第一話 夢なら覚めろ!
こんなどうしようもないものでも読んでくれる方に感謝感激。
「ふぅ…」
五人のフード被ってる怪しげな人たちが、安堵の胸をなで下ろした。ような気がした。
フード深く被ってるからよくわかんないけど。
「悪い、ご苦労さん」
「おやすいご用です。それより早く国王様のところに」
突然思い出したように、先生は俺の手を引っ張って走り出した。
国王? そういや王国って言ってたな。王国って王様が治める国だから王国って言うんだっけ?
走ってたら視界がひらけてきた。薄暗いんで躓いた。
「国王様のところについたらおとなしくしてろよ」
「もちろん」
国で一番偉い人の前でそんな無礼な行動とってみろ、ヘタすりゃ殺されるでしょ。
っと、その前に…
「ちゃんと説明してくださいよ」
「なにを?」
「どう言ったらいいか分からないんで、あとで」
「しょうがないな。さァ、国王の間だ。キチッとしろ」
俺と先生の顔を確認すると、寝ぼけた顔した門番が木でできた扉をゆっくり開けた。
この人さっきまで寝てたな?
「ジョセフ国王、ただいま戻りました」
その部屋にいたのは、王冠かぶって、赤いマントを身まとい、それっぽいイスに座った…
「うむ! 任務遂行ご苦労であった!」
子供? それも女の子!?
「こう見えても一国の王じゃが?」
なぜ思ったことがわかってんだよ。なんだこの子、迂闊なこと思えないじゃんか。
それにしてもなんで国王がこんなちっちゃい女の子で、なんで俺がそんなお偉い人と会わなきゃいけないんだ。
「なんだ、まだ説明しておらぬのかギルシェンよ」
「なにぶん急いでいたものでして。申し訳ありません」
聞いた覚えのない名前が聞こえたから、思わず後ろを振り返った。あれ、だれもいない。
「む、ギルシェンおぬし名を変えてあちらに居たのか」
「その方が幾分都合がよろしいかと思いまして」
名前を変えてって…野田翔って偽名だったのかよ!
ギルシェンって名前、ちょっとカッコ良すぎだろ。
「そうだ、この場を借りてこの子に色々と説明したいと思うのですが、よろしいでしょうか」
「うぬ。ぬしもまだ混乱していることが多いと見た。ここで整理をつけるとよい」
変なところにとばされて行った先に心を読める女の子がいてなんで人の心が読めるのか聞きたいけどその前にえ〜っと…
「…これは夢ですか」
真っ先に知っておかなきゃいけないことだろ。
これが俺の夢なのかハッキリさせなきゃ俺は病院の世話になるかもしれん。
「これは現実じゃ」
「………」
「ぬしに救ってもらいたいものがある」
「金魚ですか?」
「世界じゃ」
「これを説明するには、少し長くなるんだが、いいか?」
……あれ、いつの間に俺ってメルヘンチックになったの?
夢なんだろ? 夢だと言ってくれよ!
「まず、今この世界が置かれている状況は――」
「さて、説明もおわったことじゃ。さっそくじゃが、ぬしに力を持ってもらう」
「は、はぁ…」
「楽をしようとするなよ? ぬしが自力でつけるのじゃ」
「俺がお前に教えるから。今日はまいってると思うから、明日からな。頑張ってくれ」
そんなこんなで、俺に与えられた部屋に案内してもらって、ふかふかベットの上でぐったりとしているわけだが。
さっき先生…ギルシェンって呼んだほうがいいのか。に説明してもらったことを簡単にまとめると…
魔王が現れた。
世界征服しようとしている。
異世界の者がものすごい力を持っているということがある本に書いてあった。
それじゃその中で最も能力のあるやつを救世主にしようってことでギルシェンが選抜。
見事当選する俺。
…ってことらしい。俺ってそんな突拍子な能力もってないと思うんだけど。
いきなりだったから姉ちゃんに何も言ってない…心配するかなぁ。学校二日目から休むことになるとかどうすりゃいいのよ。
その前に早く覚めてくれ俺の夢ぇぇ!
ぐるぐると頭の中でいろんな事が回ってたけど、疲れたから考えるのを止めた。
突然世界を救えなんて言われたけど、俺にできるわけがない。
早く覚めてくれ、と願いながら俺はゆっくりと瞼を降ろした。