修行ばかりの天界、快楽ばかりの地獄界さあ・・選びなさい!
小さい頃から・・負け知らずだった。
幼稚園児から、高校3年の今に至るまで、だ。
ヤクザに捕まって、7回事務所を木っ端微塵にした。
誰も殺さなかったかっていうと・・正直・・分かんねえ・・殺っちまったかな?って思うやつはちらほらだ。
それで・・まあ・・仇討ち?っての?
それも片っ端から顔面骨折と、両手両足を徹底的に潰してたら・・まあ・・来なくなったな。
淋しいよ。
殺してた訳じゃなかったし・・そこが一番でかいのかもな・・。
ヤクザにも一目置かれるようになったっけ。
そんな時、殺し屋っぽいのに狙われた。
2人組でさ。
ねっとりした視線がうざかったから、街中でボッコボッコにしてやった。
すれ違い様にな。
殺し屋って喧嘩弱いって初めて知ったよ。
一方的に殺すだけだからかな?
まあいいや。
まあ、そんなこんなの俺だったのだが・・。
ダンプの遥か後ろ。
擦り傷だらけの泣き叫ぶ女の子。
タイヤにミンチにされ、グチャグチャの肉塊がダンプの5M後ろに転がっている。
俺でも流石に・・ダンプは無理だわなあ・・はは・・ひき肉ひき肉。 〈フヨフヨ〉
まあ・・どうなんのかねえ・・やっぱ地獄かねえ・・。
っち・・うるせえガキだな・・親はどうしたんだこのガキ・・野次馬もうるせえなあ・・はあ・・迎えはどうした?はよ来いってんだ〈ギャアギャア〉・・ん?・・・・んん?。
《ギャアギャア》女天使と男鬼が言い争っている。
鬼「こいつはコッチだろ?どう考えても!馬鹿か?はあああ?お馬鹿かああ?」
天使「いいえ、そうは行きません、彼は殺しをやってませんし、何より最期の善行!彼はコッチです!馬鹿はあなたでしょう?」
鬼「はああああ?最後だけな?最・期・だ・け!たった一つの良い行いで全てがチャラってか?ああ?馬~鹿!」
天使「一つではありません!彼は自分を殺しに来た者ですら、殺さなかった、真の勇者です!馬~鹿!」
鬼「はああ?殺すより質が悪いわボケ!一生モンの怪我じゃねえか!両目えぐったりしてんだぞ?」
天使「それは自業自得でしょう?彼に挑んだ時点で命の取り合いですから、むしろ本望でしょう?」
鬼「所業の話しをしてんだよ!ルールの話しですかコレ?はああん?」
天使「密接に関係しますねうんうん」
鬼「てえんめえええ!今日という今日は絶対に許さん!殺す!」
天使「はあ?私が勝つに決まってるでしょう?今回もこの者の善のパラメーターは相当なモノですよ?」
鬼「はっはあ!ところが今回は悪のパラメーターの方が多そうだぜ?」
天使「はあ?んなお馬鹿なーー」 目が合った。
彼「ん?」
天使の目にデータが映る。
〈ピピピピ〉 悪のパラメーターが多い。
天使「んなあああ?」
彼「おおう?」
天使「何故ええ?〈ガシッ!〉」 空から降りてきて、彼の肩を掴んだ。
天使「貴方は良い事をしたじゃないですか!誇りに思って良いのですよ?素晴らしい自己犠牲でした!感動しました!良き行いをしたのですよ?」
彼「・・は?」
天使「・・・は?」
鬼「はっはっはっは、無駄無駄あ!その男はそのくらいでチャラになるなんて思っちゃいねえさ!罪悪感の塊だぜえ!諦めな!」
天使「うるさい!・・聞いてもいい?・・何故天使側に来ないのです?何故誇りに思わないのですか?」
彼「・・つか・・あんたら誰?」
天使「ええええええ?流れ的に天使でしょおおお?普通分かるよ?常識だよ?お迎えだよ?天使だよ?天使でしょうどう見たって!?ほら!輪っか輪っか!頭に輪っか!ほら、白い羽も!ほらほら!」
彼「・・んじゃあ・・そっちは・・悪魔?」
鬼「おう!まあ、悪魔じゃないが・・地獄へ案内する鬼だ!宜しくな!」
彼「・・普通三途の川とか・・」
天使「ああ・・それは・・・・」
鬼「それは・・だな・・」
彼「?・・何だよ?」
天使「・・いやあ・・」
鬼「・・なあ?」
天使「うん」
鬼「ねえ?」
天使「言いにくいなあ・・」
鬼「う~ん・・言いにくいなあ・・」
彼「仲良いのか悪いのかはっきりしろ」
天使、鬼『誰がこいつなんかと!』
彼「あ~はいはい、んで?続きは?」
天使「・・あ~・・天使になりたい?鬼になりたい?」
