのままサクヤが使ってください」
「いいのか?」
「いいですよ。ここの部屋は使っていなかったので」
俺が寝ていた部屋は、そのまま使っていいということなのでここが俺の自室に決まった。俺の部屋の向かいがユーナの部屋だと話してくれるとユーナは中を見せてくれるが俺はその光景に驚いた。ベットや机といった生活必需品の他は大量の棚とその中に収納されている本しか俺の目には映らない。俺の知識にある女の子らしい部屋とは別物だ。もっとも俺自身、他の女の子の部屋など見たことがない為、想像でしかないのだが。
ユーナの部屋の隣は研究部屋らしい。中を見ると棚には小瓶に入った草や木の実が並べてあり、机にはすり鉢など調合に使いそうな器具が置かれている。
最後の部屋は倉庫で道具が散乱して置かれている。ユーナの話によれば、中には貴重なアイテムなども置かれているらしい。
二階の各部屋の説明を終えると俺たちは階段を降りて一階へと向かう。まずキッチンに立ち寄ると、様々な調理器具が壁にかけてあり食事をするテーブルも置かれている。その隣のリビングには大きなソファーとテーブルが置かれており、映像でしか見たことがない暖炉もある。風呂場は広い浴槽があり俺のいた世界でいうところのヒノキ風呂のような感じだろうか。
最後に案内されたのは廊下の突き当りはトイレだった。説明が終わると俺たちは再びキッチンへと戻るとユーナは俺に問いかける。
「そろそろお昼になりますので昼食にしましょうか? 私の料理を振る舞います!」
「そういえば……お腹空いたな」
そういったユーナは料理を始めると俺は椅子に座りユーナの料理姿を見ているだけだ。なんだか不思議な気持ちだ。今までは一人暮らしていたせいか、他の人が自分の為に料理をしてくれるのは新鮮な感じがした。しかし、ユーナの料理姿を見ていることで気づいたことがある。この世界の調理器具は前の世界のガスコンロとは違う。長方形の岩に印が刻まれておりユーナが印に手をかざすと火がついた。そして、再び印に手をかざして火力を調節しているようだ。どの部屋にも印がいくつか描かれていた。あの印はいったいなんだろうと思った俺はユーナに問いかける。
「ユーナに聞きたいんだが?」
「なんでしょう?」
「その火の出ている器具はどんな仕組みになってるんだ?」
「これですか!? これはただの岩に魔法陣を刻み火が出るようにした道具です。最初に手をかざし、魔力を魔法陣に注ぐと火がつきます。火力はこれに注ぐ魔力量で調節ができます」
「その魔法陣は他の部屋にもいくつか刻まれていたけど……」
「サクヤよく見ていますね。この魔法陣は家のいろいろな箇所に刻まれています。各魔法陣にはそれぞれ発動する魔法が違います」
「そうなのか……。だとすると俺も魔力を使えるように練習しないといけないな!」
「サクヤも料理をしてくれるのですか?」
「一緒に住むんだからユーナに任せっきりにはしないよ」
ユーナは俺の言葉を聞くと少し笑いながら応える。
「ありがとうございます。サクヤが作る料理楽しみです。その為にもサクヤは魔力の修行をしないといけませんね」
「頼む。魔力を使えないとこの家での生活は難しそうだ」
ユーナは次々と料理をテーブルに並べていく。しかし、二人で食べることの出来る量とは思えない。ユーナはもしかすると見かけによらず大食いなのかもしれない。すべての料理を並べ終えたユーナは俺の向かいの椅子に座る。
「お待たせしました。食べましょう!」
「ありがとう。とっても美味しそうだ! いただきます」
俺とユーナは料理に手を付ける。料理を口に運ぶとその美味しさに目を見張る。一口食べるとまた次、また次へと料理に手が伸びる。こんなに美味しい料理は俺のいた世界では食べたことがなかった。一口食べるごとに力が沸いてくるようだ。
「ユーナ! この料理とっても美味しい!」
「喜んで貰えて嬉しいです」
「でも、この食材は見たことがない。この樹海で獲れるのか!?」
「はい。この樹海は凶暴なモンスターも多いですがその中には美味しいモンスターもいます。それに樹海の野草やキノコにはとても栄養があります」
つまり……この食材はモンスターの肉ということか。しかし、俺のいた世界でいうとモンスターはシカやイノシシのようなものだろう。
「そうか。俺にはモンスターは倒せないだろうが野草とキノコは俺でも採れそうだ。今度、教えてくれないか?」
「はい。一緒に取りに行きましょう」
俺たちは食事を終えリビングのソファーに座るとユーナの淹れたお茶を飲みながらゆっくりとしていた。するとユーナの視線が俺の胸元に向く。
「サクヤの首から掛けてあるペンダント綺麗ですね」
「あ……これか。これは……母さんの形見なんだ」
俺の返答にユーナが申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんなさい。悲しいことを思い出させてしまって」
俺は白い石が埋め込まれているペンダントを手に取ると見る。
「いいよ。だいぶ昔だから。父さんと母さんは事故で亡くなって唯一戻ってきたのはこのペンダントだけなんだ」
「そのペンダントからは何かを感じます。もしかしたらご両親の想いかもしれませんね」
「そんなことは……」
ユーナはソファーから立ち上がると棚に飾ってある写真立てを持ってくる。
「私の両親です」
写真立てを俺に見せるとそこにはこの場所に座っている三人の姿が写っていた。しかし、何か違和感がある。ユーナの見た目は今と変わっていない。それより違和感を感じたのがユーナの隣に写っている女の子だ。さっきユーナは両親といっていたがまさかこの女の子がユーナの母親なのか!? そして、最後の一人は顎髭を蓄えたお爺さんだ。となるとこのお爺さんがユーナの父親ということになる。
「この写真!?」
「これが私で、これがお母さん。この人が私のお父さんです」
「こういうのは失礼だけど……」
「なんとなく、いいたいことはわかります。お母さんとお父さんのことですよね。お父さんは人間なのですがお母さんは人間ではなく魔女という種族なのです。この世界の魔女は見た目が12歳以降変化しない長寿族なのです。この写真に写っているお母さんは355歳です」
「!!」
「お父さんは86歳でした」
「失礼を承知で聞くがユーナは何歳なんだ!?」
「写真に写っている時の私は62歳で今は112歳です」
ユーナの返答に俺の頭は真っ白になった。俺はユーナのことを子供だと思っていたけれど俺よりもはるかに年上だった。
「私の容姿が変わらないのはお母さんの血を濃く受け継いでいる為です」
「そうなんですか……」
「どうして敬語なんですか?」
「いや! 俺よりも年上だし……」
「私は全然構いませんよ。私は先ほどのように話してくれた方が嬉しいです」
「わかったよ」
ビックリしたが、この世界での違いが少しわかったような気がした。この世界にはいろいろな種族がいるのだろうと思いながらユーナを見る。
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