閑話 少年の人形
俺たちは今、一ルームで休憩している。ただ今までと違うのは、ハクアもいることだ。どうやら神の代行者もここに来ることが出来るようだ。
急須からお茶を入れ、饅頭を食べながら談話している。初めの内は緊張していたハクアも、まったりしているうちに慣れたようだった。
「湯のみに入った状態でも出せるんでしょ? 面倒じゃないのそれ?」
「やっぱり急須から入れた方が美味しい気がするんだよね。これだけは譲れないよ」
「一手間かけると美味しい気がしますよね。あっおかわりどうぞ」
「ありがとー」
そうそう、ハクアはわかってらっしゃる。どこぞの駄天使はごろごろしているだけだが、ハクアなんてお茶を注いでくれるぞ。見習って欲しいものだ。
「そういえばさ、なんであんな格好になったの?」
「あー……」
「今思うと恥ずかしいです……」
ルシファーが言うのは村での変身のことだろう。
「俺は魔法を使えるようにって思ってさ、魔法使いを創造しようとおもったんだよ」
「ふんふん」
「でもハクアって少女って感じだったじゃん? ローブとか着たらダボダボだろうしなぁ~なんて悩んでたら、ふと魔法を使う少女=魔法少女ってよぎって」
「あぁなったと?」
「そうそう、その他の特性はハクアの願い通りって感じだったみたいだから安心したよ」
「もうあの格好は嫌ですよ?」
「わざわざ狙ってやったりしないよ。悪かったって」
つくづく俺の思い通りにならない世界だなって思う。ちょくちょく脇道にそれた思考に引っ張られすぎる気がするよ。
「あっ! でも!」
「ん? どうかしたか?」
「あの時に感じたグリム様は、やっぱりこの人形みたいでしたよ」
「ふーん、もしかしたらだけど、世界の意志側のあんたなんじゃないかしら?」
「神の意志と世界の意志って若干別物ってことか?」
「さぁ? そこまではわかんないけどさ。よく見てみると面影あるような気がするし、ひねくれてそうな顔してるじゃない?」
「ひどい言いようだな」
「えー、かわいいですよ」
言われて人形をまじまじと見てみると、悪ガキみたいな顔をしている気がする。まっ、ハクアの魔法少女かわいかったからよかったとするか。
「あっ、ほら、今人形とそっくりな顔してますよ」
「あはは、ほんとそっくり」
「まじか」
心なしか、人形まで笑っている気がした。