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第三十五話 アンデッドプレイヤー

 今回から短くなります。

 だいぶん。

 この話は、「なりゆき勇者」が始まってから書かれたものなので、もしかしたら、文体があっちと似ているかもしれません。

――――――


 目が覚めると別の意味で見慣れた天井だった。

 自宅の天井ではなく、別の場所。

 少なくとも病院ではない。

 そこまで考えたところで意識が完全に覚醒する。


「そうだ!あの二人は!?」


 そう思うといても発ってもいられず、起き上がる。


「目が覚めましたか?」

「ああ、目が覚めた。僕がここにいるってことは間違いなく二人もいるんだろ?」

「はい」

「そうかよかった」


 今僕が話している人は、『運営の人』だ。

 僕はどうやら運営に助けてもらえたらしい。


「とりあえず、お二人のところへ行きましょう。お二人もそろそろ目が覚めるはずです」

「そう、ありがとう。じゃあ案内してくれ」

「そこの場所にいます」

「あっ、そう……」


 なんだろう。の出鼻をくじかれた感は。


「それにしてもアンデッドプレイヤーと呼ばれるあなたがまさか負けるなんて思いませんでした」

「逆だ。死なないことに余裕をかましたから負けたんだ」


 僕の持つ『再生』というスキルはそういうものだ。

 仲間が死んでしまえば意味がない。逆に仲間を自分のみを犠牲にして守ればそれだけで負けることはない。それこそ、盾士に向くスキルだ。

 前線で戦う剣士系統のやつらにも使えるが。


「僕は、あの二人を守れなかった。残念だけどそれは事実だよ」


 僕が奥歯を食いしばる。もしこれがリアルなら、間違いなく歯が欠けていたであろう。


「二人のことは頼む。僕はこれから直接運営の人たちのところへいって情報を渡してくる」

「分かりました」


 僕は運営の人にそう言って、その場をあとにする。

 今までの会話を聞いて疑問が多々あったことだろう。

 僕ら『デルタライン』は普通のプレイヤーではない。基本は一プレイヤーだが、その本当の姿は運営の犬だ。運営の犬という言い方はひどい気もするがある意味では間違っていない。

 

 僕ら『デルタライン』を含めたゲーム内約数百人のプレイヤーはこの運営の犬に当たる。

 その目的はゲーム内のバランスを整えることだ。このゲームはある意味鬼仕様のため、一度死ねばリセットされる。だが、ユーザー情報がリセットされるわけではない。死ねばそれだけ死んだ回数が運営に保存される。

 そして、バランスの調停のために僕ら運営の犬はいる。死に戻りをしまくっているやつらに知識と力を、後押しを。


 それが僕らの役目だ。

 基本的にはプレイヤーとして行動していればいいので楽な話ではあるが。

 そして目的の場所に着いた。


「失礼します」


 僕は声を発する。

 場所は別の意味で戦場。ゲーム内のプレイヤーが恐怖とモンスタート戦っているならここは時間と情報の戦場だ。

 現在のウイルス解析に加え、新たなるブロック。そして他にも逆にウイルスをハックしようというものまで現在進行形で開発の途中だ。


「やあ、鎌君。待っていたよ。僕らに情報をくれないか。君らを殺したモンスターについての情報がほしい」

「いえ、もちろんではあります。ですが、その前に一つやることがあります」

「なんだね?」

「ウイルスの解析。どれほど済んでいますか?」

「……残念ながら一パーセントもいっていない。下手に手を出せないんだ」

「なるほど。まあ予想はしていました」

「君ならどうにかできないことはないだろうけれど」

「僕らの予想が正しければあのウイルスには自我があります」

「…………!?」

「確かにどんなに優秀なAIでも自我を持たせるなんて事は不可能に等しいでしょう」


 確かにその研究自体は前々からあり現在もそれを行おうと必死だ。だが、今のところ開発のめどは立っていない。


「僕らを殺したのはそのウイルス本体です」

「プレイヤーではないのかね?」

「理由はまず三つあります」


 僕は一泊おき、口を開く。


「一つ目は、存在としてありえるはずのないMPK。おそらくあなた方はこのマップにおけるポップモンスターにMPKを設定していないはずだ。それなのにあの強さは異常ととらえたから。二つ目は僕の目で見たところ名前は分からず、ですがレベルは二百、つまり限界値。一度リセットされたゲームにレベル二百のプレイヤーなんてこの短期間に現れるはずがない。三つ目は、自我があるといったのはこれが一番大きな理由です。やつは言葉を放った」

