狂戦士
誤字脱字があるかもしれません、ご了承ください。
「撃退向風」
ミュールの指示と同時にプランが風魔法を発動する。
撃退向風、対集団魔法で敵に対して大規模で強力な向かい風を起こす上位魔法だが――
「凄いね」
敵との距離を詰めるべく先陣を切っていたアイミスが思わずつぶやく。
プランの撃退向風は一般の上位魔道士が使うそれとは範囲も威力も持続時間も段違いだった。
さらに、敵には肉を裂き、行く手を阻む強風を、先行しているイドリの部隊やアイミスとアミィ、他にも様々な部隊には威力を弱め援護となる追い風を、完璧に操っている。
「大したもんだね、魔法はプラン、カリスマ性はミュール、2人で表立って戦えないヴィーネスの代わりを担ってる」
一国の王という立場上、ヴィーネスはあまり派手には戦えない、その代わりを務めているのがミュールとプランな訳だが、代わりを務めていると簡単に言うがヴィーネスの代わりだ、この代わりが務まるのは世界でも何人いることやら……
そんなことを考えながらまだ遠くにある魔物達の軍団に視線を写すと目を紅く血走らせ、牙を剥き出しにして、爪が長く伸び、血飛沫を雨のように降らしている何かが見えた。
「ギザマ゛ら゛ごトきガ、ヴィーネスサマの゛クニにをおトスだと?」
「マとめデぶっコロしす」
不安定な言葉を発する何かの正体は、イドリだった。
「狂戦士化、か」
狂戦士化、体内の魔力を暴走させることで莫大な力を得ることが出来るがその代償に知性の全てを持っていかれると言われている。
「―――」
こちらに気づいたイドリが息を荒らげながら血走った目で睨んでくる。
アミィは思わず足をすくませ、アイミスは瞬時に構える。
「おや?アイミスさんにそのお弟子さんじゃないですな?」
いつの間にか、そこには昨日と同じ穏やかな雰囲気のイドリが佇んでいた。
あまりの豹変ぶりに声が出ない。
「その様子、狂戦士化かい?」
「えぇ、そうですわい」
狂戦士化を発動しているはずのイドリだが、長く伸びた爪、牙以外は落ち着いている様子だ。
「その割にはしっかり思考できているようだが?」
「ほっほっほっ、狂戦士化の制御に関しては少し自信がありましてな」
「なるほどねぇ」
狂戦士化の暴走を抑えるだけでなく制御して力に変えるとは、やっぱりこの森妖精族は幹部の中でもずば抜けた実力者らしい。
だが気になることがひとつ出来た。
「――ならさっきまでの暴走したような様子はなんだったんだい?」
確かにアイミス達は見た、目を血走らせ不安定な言葉を放ちながら敵を蹂躙するイドリの姿を。
「いえ、それがですね、我慢してたのですがいざ、敵を目の前にすると怒りを抑えられなくなりましたわい」
目の前の森妖精族は、ほっほっほと笑う。
ただキレていただけだ、と。
アイミスは苦笑いをするしかなかった。
「ここはイドリに任せてあたし達は他のところを潰しに行くよ」
「うん」
敵の中央に展開されていた魔物の群れはイドリ達の部隊によって既に4割型殲滅されている、任せても問題ないだろう。
右側の群れにも幹部が複数いるされた部隊がいるので大丈夫だろう。
私達は手薄の左側の群れに到着する。
「あたし達が一番みたいだね」
辺りにはまだ味方の姿がない。
ヴィーネスがアイミスとアミィが戦いやすいようにあえて魔物の右側の群れにだけ軍を手薄にしていることも関係しているのだろう。
「あたし達もそろそろ始めようか」
「うん」
そう言って、二人の魔道士が数千の魔物の群れへと、
ゆっくり足を進める。
ご拝読ありがとうございます!!
投稿頻度が落ちていますがこのシリーズはまだまだ続きますのでどうぞよろしくお願いします。