彼「・・は?」
鬼「お前はもう人を捨てただろ?」
彼「・・はあ?」
天使「そう、貴方は確かに捨てた、捨てなければ生きられなかった」
彼「・・」
鬼「んで?どっち?今は若干悪が多いがー・・何か不安定だよなあ・・これじゃあ持ち帰ってもなあ・・」
彼「・・」
天使「・・」
鬼「・・」
彼「鬼になったら?・・どうなる?」
鬼「毎日、違う女と・・まあ・・男もでもいいが・・SEXと喧嘩、殺し合い、金の奪い合い、あと~・・肉も旨いぞ~っはっはっはっは」
彼「天使は?」
天使「毎日歌にダンスにお菓子に、お茶に、野菜に・・あと~・・たった一人ならSEXも許可されてます」
彼「天使は他には?」
天使「え?」
彼「他には?ないのか?」
鬼「は~っはっはっはっはっは、そ、くっくっくそりゃなあっくっくっく、退屈そうだもんなあ!はっは」
天使「そ、そんな事!」
鬼「いいや!絶対退屈だあ!あっはっはっはっは・・なあ?」
彼「・・ああ・・他には?」
天使「・・他・・他・・あ!色んな世界の仕組みについて学び、大天使様を目指せます!」
鬼「こっちだって!快楽の追及を学び、大悪鬼を目指せるんだぜえ?」
天使「ふん!大悪鬼?そんなもの、大天使様にかかればちょちょいよ!」
鬼「まあ、そりゃあそうだが、でも大天使は遥か高みだぜ?お前も会った事ねえだろうが?」
天使「うぐ!?」
鬼「それに比べたら、部下思いで優しいお方だぜ?大悪鬼様はよ?大天使なんか全然だぜ?自分の高みの事ばっかりでさあ、広い世界の面倒ばっかりで、全然下々の奴には目もくれないんだぜ?全く酷い奴だよお」
天使「そ、それは・・あ、あんまりにもお忙しくて・・」
鬼「へえ?お忙しいとこ・・見た事あんのか?ああん?」
天使「・・ない・・です・・けど!信じてます!絶対さぼったりしないお人です!」
鬼「騙されてんだって何度言っても・・こいつらは聞きゃしねえ」 肩をすくめる。
天使「絶対に・・だから・・」
彼「勉強以外に・・何かないの?空飛べるとか・・この世に自由に行き来が出来るとか・・」
天使「・・現世に・・行き来出来るのは・・その・・勉強しなきゃ・・資格がいるんです・・」
鬼「鬼の世界はそんなのいらんね~っはっはっは、好きに行き来できっし、やりたい放題だぜ?はっは」
天使「鬼はモラルがないのだから当然です!コッチはモラルを勉強して、研修をして、資格をー」
彼「もういい」
鬼「お?」
天使「も・・もういい・・とは?」
彼「・・決めた」
鬼「そうか、そうか、んじゃはよ行こうや!コッチだ!〈スイ~〉」
天使「とほほ~・・また天使長様に怒られる~・・」
彼「天使、よろしく」
鬼、天使『・・・・・・』
彼「・・さ、早く案内してくれ?」
天使「・・今・・なんと?」
彼「ん?天使になる」
鬼「ふっはっはっはっは、面白い!ギャグのセンスあんなあ・・お前~あっはっはっはっは!」
彼「・・だいたいさ・・お前さっきから気に入らないんだよな」 鬼を指差す。
鬼「・・あ?〈ピキ〉」
彼「お前偉そう・・潰したくなるから黙ってろ・・〈オオオオ〉」
鬼「・・人間・・っくっくっく・・人間如きが・・俺に・・ふっくっくっく」 体が一気にでかく。
まさに。
〈オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ〉
「鬼」の姿。
彼「・・な・・う・・嘘だろ?」
鬼「・・あ~あ・・」〈ボゴオ!〉
彼の腹に拳。
彼「うっほお!?〈メキイ〉」 悶える。
鬼「ほらほら?どうしたのお?よちよちいい子でしゅね~〈さわさわなでなで〉」 顔、頭を優しく撫でる。
天使「・・」
彼「・・て、天使・・何して・・」
天使「え?何って・・戦う貴方を見ているのですが?」
彼「・・は?〈ドゴオ!〉おっはああ!?」 もう一発同じ箇所に拳。
鬼「お~よちよちいい子いい子~・・あはあ♡〈なでなでさわさわ〉」
彼「うっごおはあ・・な・・何で・・」
鬼「ひゃはあ・・何で~?・・優しく優しく案内してやって、まずはいたぶっていたぶっていたぶって、火に炙ってえ、それから、お酒に100年漬けて、それからそれから、何度も女鬼達のおもちゃにした後、男鬼達のおもちゃにしてえええああああああ!ひゃっはああああああああ!!それからそれからあああああああでひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」
