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第七話 夜が明ける空。



 プレイヤーと運営の共同戦線。

 つまり、前例のないゲーム攻略といっても過言ではない。

 運営が指示をし、そしてプレイヤーが安全に攻略する。だが、現実はそうもうまくいかない。実際あなた方に携帯電話を通じてデュエットを歌ってみてください並にうまくいかない。

 今は夜遅く、とはいっても10時ほど。町は少しずつ活気を取り戻している。ログアウトできないというショックから少しずつ立ち直ろうとしている。

 日は沈み、月はのぼり、そして空に浮かんだ月は満月からわずかに欠けた十六夜の月が頭上に広がっている。

 これからまた少しずつ町は寝静まり太陽とともに失った活気を取り戻す。

 普段感傷的な僕は今は、普段以上に感傷的だ。こんな作り物の世界のものでも美しいと感じられるほどに。

 僕は『拳闘士』になった。明日からまた、レベルを上げ熟練度を上げることだろう。あ、明日は多少無理してでも先輩にアイテムを持っていかなくては。自分のほうがあとに『拳闘士』になったのだから差し入れを持って行きたい。


 今は、町には泊まる場所のないプレイヤーであふれている。

 MMOでも半分リアルなこの世界では部屋数∞なんてことはない。ちゃんと寝るときは布団やベッドで寝るし、風呂に入ることだってある。染み付いた習慣というのは中々取れないのと同じだ。

 今は深夜11時半、もうすぐこの世界での一日が終わる。そして現実での1分が終わる。

 明日からはこのエリアを攻略し、運営が新しくマップを作り少しずつ設定されているラスボスに近づいていく。

 まあMMOなのでラスボスといわれてもいまいちしっくりこない。

 とりあえず今日はどうやって時間をつぶそうか。

 一応ほとんど現実では時間がたっていないとはいえこの世界では感覚が引き伸ばされている。なので眠い。とてつもなく眠い。

 でも、部屋が確保できていない。誰かのこの世界に友達がいればよかったのだけれど、残念ながらいない。ゲームに興味を持つ友達が僕のクラスにはあまりいない。このあとのプレイヤーのログインは望めないしな。

 それにしても、ウイルスジャックってどういうことだろう。ハッキングだろうか。それともバグがウイルス化したのだろうか。どちらにしろ恐ろしい。

 とにかく、『拳闘士』の動きになれておくことも重要だろう。

 少し町の中で動き回ってみよう。

 思いっきりジャンプしてみる。

 結構高く飛ぶんだな。人一人は余裕で飛び越えることができそうだ。

 次は、パンチ。

 ブゥン!

 リアルとは比較にならないほど重みとスピードのあるパンチが繰り出された。なるほど。この感覚はやっぱり気持ちがいい。武器が壊れた直後の戦闘は半分生きた心地がしなかったからな。感覚なんてほとんど覚えていない。覚えているのは楽しかったということだけ。

 これから休憩しようかというときに声をかけられた。


「よお、坊主。少し飲まねえか?」


 その言葉に僕は二つ返事で


「はい、お願いします」


 なんかよく分からんが誘われてしまった。どちらにしろ長い夜。誰かと過ごしていないと寂しい。つまり渡りに船。

 急展開?飛ばしたんだよ。


「それにしても、坊主。俺たちは災難だな」

「そうですね。こんなことになるだなんて夢にも思いませんでしたしね」

「坊主、名前は?」

「トウマです。おじさんは?」

「俺は、尺八だ。ほら、楽器の」

「ああ、尺八さんですか。覚えておきます」


 そして僕と尺八さんはグラスを打ちつける。

 え?未成年?馬鹿、ここはゲームだぞ?酒の味は再現されているけれどアルコールなんてものは入ってないぞ。


「ぷはあ!うめえ!」

「うえっ………苦い………」


 親にのん兵衛になるといわれた僕。将来酒の味が分からないことで下戸になりそうだ。


「まあ、坊主にはそうだろうよ。大人になれば分かるさ」

「そういうモンでしょうか?」


 苦笑を浮かべつつ僕は尺八さんに返事する。


「そういえばどうして僕を誘ったんですか?他にもたくさん大人の人がいるのに」

「いやなあ。お前ボッチだろうなと思って」

「余計なお世話です」

「俺もな、ボッチなんだよ」

「友達になってください」

「いきなりはええよ」


 ハッ、つい条件反射で。友達がいないとなると友達になりたくなる。どうやら僕はお人よしのようだ。その僕にも友達がいないという事実。


「俺さ、お前を見てるとな。思うんだよ」

「えっ……………」



「―――――とことん憐れで可哀想で、惨めで見てらんねーっていうかよ…………」


 こいつ殺す。



 ドンガラガシャーン。

 尺八さんをひっくり返し、僕は酒場をあとにする。なんだろう、同じボッチでもそこまで哀れで惨めで可哀想じゃないぞ。というかあれ冗談だったのではないか?うわぁ、やばい。嫌われたかも。フレンド登録ぐらいしておけばよかった。


 今日はとりあえず、その辺で寝ることにしよう。

「おーい…お前、生きてるか?起きろ!」


 人の快眠を邪魔するやつは誰だ。


「やっと起きたか。お前、誰だ?」

「うう?」


 目を覚ますとまだ薄暗い夜の闇。路地で寝ている僕の前に現れたのは、なんとも黒い服装をした忍者みたいなやつだった。見た目の歳は僕と同じくらい。15、6といったくらいか。


「ああ?何?生きてるよ。モンスターが町に攻めてきた?」

「いや、違えよ……。あまりにも静かに死人のように眠りこくってたもんだから、本当に寝ているのかと思ってな。まあ起きてるならいいや」

「君は?」

「かわだ。職業は忍者だ。よろしく」

「忍者って?盗賊の上位職の?マジで?」

「マジだよ。このゲームにログインしたのはいいんだけど友達が見つからなくてな。で、今探してるわけよ」

「ほう、どういう友達か分からないけれど君の友達はまともじゃなさそうだね」

「ご名答だよ。俺のゲーム友達は一人は中二病、一人は天邪鬼って言う変わり者だ。中二病のほうはまあ比較的まともだよ。でも最近中二病こじらせたしな。すこしあれかもしれない」

「ふーん………。まあ、見つけたら報告するからフレンド登録してよ。ふあーあ」

「あ?んん、分かった。じゃあ、ほれよ」


 すると目の前に『かわさんからフレンド登録の申請が来ました。承認しますか?』というタブが現れたので僕はそれを承認して、かわに向き直る。


「その人たちの名前は?」

「そいつらは鎌田とポロロッカっていうんだ。普段は鎌とポロって呼んでるから」

「へえ……」


 再びうつらうつらしてくる。ふあー。眠い。


「じゃあな」


「じゃあ、………ね」


 その言葉を最後に僕は再び眠りに落ちた。


 この小説はたまに私のテンションがおかしくなったりすることで面白くなくなることがあると思いますがご了承ください。

 あと、シリアスは好きですが書くのはそこまでうまくないのですみません。

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