第三話 召喚と相棒
「これから世界創造をするにあたり、グリム様には補佐を召喚することをお勧めします」
「あれ? ルナ様は?」
てっきりついていてくれる物と思っていたので思わず声に出してしまった。
「申し訳ありません。わたしにはやらなければならないことがありまして……」
「あっ、いや、図々しくてすいません。召喚というのを教えてください」
本当に申し訳なさそうに頭を下げるルナ様を慌てて静止する。色々と仕事を押し付けられてるんだろうなーと勝手に想像してしまう。頑張れルナ様。
「グリム様がこうあって欲しい。一緒にいて欲しいと思う存在を思い浮かべてください」
目を閉じてイメージする。補佐、一緒にいる、相棒、AIB……。あっやばい雑念混じった。恐る恐る目をゆっくりと開けるとそこには……。
モップのような髪型の、目つきの鋭いロボット犬が、左手にディスクのような物を装着して、良い笑顔でサムズアップしている。
AIBOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO! 俺は思わずぎゅっと目を閉じる。
はっ! 思わず心の中で叫んでしまった。AIBOじゃねぇか! いや確かに相棒だけどね。違うよ。やり直し効くよね? ねっ? 思わず自問自答してしまう。俺の心にダイレクトアタックだよ。ごめんなさいやり直しさせてください。
「罰ゲ……」
――パチンと指を鳴らす音が聞こえる。
「グ、グリム様、もう一度どうぞ」
「あ、ありがとうございます 」
危ないところだった。心のライフポイントが0になるところだった。あの存在からターンをもぎとるとは、さすがルナ様出来る女神様である。気を取り直してもう一度だ。
一緒に行動し、足りないところを補いあい、頼りになる相棒、相棒……あれっなんか聞いたことあるメロディーが頭を掠めた。やばっ――思わず目を開く。
「一つ……、いいですか?」
「良くないですー!」
慌てて目を閉じ拒絶する。妙に腰が低くてティーポットが似合いそうな、中年の男性がいたよ。一つ答えようもんならあれよあれよと丸裸にされてしまいそうな威圧感があった。でもなんだろう、一つだけなら答えてもいいような……
――パチンとまた指を鳴らす音が聞こえた。
「こほん、グリム様。心を落ち着けてもう一度どうぞ」
「す、すいません」
慌てるな俺。相棒というキーワードは危険だ。もう少し具体的に想像しよう。補佐であり、頼りになり、一緒にいて堅苦しくない存在。なんでも肯定するのでなく意見してくれるようだといいな。
ゆっくりと目を開けるとそこには、6対の翼を携え、銀色の長髪をかきあげながらこちらを見つめる少女がいた。
目の前には美しい銀髪の少女が浮かんでいる。少し鋭い目つきをした金色の瞳でこちらを見つめてくる。背には、吸い込まれそうなほど漆黒の6対の翼。頭の上には光輪があり、真っ白なローブを着ているところを見ると、堕天使と言ったところなのだろうか。
「あんたが私を呼び出したのね?」
「えっと、多分俺が呼び出した……んですよね?」
思わずルナ様のほうを見て質問してしまった。ちょっと眼光鋭くないですかね。
「はい、グリム様の召喚で間違いありません。それにしても、堕天使が召喚されるとは思いませんでした」
うーん、あんまりよくないのかな。ルナ様の表情が複雑そうだ。ちょっと気の強そうな感じだしなぁ。でも俺が望んだからその通りに召喚されたはずなんだよな。流れ的に。とりあえず挨拶からだ。
「俺の名前はグリム、神様になったらしい人間だ」
「神が人間って名乗るなんてね。私はルシファーよ。あんたのことは好きに呼ばせてもらうわ。私のことも好きに呼ぶといいわ」
俺が名乗ると、銀髪の少女は少し驚いたような顔をしたあと、すぐに口元を緩めた。それにしてもルシファーね。結構偉い天使だった気がするぞ。
「わかった、ルシファーって呼ばせてもらうよ。よろしく」
握手をしようと手を差し出すと、ルシファーは更に驚いたような表情をしたあと、俺の目をじっと見つめてくる。ちょっと照れ臭いんですけど。
「あんたのほうが格は上なのよ? 態度に怒ったり命令したりしない訳?」
「えっ? そうなの? まぁ新人ならぬ新神ということでいいんじゃないかな」
「ふふっ、なによそれ、まっ、命令とかしようもんならばっくれようと思ってたけどね。気に入ったわ。よろしく」
可憐な見た目とは似つかわしくないほど力強く握手をすると、先程までの鋭い目つきはなくなり、柔らかい笑顔を向けてくれた。
「打ち解けることができたようで良かったです。グリム様、お互いに協力して、素晴らしい世界を創造してくださいね。」
名残惜しいがルナ様とはここまでのようだ。今後どんなタイミングで会えるのかはわからないが、ルナ様の負担にならないようしたいものだ。
「ありがとうございました。いずれまた。」
その他の細かい説明をルナ様から聞いた後、白い部屋に突然現れたドアに驚きつつも、俺たちは白い部屋を後にするのだった。