閑話 エルフとドワーフ
今一ルームには、ルシファーと俺と、何故かアウレがいる。ソールを呼んだはずなんだが、一体全体どうしたものか。
「どうしてアウレが?」
「パパからの伝言。呼ぶぐらいならそっちからこい。だって」
順調にパパって呼ばれてるようだ。お父さんって言ってたのは背伸びしてたんだな。
「それでわざわざ娘を寄こしたの? それにしても、神の代行者じゃなくてこれるなんて、依り代になったからその影響かしら?」
「だからって、小間使いみたいに娘を使うなよなぁ。エルフとの仲とか、製造について聞きたかったんだけどな」
「それならわたしが伝えられるよ?」
「おぉ、それはよかった。食べながら話そう」
俺は創造で、オレンジジュースとクッキーを創り出す。小さい子にはこれぐらいのほうがいいだろう。
「わぁ、これ美味しい。もらっていいの?」
「どうぞどうぞ、地上での腹は膨れないし、ここでしか食べれないけどね」
「むしろ、わたしにはそれがいいんだけどね。わたしも頂戴」
小さい子からお菓子を奪うなよ。ため息をつき、ルシファーの分も目の前に出しておく。
「製造に関しては、素材に意志を流し込んで、鎚とか型を使って成形することでおおむね上手くいってるよ」
「おおむねってことは問題が?」
「皮とか植物とか、元生き物だったものは難しいってパパが言ってた。鉱石も硬かったり、意志の流れ具合によって変わってくるって、魔法みたいに誰でも同じくおりてぃ? になる訳じゃないって言ってた」
技術力に左右されるってことか、それはまぁ想定内だな。ものづくりなんてそんなものだ。
「あと、この短剣どうなってんだ、神の炎でも溶けないし加工の仕様がないから分析もできねぇ、がっはっは。って言ってたよ」
「いきなり溶かそうとしてんのかよ。ほんと俺のこと嫌いだろ」
「後先考えないというか豪快というか、すごいわね」
「わたしはパパが楽しそうで嬉しいよ。あと、神様のこと嫌いじゃないと思う。嫌いな人に来いなんて言わないもん。お母さんと一緒にいられて幸せそうだよ。ありがとう神様」
それは良かった。元はと言えば俺が蒔いた種だからな。嫌われたりすることはなるべくしたくないものだ。豆腐メンタルだからね俺は。
そういえば、ちょっと険悪になりかけていた、エルフとの仲はどうなったろうか?
クッキーを食べながら話を続ける。やはりチョコチップクッキーが一番うまいな。
「エルフとは仲良くやってるか?」
「んーん、会うたびに神様に一番貢献してるのはこっちだーって言い合ってるよ。あっ、でも一人パパに弟子入りしてた」
「部下に恵まれて光栄だよ……それにしてもエルフの弟子?」
「あぁ、あの弓で援護させた若いエルフじゃないの?」
「なんでまたそいつが?」
「神に見捨てられただどうのって言ったのが、あいつよ。あの後ハクアにこっぴどく叱られて、森で右往左往してたらソールがあぁなって、飛び出してきたみたいね」
「罪悪感とかかな? 上手くやってるか?」
「パパと仲良く罵り合ってるよ!」
ものすごくいい笑顔ですごいことをサラッというなぁ。この子の将来が少し心配だ。ソール、ちょっとアウレが嫉妬してるっぽいぞ。それとなく伝えておこう。
アウレが地上へと帰っていった。一ルームに来る鍵がアウレの短剣らしく、ずっと握っていた。幼女が短剣忍ばせてるとか、ちょっと怖かったりする。特に嫉妬オーラの時とかね、若きエルフよ、背中を刺されないように祈っている。確か男だったのが救いだな。
「そういえばさ、ハクア最近こないな?」
「あー、この前の失敗が響いてるみたいね。ハーフエルフの件も知らされていなかったみたいで、ショックを受けていたわ。あらゆる情報が自分に回るように体制を見直してるみたいね。頑張ってるわよ。あの子」
アウレが残したクッキーにまで手を伸ばすなよ。仕事はできるんだけどなぁ。
「里ってそれぞれ独自に動いてるし、今回の件に関しては俺の指示が曖昧だったせいもあるんだけどな。今度こっちからいって慰めてやろうかな」
「それなら、あの子が依り代用の人形作ってるみたいだから、憑依してあげたら?」
「えっ? そんなもんつくってんの?」
「えぇ、可愛い可愛い依り代を作っていたわよ」
ルシファーがニヤつきながらこちらを見てくる。見たいような見たくないような人形だな。
「憑依して一日膝の上で撫でられてあげれば、一発で機嫌なんて治るわよ」
「それものすごく興味あるけど、行ってはいけない気がする」
すまんハクア。今度1ルームに来たら、美味しいお菓子を振舞うから勘弁してくれ。