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エイダと召喚獣

前回のあらすじ

エイダは詐欺られやすい人間だった。

「召喚獣ってどんなのがいるんだ?」


「私のでよければお見せしますよ」


 エイダが見せてくれようとする。

 個人的に、エイダの召喚獣って聞くだけで嫌な予感がしてしまう。

 彼女のことだ、えげつなさそうなモンスターを召喚するに違いない。

 どうせ見るんだったら、イメージ的に可愛らしい召喚獣を召喚しそうなアイリにお願いしたい。


「あのう…」


「アイリは召喚獣持ってないのか?」


「自分は契約魔法が使えるほどの適性がないので、持ってないっす」


「そっか。適性とかあるんだ」


 適性が俺にもあれば、いつかは契約とかしてみたいものだ。


「あ、でも仮契約なら誰でも出来るっすよ!」


 そうか、それなら安心だ。


「あの、ソーマさん。どうして無視するんですか?」


 どうやら、誤魔化しきれなかったようだ。

 それでも、召喚獣に興味はあるしなあ…。


「ちなみに、どんなのなんだ?」


 俺は恐る恐る聞いてみる。

 どこか、俺が怯えていると気づいたエイダは少し笑っていた。


「そんなに怖くないですよ~。折角ですし、私も信頼をおいているモンスターを召喚しますね。ミノタウロスのウロス君です!」


 ミノタウロスっていうと、確か牛の頭に人の体の怪物っていうイメージだな。

 ウロス君なんて可愛く言ってるけど、絶対にいかついよな。

 まさか、ショタッ子ミノタウロスなのか?


「来て下さい、ウロス君!」


 俺が考えているうちに、エイダが召喚を始める。

 その言葉の後に、エイダが何やらブツブツと呪文のようなものを唱え始める。

 リン曰く、雰囲気がそれっぽくなるだけで召喚には全く関係ないらしい。

 関係ないのかよ…。

 すぐに、エイダの目の前に光の粒が集まり何かのシルエットとなる。

 そして、一際大きく光ると、中から恐らくウロス君であろう物体が現れる。


 こんがりと焼けた肌と筋骨隆々な体に牛柄のジャケットを羽織り、サングラスに鼻ピアスそしてスキンヘッドの強面のおじさんが立っていた。

 俺の世界的に例えるならば、やで始まる自営業っぽい風貌のおじさんだ。

 というか、牛要素が申し訳程度のジャケットしかねえ。

 いきなり、強面のおじさんが目の前に現れたのだ、俺はひどく動揺してしまう。


「あ、ウロス君は茶色い牛の系統のミノタウロスなんです」


 いやいやいや、絶対そのフォロー要らないよね!?

 ていうかその茶色明らかに日焼けだよね?

 俺がさらに動揺していると、おもむろにウロス君が喋り始める。


「おい、エイダ嬢。ウロス君ってなんだ?"さん"付けにしろっていつも言ってんだろ?」


「あ、あの、ごめんね。怒らないで?今度から気を付けるから…」


 エイダさん弱っ。

 主従関係とか信頼関係どこいったんだよ?


「…ッチ。まあいい。で、こんな朝っぱらから何の用事だ?」


「あの、うちに新しい人が別の世界から来たから召喚獣の説明もかねて、挨拶してもらおうかなー…なんて…」


「俺を呼び出したからには、金はあるんだろうな?先ずは金を出せ。話はそれからだ。」


「ごめんなさい…。今はそんなにお金無いの。次までに用意するから今回だけでも…」


 おいおい、流石にウロス君は態度悪すぎだろ。

 これのどこが信頼出来るって言うんだよ。

 そう思った俺はウロス君にそれを言おうとする。

 けれども、エイダに止められてしまう。


「いいの、ソーマ君。私がお金さえ用意すれば、ウロス君はどんなときでも助けてくれる優しい方で、スッゴい信用出来るのよ。」


 そりゃ、ある意味信頼出来るけどさ…。

 お金だけの関係を俺は信頼なんて呼びたくない。

 というか、完全にダメ男に貢ぐ女性の構図だよな。

 なんだか、俺は更に腹が立ってしまう。

 すると、アイリが立ち上がりウロス君に話しかける。


「ウロスおじちゃん、ミルク飴下さい!」


 止めるんだ、アイリ。

 法外な値段を請求されるか、ボコボコにされるぞ!

 俺は先程までのイメージからか、最悪な展開しか読めなかった。


「アイリちゃんは、それ好きだなあ。ほら、飴ちゃんだ。味わって食べるんだぞ?」


 いやいやいや、態度変わりすぎだろ。

 これじゃ、子供好きな親戚の叔父さんにしか見えないぞ。


「ウロスよ、そろそろ自己紹介したらどうじゃ?」


「姐さんがそういうんでしたら」


 リンの方が立場上なのかよ。


「俺の名前はウロスだ。気軽にウロス君って呼んでくれ。特技は肉弾戦、好物は牛タンだ」


 共食いじゃねーか。

 しかも、ウロス君呼びでいいのかよ。

 エイダが少し不憫になってしまう。


「…じゃ、じゃあ私もウロス君呼びで…」


 しかし、エイダの頼みは「あ゛ぁ?」という一言で一蹴されてしまう。

 エイダはよく見ると涙目で震えてる。

 エイダ可哀想すぎる…。

 そろそろ帰るか、とウロス君が言ったかとおもったら、俺の方へとずんずんと近づいてくる。

 ちょ、やめ、怖いって。


「……あんた、雰囲気とか先代に似てるな」


 え?

 俺の予想に反してウロス君はおれにしか聞こえない声で話し掛けてくる。


「エイダ嬢はどこか抜けてるが、悪いやつじゃねえ。天然で毒も吐くけど、嫌いにならず仲良くしてやってくれ」


 そう呟いて、俺にもアイリにあげた物と同じ飴をコソッと渡してきた。

 あれ、この人実はいい人なのか?

 そして、ウロス君はスッとどこかに消えてしまう。

  イマイチ、いい人なのか分からないな。


「ウロス君がエイダからお金を巻き上げるのは、エイダの浪費癖故なのじゃ。エイダがお金を持っていては、直ぐに全額溶かしてしまうからとあやつは、エイダからもらったお金を全てエイダのために貯めておるんじゃよ」


 コソッとリンが教えてくれる。

 って、ウロス君めっちゃいい人じゃん。


 因みに、ウロス君がくれた飴はとっても美味しかった。

 リンが、「ウロス君の特濃ミルク」とか言ったせいで途中で食欲を失ってしまったが…。

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