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エピソード1

「マスター!」

「マスターー!!」

「マースーターーーーーーーー!!」


声が聞こえた。

聞き覚えのある声が俺を呼んでいる。

俺は意識がもうろうとしており、その声に返事をしなかった。

いやこの場でするべきだったのであろう、後にあんな目に合うとは・・・

しかし、俺の体はピクリとも動かなかった。


「こうなったら、仕方がない」

「コレとコレと後コレもいいかな~♪」


俺はこの時まったく気付かなかった。

我が身に危機が迫っていることを。


「コレだけあれば十分よね~♪」


声の主が何か言っているぞ。

俺の体よ、いったいどうしてしまったんだ!

このままではとんでもない事になるぞ!

動け!動け!動け!動け!動け!動くのだ~!!

と第三者の俺が叫んでいる。

だがそんな声はまったく俺に聞こえるはずもなく

俺は動こうとしなかった。


「いっくよー♪せーの!」

「おきろーーーーーー!!!」


ドカドカドカドカドカドカ!!


「いっっってェーーーーーーーーーーーーーーーー!」


いきなり激痛が俺の顔を襲った。


「おはようございます、マスター♪」


涙目を開くと、そこには15cm程の大きさの人(?)

が背中の羽をパタパタと羽ばたかせて宙に浮いていた。


「なかなか起きなかったので、最終手段を取られて頂きました♪」


15cmの人(?)が早朝に見るには、もったいない程の

とびきり可愛い笑顔で俺に話かけてきた。


まるで全てが許されるような、笑顔だ。

心からそう思える。

だが俺は、周りを確認するとなにが起こったが理解できた。

と同時に怒りの感情が湧きあがってきた。


「いきなりなにするんだー!」

「目覚まし代わりに、本を10冊も顔面に投げてくる奴がいるかー!」

「マスター惜しい!残念ながら11冊です!」

「んなことは、どうでもいいわーー!」


俺の朝はほぼ毎日コレである。

本であったり、CDであったり、プラモであったり

飛んでくる物は日によって色々である。


「フィー、頼むから普通に起こしてくれよ・・・」

「そんなことよりマスター時間、時間」

「あ・・やべ・・・」


急がないと、遅刻してしまう時間だった。


俺は、如月修也(きさらぎ しゅうや) 高校二年生である。

そしてこの15cmの人(?)は、人では無い。

信じて貰えるとは思えないが、絵本とかによくご登場するあの妖精である。

名前はフィーリア

いつも好き勝手の困った奴だ。

ちなみに、俺は小学生の時に両親をとある理由で亡くして親戚の家に引き取られた。

中学卒業までは、同居していたが高校入学と同時に一人暮らしを始めた。

親戚と言えどいつまでも、おんぶにだっこと言う訳にはいかない別に親戚と仲が悪いわけではなく、自分の意思でそうしたかったからだ。

親の遺産については、今は親戚の人が管理しているが、俺が大人になってから全て俺が受け取ることになっているらしい。

俺の親はかなり貯蓄があったらしく、高校の学費はそこから出している。

生活費についても、親の貯蓄から仕送りを親戚の人が送ってくれるが、少しでも将来の為に貯蓄を残そうとしているので今はバイトをしている。

贅沢ができるわけではないが、そこまでお金に困ってはいない、むしろ少しは余裕がある方だ。

つまり俺は、それなりに充実した高校生ライフを満喫している。

いや・・・していた・・・あいつが現れるまでは・・・


「マスター、朝食は何にしますか?腕によりをかけてフィー特製のハンバーグを作りましょうか?」

「時間が無いからいらないよ、つか朝からハンバーグってヘビィ過ぎるだろ!?」

「大丈夫です!マスターの狂人的な胃袋ならいつ何を食べてもオールOKです!!」

「おまえ、俺のことなんだと思ってんの!?」

「朝食がいやだと言うのであれば、しかたがないので特製ハンバーグは夕食にしましょうか?」

「いや、やめて!?おまえ台所に立つとロクな事がないから!!」

「マスターひどいな~、まるで料理が下手みたいな言い草じゃないですか~?」

「下手どころか、おまえのは、料理と言うか化学実験じゃねーか!?この前もスプリンクラーが発動して大変だったんだぞ!大家さんにどれほど怒られたことか・・・」

「あれはちょっと精気法の力加減をですね~・・・」


聞きなれない言葉がでてきたが、フィーリアは妖精だからか精気法と言うものが使える。

まぁ魔法みたいなものだ、普段は、フィーリア自身が空を飛んだり、何かを浮かせたりに使っているらしい、朝の一件も精気法によるものだ。

他にもいろいろ使えるみたいだが、あいにく俺はファンタジーにそこまで興味がない、精気法の根源は全ての生命の自然に排出されるマナがどうたらこうたらとか言っていたが、もう覚えてすらいない。

外にはこの情報を漏らさないようにしている、面倒事になるのがゴメンだからだ。


「じゃー、いってくる」


俺は用意をすませ玄関に向かう。


「何かあったら直ぐに連絡しろよ!電話の使い方は分かるだろ?」

「任せて下さいマスター!家の警護はフィーがいればバッチリです!」


フィーリアはそう言うと、空色のショートヘアをなびかせながら、これでもかと言わんばかりにエメラルドカラーの大きな瞳でウィンクする。


「いや、おまえがいるから心配なんだよ・・・」

「いってらっしゃいませー♪」


飛びっきりの笑顔で見送ってくれる、それを見ただけでも今日一日頑張ろうって気持ちになるが実際のところは心配である、複雑な心境で俺はマイホームである格安アパートから出発した。


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