炎の英雄
誤字脱字があるかもしれません、ご了承ください。
炎の英雄、その数多の戦場を駆ける姿は消えることの無い神の業火の如く。
三十年前、魔物と我が国の存亡をかけた大戦があった。
魔素さえあれば魔物は途絶えることなく生まれ続ける、その知恵なき魔物を率いて知恵のある一体の強力な魔王と言える存在と、数体の幹部が戦争を仕掛けてきた。
その激戦の中で誰も消せなかった炎、敵の大将を穿った英雄 アイミス=マードレック
そんな本で読んだ、そして憧れた英雄譚を思い出す。
目の前に立つ、突然部屋に押しかけてきた女性を見ながら。
酒場から宿屋で借りている部屋に戻るとすぐに深くフードを服被った女性が訪ねてきた。
まるで私が1人になるのを待っていたかのように。
「私になにか用があるの?」
「――そうだね、ちょっと話があるんだよ」
そう言うとその女性はフードを脱いだ。
年齢は30歳ぐらいだろうか、誰が見ても美人だと言うであろう整った顔立ちと、綺麗な少し癖の金色の髪はその癖によって生きているみたいに艶めいている。
それと右目の下にある刻印?だろうか、それが印象的だ。
「――どんな話?」
そう聞きながら、少女は背中に脂汗を流す。
部屋に入ってくる、そしてフードを脱ぐ、そんな何気ない動作に恐ろしく洗練されたものを感じながら――
この美女、恐ろしく強い。
それも今まで出会った魔道士なんか比べ物にならないほど隔絶した強さだ。
五年間、常に死と隣り合わせの森での修行で磨かれた少女の勘が大音量で警告音を鳴らす。
こいつはやばい。
「実は――」
ゴクリと喉を鳴らしながら次の言葉を待つ。
「あんたの魔法を見せて欲しいのよ」
「……へっ?」
思わず変な声が漏れてしまった。
「あぁ……ごめんね、急に、魔法と言ってもあなたの炎弾 を見せて欲しいんだよ」
「……へっ???」
もう1回でた。
「……どうしたのよ、さっきから間抜けな返事をして」
「いやぁ、なんか想像してたのと違ったから…」
「はぁ…あんた、めちゃくちゃあたしのこと警戒してたもんねぇ…」
「そりゃ、そんだけ強かったら普通は警戒するよ」
「ほう、あんた、分かるのかい?」
「ずっと森で暮らしてた時期があったしね。それで危険には少し敏感になったんだよ」
(敏感に…ねぇ…常人ならそこまでの集中力は出せないわよ……)
「そうかい、安心しな、あんたが思ってるようなことはしないよ、むしろ逆さ。」
「というと?」
「アイミス=マードレック、炎の英雄と言えば聞き覚えがないかい?」
「ん、あるけど」
「私がその本人だと言ったら、信じるかい?」
普通なら冗談はよせと笑い飛ばすのだろうが少女は笑わなかった。
昔読んだ本に炎の英雄は顔に刻印があると載っていた、そしてこの以上なまでの強さ。
「……信じるよ」
「――そうかい、」
そう答えると目の前にいた美女、いや、炎の英雄が満足そうに笑顔で頷いた。
「あんた、見る目あるよ、話は戻るけどあんたの炎弾を見してくれないかい?」
「いいけど、どうして??」
「――あんたに、魔法を教えてあげようと思ってね」
少し意地の悪い笑みを浮かべながら英雄アイミス=マードレックはわたしにそう告げた。
ご拝読ありがとうございます!
まだまだ続きますので今後ともよろしくお願いします!!