最弱の魔道士
炎の英雄に憧れた少女は最弱の炎魔法【フレア】使えない、親に捨てられ、それでも諦めず努力を続けていく少女の英雄譚。
年の割に大人びているのは森での生活が長く常に緊張状態にいたからと思っていただければ幸いです。
3話目ぐらいから面白くなっていくと個人的には思っております、お付き合いいただければ幸いです。
誤字脱字があるかもしれません、ご了承ください。
「炎弾ァァァ!!!」
悲鳴にも似た、甲高い少女の声が静かな森に響く。
【フレア】 とはこの魔法が発達している世界の中でも最弱クラスの炎の攻撃魔法、攻撃魔法だが殺傷能力が低く相手に軽い火傷を追わせる程度の火力しか出せない。
「グルゥゥゥゥォォォォオアア!!!」
「ゴフゥッ!!!」
狼のような魔獣の鋭い爪が少女の下腹部を抉る。
「炎弾!炎弾!!炎弾!炎弾ァァァァァァァアア!!!」
激痛に顔を歪めながら少女は叫び続ける。
「炎弾!炎弾!炎弾!炎弾!炎弾!炎弾炎弾!炎弾!炎弾!!!!!」
「ギュエェェェエエエ!!!!」
何十、何百回叫んだか分からない、既に声は枯れ、喉の奥は裂け、血特有の鉄の味がしていた所でようやく魔物が絶命した。
「ハァハァ…ウグッ…いてて…」
少女は慣れた手つきで傷口に薬草を塗りこみ処置を済ませると、魔物の死体を解体し始める。
「獣臭いけど、焼いたら食べれるな…」
少女は、
幼げで整った顔の少女からは想像出来ないほど野性的に、一心不乱に獣肉にかぶりつく…
手早く帰り支度を済ませると少女は村に向かって真っ暗な道を歩き始めた。
近くの小さな村に戻ると安い宿屋を借り、直ぐにベットに潜り込んだ。
もう夜も遅いし寝るか。
明日も朝からフレアの練習をしないといけないし…
「おやすみ……」
「……」
誰に告げたわけでも無いその言葉に、静寂が答えた。
(もう捨てられて5年か…)
名家の貴族らしかった丁寧な言葉使いはこの5年で随分と汚くなったものだ。
そう思いつつ意識が硬いベットに溶け込んでいった。
彼女には名前が無い、魔法の名家 エリゼリア家に生まれながら最弱魔法【炎弾】 しか使えず、6歳の頃にこの森に捨てられ、現在で5年が経つ。
この世界では強さが何よりも重視される。
それが名家となればさらに強さが重要視される。
捨てられてたのは当然といえば当然なのかもしれない、何故ならエリゼリア家は大昔から皇帝直属の魔道士を何人も輩出してきた名家の中でもずば抜けて優秀な血筋の家系だ。
「起きな、朝ごはんができてるよ。」
宿屋の少し太ったおばちゃんに軽く叩かれて起きる。
「ふあぁ……ん〜〜、あれ?朝ごはん代は払ってないよね?」
「あんたはこのド田舎の小さな村を救ってくれた恩人さ、朝ごはんぐらいつけさせておくれ。」
「本当に?それなら遠慮なくいただくよ。」
大きなあくびと伸びをして軽く支度をして1階の酒場に降りる。
この村に来たのは1週間程前だ、村についてそうそう、獣の群れが村を襲った。
獣の群れ程度なら炎弾のみで撃退できた。
魔法は本来高速で連発するのが非常に難しいので1対多数なら魔道士は圧倒的に不利なのだが、長年の努力と研鑽で少女はより習熟され、温度と範囲が大きくなった炎弾を高速で連発して発動させることが可能になった。
「あっ!魔道士さーん! こっちで一緒に食べません
か?」
「なっ…魔道士ちゃんはこっちで食うんだよ!」
「いや、こっちだ!」
1階に降りるとあちこちから大声が聞こえる。
「朝から騒がしいねぇ…あんた、すっかり人気者だねぇ。」
「あんまりこういうの得意じゃ無いんだけどなぁ。」
「そんな顔には見えないけどねぇ?」
「……」
自分でも気づかないうちに少し口角が上がっていた、長年一人で森を渡り歩いているせいで人との関わりがほとんど無かったがこういうのも悪くないか、と、部屋の隅の一人用の小さなテーブルの前に座ると用意されていた朝ごはんを前に思わずヨダレを垂らしてしまった。
「おいしそ〜、いただきま〜す。」
まずは大きめのパンに野菜と卵が挟まれたシンプルなサンドイッチにかぶりつく、
「んまーい!、とろとろの卵とみずみずしくてシャキシャキの野菜が絶妙にマッチしてる。」
わずか1分足らずで男性でも少し苦労しそうなサイズのサンドイッチを平らげてしまった。
次に、その隣の野菜のポタージュスープをいただく。
「相変わらず、いい食べっぷりだねぇ。」
「食べるの、好きだからね。」
「そうかそうか、そんなに美味そうに食べてくれるとこっちも作りがいがあるってもんだい!」
宿屋のおばちゃんはそう言うと嬉しそうに微笑んだ。
「ところであんた、ここら辺の小さな町や村を救い回ってるそうじゃないか。」
「ん、そうだけど。」
「あんたほどの魔道士なら都市の魔法学園からスカウトが来てもおかしくないと思うんだけどねぇ。
どうしてこんなに辺境な町や村を救ってくれるんだい? ?
報酬なんかも村に少しある本や1日分の食料ぐらいしか貰ってないそうじゃないか。」
「……」
少女は少し考え込む。
本を集めているのは刻印魔法の勉強をするためだ、フレアしか使えない私でも、元々刻印されている魔法であれば魔力を消費することで使うことが出来た。
初めて炎弾以外の魔法が使えたときは感動したものだ。
「都市は少し苦手なんだ、あと実戦の練習をするなら森はうってつけだしね、それに…」
「それに?」
「ここのみんなはいい笑顔で笑う、だから救いたいんだ。」
そう告げた少女は、純粋で曇りのない笑顔で笑う。
まだ少し幼いが愛らしい整った顔立ちと少し癖のある燃えるような真紅の髪が少女の笑顔を飾っていた。
「そうかいそうかい、ありがとねぇ、あんたの方がよっぽどいい笑顔で笑ってるよ、
思わず女の私が惚れそうなくらいね!」
「そっか」
もう一度少女が笑う。
酒場にいた誰もが見蕩れる女神のような微笑みで。
「女神だぁ…」
「魔道士さん…」
「魔道士ちゃん最高ぉぉお!」
そんな賑やかな酒場の前に、1人のローブを深くかぶった女性が立っていた…
ご拝読ありがとうございます。
まだまだ続きますのでよろしくお願いします!