天使「・・」 黙って見ている。
彼「お・・俺は・・お前を・・選ん・・」
天使「いいえ」
彼「・・え?」
天使「貴方は鬼を選びました」
鬼「いひひひひひ、ああああああああ~・・たまらんわあああ・・いひひひひひひひ、早くお前の出汁の酒を飲みたくて飲みたくてえええええええいひひひひひひひひひひはははははははははははははは〈ドゴ、ドゴオオドゴオ〉」
彼「うっぐ!、ごっは!うっほええええ・・う・・うう・・な・・なんでええ?」
天使「貴方は戦いを選びました」
彼「ハ!?」
{ 彼「お前偉そう・・潰したくなるから黙ってろ・・〈オオオオ〉」 }
彼「い・・いや・・あれは・・」
天使「貴方は戦いを好みました、残念です、地獄に行って、思う存分鬼の修行に励みなさい」
彼「・・な・・ゲホ・・何だよ・・んじゃどうしろって・・」
鬼「ごちゃごちゃうるせえんだよおおおおお、お前はもう、コッチなの!分かるのお?はははは」
〈ギイイイイイ・・〉 地獄の扉が開くー。
彼「・・い・・いやだ・・」
天使「・・」
鬼「い、いや・・いやだ・・ぎゃあ~~~っはっはっはっはっはっはっはあああああき、気色悪いい、まじウケるんですけどおおお!カッコ悪いいいい、気持ち悪いいいい、だっせええええええええぎゃはははははは」
彼「ちっくしょう、ちっくしょおおおおお〈バシ〉」 鬼顔にパンチ。
鬼「・・そう~〈ボゴオオ!〉」
彼「がは!」
鬼「その調子~♡〈ゴキイ!〉」腕が折れた。
彼「うぎゃあああああああ!?」
鬼「大丈夫、大丈夫~、血の池に着けときゃ一瞬で治るからそんなの~・・ひはははははは、んだからん♡」
〈ズ〉腹に爪を突き刺しー〈ズボロロロロオォォ〉腸を引き出した。
彼「あぎゃあああああああああああああああああああああ!?」
鬼「さあ~いきまちょうねえええ♡、戦いの楽園へ♡、大丈夫、君も私みたいに強くなれるなれる♡〈ギイ・・〉」 扉が閉まるー。
彼「助けて・・〈イイイ〉」肩にからわれながら、天使に手を伸ばす。
天使「・・」
彼「助けて!神様ああああああああああ!〈ブワ〉」善のパラメータがほぼ全開。
鬼「な!?」
天使「よくぞ〈チキ〉」 大きい両刃ソード。
鬼「いや待て待てええええええええええ」
天使「まだ閉まってー・・〈シュイン〉ない!」 扉ごと鬼が切られた。
鬼「糞たっれえええええええええええぇぇぇェェォォォォ・・」〈シュオオオオオオオオ・・〉
彼「うっぐ・・ひっぐひっぐ・・うっぐ・・んん”~・・」 初めて泣いた。
彼「あ”・・あ”あ”あ”あ”・・う”あ”あ”あ”あ”あ”」
天使「よしよし、いい子・・いい子です〈シュヒイイイイイ〉」 優しく抱きしめながら、ヒーリング。
彼「あ・・治っていく?・・あ・・お・・おおおお・・治って・・おお・・」
天使「えっへん!どうですかあ?凄いでしょう?」
彼「拷問が嫌だっただけだ・・なのに・・何で助けた?」
天使「貴方は最後の最後で戦いではなく、救いを求めました、プライドを捨て、恥も捨て、一心に神に救いを・・言葉にしてね・・だから助けますよ!当然でしょう?」
彼「・・言葉にしないと・・駄目なのか?」
天使「言葉にしなきゃいけないと思うのは恥です、プライドです、そこを自力で声に出し、求める事で、神様の下僕となるのです」
彼「・・下僕・・」
天使「鬼の下僕が良かったですか?」
彼「・・〈ブンブン〉」 首を振る。
天使「さあ・・参りましょう・・貴方はもう人には生まれ変われませんが・・新たな課題に取り組む機会を得たのです〈ギイイイイイ〉」 天界への扉が開くー。
彼「・・俺は・・最強だって思ってた・・」
天使「そうですか〈ニコ〉」
彼「・・っくっくっく・・そ・・そうですか・・って・・あ~っはっはっはっはっは!そんなレベルかあ!あ~っはっはっはっはっは」
天使「ふふ、おかしな方ですね、さあ、参りましょう、天使長様はあの鬼より怖いんですから、決して怒らせないようにしてください?」
