あの娘①
最近料理を作ることを始めたのですが、難しいですね。全部しょっぱいんです泣
見慣れた街並みに、見慣れた人。ルートを何度も確認して毎朝通る道。基本的にいつも一人で登下校しているけど、別に心細いなんて思っちゃあいない。むしろ、このにやけた顔を見られなくて済むので、大助かりなのだ。え?にやけるほどいいことがあったのかって?別にそういうわけではない。こうして一人で歩いていると、自然と自分の中で考えたりしてしまう。何をそんなに考えているかというと、あの娘のことを考えているのだ。
「今日はどんな風に話しかけようかなぁ♪」
どんな時でも私の中で笑ってい
るあの娘——上原佳奈は、同じクラスでいつも一緒にいる娘だ。私よりちょっとだけ背が高くて、ショートヘアに寝癖をつけていつもけらけらと笑っている。根っこはおとなしいけれど、天然すぎる受け答えが面白くって、私も一緒になって笑ってしまうのだ。ころころと変わる表情を思い浮かべてまた表情筋が緩む。
「ん〜〜〜〜♪」
ぱんぱんっ
この様子を第3者が見たら絶対に気持ち悪いと思われるだろう。分かってはいるんだけれどやめられないので、頑張って隠す。ほっぺを叩いて現実に戻す。そんなことを何回か繰り返していると、もう学校に着いてしまった。
教師をのぞいて見ると、私のクラス、1-Cはまだホームルームまで40分近くもあるのに既にたくさんのクラスメートがいた。その中の一人、佳奈の周りだけぽっかりと穴が空いているかのように、ぽつんと待っている。本を読んでいるみたい。とても幸せそうだ。読書の邪魔しちゃ悪いなぁと思いつつ、私はそーっと近づいて
「わっ!」
「ひきゃああああ!!!」
断末魔のような声で、後ろを振り返る佳奈。そんなにビビるか?これ。
「ちょっと!毎回毎回脅かさないでって言ってるよね⁈」
「いやあ、いつもいい反応をするから楽しくなっちゃって、つい」
「つい、じゃない〜〜!」
そう言って荒ぶる佳奈を静めるために、今日の話題を話し始める。
「そういえば、夏休みのあの日、オッケーもらえた?」
「うん!全然大丈夫!楽しみだなぁ、駅ビルの本屋巡り!」
さっきとは一変、ころっと態度が変わり、目をキラキラさせている。この切り替えの速さ、地味にすごい。
「当日の電車の時間とか、いろいろこっちで調べとくから。分かり次第伝えるね?」
「ありがとう!私あんまりそういうの得意じゃなくって、いつもからんがやってくれて………
ほんとごめんよ?」
「いいのいいの!私が好きでやってることだから、そんな気にしないで?」
「もう…………いつもありがと」
もうそれだけで得した気分。私は満面の笑みを浮かべて
「任せときっ!」
と言った。