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体育教師と平和な朝


ジリリリリリリリリリリリリリ


「………うぅ…………む………」


一人の女の子が目覚ましの鳴り響く場所、もといからんの寝ているベッドに近づいた。


リリリリリリリリリリリリリリ

リリリリリリリリリリリリリリ


「ああっ、もう!!」

耐え切れなくなったのか、からんの布団を引っぺがし、


バサバサバサバサッッ!


「………うぅ?………く、くるじぃ……」

「ほーらっ!起きて!目覚まし止めて!これ、うるっさいったらありゃしないんだから!」


甲高い声がした。薄く目を開けてみる。暗い。いつもなら、目がチカチカするくらいこの部屋から差し込む日光の量はハンパじゃないってのに。私の部屋は東側に位置していて、登ってくる太陽を真正面から受け止めている。洗濯物が乾きやすくていいのよねぇ、とかのんきに言ってた母親よ、何で今朝はこんなに暗いんだ?しかも布団の温もりとは違う、物理的な重さを感じるぞ?起きようと身じろぎをする。そう簡単には起きれなかった。あたふたしている私を見た女の子が一言。


「根性で起きろ!」


声の主———もとい我が妹、ゆらんは、体育教師みたいなことを言いやがった。彼女はお下げの似合う中学2年生であり、私とは二つ歳が離れているとはとうてい思えない背の高いやつで、何かと突っかかってくるのが日常茶飯事。朝はこうしていつも起こしてもらって——ない。普通に目覚ましで起きている(本当だぞ!)のだが、今日は勝手に私の布団を剥ぎに来襲したみたいだ。


「ほらっ、起きる!ぐずぐずしない!」

「分かった分かった!起きるから、私の布団バンバン叩かないで!埃が舞うか…ら……ほぁ………へっくしゅ!!」


バサッ!


くしゃみの反動で、私の上に乗っかっていたものが落ちた。


「………?」


私の漫画本である。何故ここに?確か、ベッドの近くにある棚の上に積んどいたんだけどなぁ。…………………あぁ、そーゆーことデスカ。私はベッドに漫画本をぶちまけた犯人(いもうと)をじとーっと見る。そいつは私のジト目に気がついたのか、聞いてもないのに、


「起きないから、その辺にあった漫画本の山を崩した」


ひょうひょうとそう答えやがった。実行するのに全く躊躇しないのかなぁ、おかしいなぁ。

朝ごはんできたよー、という母親の声が1階のリビングから聞こえてきた。とりあえずベッドから降り、リビングに向かう。ああ、そうそう、ゆらんならその間ずっとドヤ顔してたよ。まったく、妹なんてろくなもんじゃない。



———————————


リビングに向かうと、既に朝食が準備されていた。えーなになに?焼いたソーセージとごはんがホカホカ湯気を立てている。また、これデスカ……。そんな私の思いなんぞ露ほど知らない

母親、香奈枝(かなえ)は鼻歌を歌いながらお茶を入れていた。緩く巻いた髪の毛に、前髪を上げたよくいる専業主婦である。え?父親はいないのかって?いるのはいるけど、今の時期は外国で単身赴任中だ。去年はマレーシアで、一昨年はキプロス島で、今年は………まあ、どっかの国で仕事してると思う。


テーブルにつくと、つけっぱなしのテレビからニュースが流れてきた。それを右から左に流しつつ、ソーセージをかじる。もぐもぐしながら時計を見ると、6時を指していた。


「あんた、時間大丈夫なのー?」

「んー、たぶん」


そう言いつつも、自然と食べるスピードが上がる。今日必要なものを脳内で確認し、食べ終わったら即自分の部屋へ駆け込んだ。それからはあっという間さ。私の朝はここからが早い。ものの3分で制服を着こなし、教科書類をリュックに突っ込んで——6時5分、無事家を出る。ちらっと見上げた空は、今日の天気を映し出していた。どうやら晴れらしい。


私は、歩き出した。目的地は学校じゃあない。あの()に会いに、向かったんだ。





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