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プロローグ

「魔法の世界へようこそ!」


 こんなとんでもない言葉を言われた。

 なにがとんでもないのかって? それは俺の世界に魔法という力が存在しないから。

 それならなんで「魔法の世界」なんて言われてるところに来たかっていうと、話せば長くなる。


 そう、あれは今朝から話したほうが話しやすい。




 カンカンカン!

 金属で金属を叩く耳障りな音。


「起きなさーい! 早く起きろー!」


 フライパンをおたまで叩く音のせいで耳が…

 てか、こんな起こし方よりもっと優しい方法無いのか!


「うっさい! どこのマンガだ!」


「こんなの一度やってみたかったのよ」


 俺が目覚めたことで気が済んだようで、下に降りていった姉貴。

 全く、毎度思いつきで起こし方を変えないでほしい。三日前は布団を取り上げて。おとといは「火事だぁー!」って叫んで。昨日なんか耳に吐息をはかれた。思わず情けない声だして飛び起きちゃったんだよなぁ…


 制服に着替えて降りていくと、トーストに乗ってるバターの焦げる良い匂いがした。


「今年であんたも受験生か」


「えぇ、おかげさまで。面倒ったらありゃしない」


「受験までは大変だろうけど、一度受かっちゃえば後は楽なもんよ」


「そんなもんですか」


「そんなもんですよ」


 エプロンをはずして姉貴が席についた。

 二人で「いただきます」をして食べる。


 ここで説明しておくが、俺の家族は今、姉貴しかいない。何故かというと、両親共に行方不明だから。

 まだ俺が小学生、姉貴が中学生のころの話だ。「出かけてくる」の言葉を最後に、ウチのドアから親が帰ってきた姿を見た覚えがない。

 一ヶ月経っても帰ってこないってんで、姉貴が警察に捜索願を出した。子供を置いて一ヶ月の旅行ってのは、ウチではあり得なかったから。あったとしても三日だったような。

 それからというもの、姉貴が家事全般をやってくれた。二人分の飯作ったり、洗濯したり。そのときから俺も自然と家の世話ができるようになっていた。

 まぁ、そんなわけで今は二人暮らしってわけ。


 朝飯を食い終わると、姉貴と一緒に学校に行く。と言っても、同じ学校なわけじゃない。

 俺は中学、姉貴は高校。途中までは一緒だけど、中学校と高校の分かれ道まで。話し相手がいなくなる心配はない。それぞれ二つの道は、それぞれの行き先に向かう人で一杯なのだ。 

 と、いうことで高確率で俺の友人と出会うことになる。


「いよう! 悠貴ー! 先行ってるぜー!」


「いてぇ! 待てや京介ー!」


 いきなり後ろから俺をどついたこの人。名前を五十嵐京介。変わり者。

 そういえば俺の名前がまだだった。俺の名前が大川悠貴。ついでに姉は千奈美。


 京介をダッシュで追いかけて、捕まえた頃には学校についちゃった。

 

「あ、悠貴おれ一組だわ」


「お前もか?」


 小学生のころから京介とは仲がとても良かった。それこそ親友級に。


 三年一組の教室に着くと、ちらほらと同じ組のような生徒が話してた。そういえば俺たち二人以外名前確認してなかったな。

 どうやら、たいして態度のでかいヤツもいないし、「いじめっ子」って感じの人もいなそうだ。


「今年は楽しめそうだな」


 俺の前に座った京介が話しかけてきた。どうやら今年の出席番号は京介が一番で俺が二番らしい。去年は俺の前に井藤って人がいたから、こうやって並ぶのは一年ぶりだ。


「ただ生徒がいい人揃いだと今度は先生がだれかって問題が出てくる」


「あぁ、そんなのどうだっていいだろ。問題なのはクラスの団結力よ!」


「まーそりゃそうだが」


 これで先生までいい人だったら、三年一組は一番の楽園となる。

 さて、人の数も増えてきたところで、始業式だから集まれって放送が流れた。ここで、それぞれの学年・クラスにどんな先生がつくのかが分かるってわけだ。


「えーみなさん進級おめでとうございます。一年生は入学おめでとうございます。二年生はこれから一年生の手本となるように〜〜」


 校長の話は長いと相場が決まっているようで。ウチの学校もしっかり長話をする気のようで。立って聞いてるんだから早いところ終わってくれないだろうか。

 なんて考えてたらはるか後ろの方から「ドタン!」って音が。あー、これは誰か倒れたな。今年の一年生は体が弱いのがいるらしい。ドタドタと先生らしき人の足音が集まる。

 ここで校長先生はみんなを座らせる。まったく、倒れるまで聞かせて、少しは罪悪感というものはないのだろうか。少なくとも話を短くするという手を打ってくれると生徒は嬉しい。


「それでは、先生の配置を発表します。」

 おぉ、やっとか。何分このときを待っていたことか。

 ウチの先生は誰だろう。わくわく感とちょっぴりの希望を胸に、校長先生の声に耳を傾けた。


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