彼「ええええ?」
天使「大丈夫ですよ、滅多な事ではキレませんから、くどくど長い説教は多いですが・・」
彼「・・こっちは・・楽しいのか?」
天使「はい!やりがいがあります!多くの人間を善に導くのが我らの努めです!」
中に入り、扉が閉まった。
そこはー・・。
彼「お・・おおお・・うおおおおおお・・」
雲から湧き上がる泉。
巨大雲から溢れ出る滝。
虹がいたる場所に見え、大きな建物が乱立している。
現実世界の町並みが雲の上に広がっている。
皆、背中に白い羽が生えていて、忙しそうに荷物?木箱を運んだり、書類を運んだり、小さい天使達に先生らしき者が黒板で何かを教えている。
彼「おおおお・・す・・すげええ・・」
天使「さ・・あの一番大きな建物です、貴方はこれから天使見習いなのですから、自覚を持って、日々精進精進です!」
彼「・・あのさ」抱っこされながら聞く。
天使「はい?」
彼「胸・・当たってるんだけど?」
天使「それが?」
彼「・・〈そーー〉」
天使「あ、相棒以外の性的接触は死刑ですからお忘れなく」
彼「・・」 止めた。
〈ビュオオオオオオオオオオオオオ〉天使は速かった。
彼「うおおお・・っほっほおお・・はやあああ・・」
天使「ふふ・・時機に貴方も生えてきますよ・・背中に羽」
彼「えええ?生えてくんの?」
天使「はい、勿論です!ふふ」
彼「ふへええ」
屋上。
天使〈スタ〉
彼〈スタ〉
〈バババババババババババババ〉滝の音が煩い。
天使長「来たか・・任務ご苦労」 若い眼鏡男性。
白いフード姿。
天使の輪っかと、背中に真っ白な綺麗な羽。
迎えの女天使よりも立派な羽だと分かる。
女天使はすっと跪いた。
女天使「は!ただいま戻りました」
彼「・・」 跪いた。
天使長「・・ふむ・・よく理解しているな・・よかろう・・許可する、修練に励むが良い」 去った。
女天使「いやったああ!」 抱きつかれた。
彼「むぎゅうう・・(これで我慢・・地獄だあ・・)」
女天使「あ・・それから、自分の心の状態は羽に現れますからね?あんまり羽が汚くなると追放か、地獄に落とされますから、気をつけてください?」
彼「・・お・・おう〈ゴン!〉いつううう!?」げんこつ。
女天使「ここではアヤンベル様とお呼びなさい、私はあなたよりずううと偉いのですよ?全く」
彼「うう・・はい、分かりましたアヤンベル様」
アヤンベル「それから、ここの女性天使達には、それぞれ相棒がいる天使と、まだいない天使が区別出来るよう、指輪をはめています」
彼「指輪・・」
アヤンベル「はい、これです〈キラ〉」 指輪が左手薬指に。
彼「おお」
アヤンベル「この指輪を自己紹介の時に見せる習わしです、その仕草がなければまだいないという事です、振られたら、次の相手を探しなさい」
彼「はい」
アヤンベル「ただし!無理やりや、ストーカー、嫌がらせ等などは、結構きっつういお仕置きが待ってますから、くれぐれも間違いは犯さぬように、いいですね?」
彼「・・はい」
アヤンベル「貴方の勉強は、今に別の遣いが、・・では、私はこれで、次のお迎えに行かなくては〈バサアア〉」羽を広げる。
彼「あ、あの!」
アヤンベル「ん?」
彼「・・その・・あ、ありがとうございました!」
アヤンベル「・・ふふ・・今貴方は成長しました、その調子で精進なさい!」〈ビュフォ!・バサ・・バサ〉
行ってしまった。
彼「・・ふう・・さって・・遣いとやらは・・」 辺りを見回す。
お爺ちゃんしか居ない。
彼「・・」 気付かないフリして探し続ける。
爺い「儂じゃ儂!見えておろうが!」
彼「〈ドヨーン〉」 あからさまにがっかり。
爺い「むか!〈チュドオオオオン〉」 雷撃。
彼「いいいいい!?ばばばばばばばばばばばば・・あ・・あっへ・・〈ドサア〉」
爺い「・・〈シュヒイイイイイイ〉」 ヒールで回復。
彼「かっは!?〈ガバア〉」起き上がった。
爺い「ほれ、行くぞ〈コツコツ〉」杖をつき、歩く。
彼「・・」 呆然と座って爺いを見る。
爺い「なんじゃい!?はよせんか!」
彼「・・へへ!~~~~~~く~~~~・・やっぱコッチの方が・・面白いんじゃねえの?はは!」
爺いに駆け寄って行く。
〈END〉