第2回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞 への投稿作品
新型聖女
1923年(大正12年)関東大震災を生き抜いた聖女は、圧倒的にたくましかった。
昭和生まれの聖女ゆいこは、新型なのに、泣いている子供を見付けることも、事故に巻き込まれそうな人を助けることも旧型聖女に全く及ばなかった。
ゆいこ『旧型のくせにィ~。新型なめんなァ~』
ゆいこは、毎日大正生まれの聖女しかこに鍛えられていた。
聖女は、助けた人の感謝の言葉を受けるとHPを回復できるが、時代が変わり新たな人々の悲しみ、苦しみを察知することができなくなり、概ね30年経つと日々のHP 減少を補うことができなくて生涯を終えるのだった。
焼夷弾が雨の如く降る夜、しかこと ゆいこは、必死に救助した。
ゆいこは、朝日を眺めながらふと しかこのHPが、残り少なくなっていることに気が付いた。
ゆいこは、フルゲージなのに何故?
ハッとその時、初めて しかこが ゆいこの為に、ゆいこが感謝の言葉を受けられるように先に立ち去っていたことに気が付いた。
ゆいこ『しかこ!ちゃんと感謝の言葉を受けないとダメじゃない!』
しかこ『え? 感謝されたくて助けたんじゃないもん♪』
しかこ『ゆいこは、どうなの?』
言い終わるやいなや しかこは、倒れ、朝日に照らされキラキラと消えた。
1945年(昭和20年)8月6日午前8時15分。ゆいこは、広島に居た。
偶々迷子と思われる女の子に遭遇した ゆいこ。
その時。巨大な爆発がおきた。
咄嗟に女の子を背にして立つ ゆいこ。
ゆいこ『フルパワー! 新型なめんなァ~!』
広島に居た聖女の多くは、フルゲージではなかったので爆発の中、力尽きていった。
フルゲージだった ゆいこは、HP 1を残し防ぎきることができた。
だがしかし、HP 1 では、立っていられず倒れてしまい、女の子が無事なのを見るのが精一杯だった。
消えゆく意識のなか、よかったと思った刹那。
女の子『ありがとう♪お姉さん』
女の子の感謝の言葉を受けた ゆいこ。
ゆいこ『あれ?私、生きてる』
女の子に助けられたことを理解した。
感謝しつつ
ゆいこ『貴女のお名前は?』
女の子『ひさこ』
その光景をジトっと見つめる女神ヘゴチ
へゴチ『えぇッ ゆいこ と ひさこが助かったぁ〜
ひさこを救世主として転生して来る日を心待ちにしている異世界があると言うのにィ~
ゆいこも女神に転生して救世主ひさこをサポートするはずだったのにィ~
ァ~ ゆいこがフルゲージだったなんて想定外だったァ~
ァ~ どうしましょう???』
すっと姿を消す女神ヘゴチ