「言葉を……話した?」

「ええ、口調は感情の起伏が感じられず、堅苦しいものでしたが」


 そこまでいったところで一度口を閉ざす。


「それこそ、まだプレイヤーとしての可能性のほうが圧倒的に高い」

 それでも、五十歩百歩といったところだろうが。


「先ほどもいったようにこの状況でレベル二百というのはまずありえない。名前を隠されるのはよほど多いレベル差のある『モンスター』にしか適応されないはずです」

「だが、しかし」

「名前を隠すスキルもあるでしょう。くどいようですが僕らが今トップとして歩んでいる以上あのレベルはありえない。僕らの知識はあなた方の知る最高の方法だ。それを覆すとなると、それこそ権限しかないでしょう」


 僕は、論を終えると一息ついて再びこういった。


「やつは自我はありますが感情と呼べるものはまだない。だから、今この情報を全て開放して、プレイヤーに知らせましょう。そしてそいつに対する警戒を行いつつプレイヤーを育てそいつを倒しましょう」

「……ああ」


 とはいえどただ、そいつを倒すのは惜しい。

 友達を利用するようで悪いが、トウマ君を頼らせてもらおう。ポロいわく、『ラブコメ系主人公』ならおそらくやつに揺さぶりをかけてもらうことができるはずだ。僕には到底、できそうにはないからね。


「まず、早速放送をしましょう。僕がします」


 放送のスイッチを僕は押した。


――――――


『ピンポンパンポーン。運営でーす。声で気づいてくれた人はいますか?鎌です。』


 その声を聞いた僕は、戦慄した。

 鎌……だって?


『僕はこのゲームのウイルス本体に抹殺され、リタイアの予定でした。ですが運営の方の働きにより、何とか運営側としてみなさんの役に立てることを嬉しく思います。

 というのも実は二割がた冗談でして、僕は一部の人で言われていたように運営の犬です』


 運営の犬。レアスキルをもらい、その情報を初心者に売る。プレイヤーの間では蔑称として用いられている。


『僕らはあなたたちのために戦った。だけど、それでもやつには勝てなかった。だから皆さん。僕たち運営の持つレアスキル。コモンスキルの情報を今から全て開放します。お願いします。あいつを『救ってやってください』。特にトウマ君』

「名指しかよ!」

『今は君は名指しかよ!とか叫んだんだろうね。でも、君ならいけると僕たちは踏んでいるよ。で、レアスキルの情報は掲示板に載せておくから皆さん確認してください。僕らは、運営側から特別なモンスターをポップさせます。本当だったら、ゆっくりでもいいから攻略してもらいたかったんです。急ぐと精神的に悪いから。ですが、ウイルスによって駆除された人間がいるという現実がある今そうは行かない。早めに決着をつけないとトップランカーたちがどんどん死んでいく。

 僕らは経験値マックス、ドーピングアイテム各種一個ずつをドロップするモンスター『ユドリミング』をポップさせます。トウマ君さぼんじゃねーぞ。以上、運営でした』


 なんで、こうなった……。

 何で僕、鎌からこんなことを言われてるんだろう。

 は、ははは。

 ま、まあ、やれることをやってやろうじゃねえか。しかも死んだと思ったのにまだ死んでやがらねえ。まさにアンデッドじゃん。


「……リーダー。足が震えてますが」

「む、武者震いだ」

「リーダー。歯ががたがた言ってるんだけど」

「ぜ、全身を使った崇高な武者震いだ」

「トウマー。周りまで振動が伝わってくるんだけど」

「よほど、強い武者ぶる―――って僕はバイブレーションじゃねえよ」

「いやだって、そうじゃないの」

「まあいいや。僕は今のままでいいから君らはレアスキルの情報を持っておいて。ドロップアイテムとかもちゃんと配分しよう」

「あの……トウマさん」

「何?クイナ?」


 クイナが不安げな顔をして話しかけてくる。


「鎌さんがトウマさんを指名した理由ってなんだと思います?」

「さあね。でも僕が抜擢されたって意味では素直にうれしいよ」


 あいつはどうしようもない中二病だが、それでもやることはちゃんとやる。それゆえに認められたという意味ではうれしい。

 『中二病(あいつ)』に選ばれたという意味では素直には喜べないが。


「とりあえずレベルを上げてみんなで挑もう」


 みんな一様に首を縦に振る。

 ホント、僕の言うこと疑いもしないよね。

 考えることを放棄してるのか。僕にそんなことを押し付けられても困るな。

 だが、みんなの重みは背負わなくてはなるまい。



 そして、僕らはユドリミングの討伐を開始した。




 よし、そろそろ終わりが近いな。

 あと、今の調子で十話以内に終わる予定。

 この場合『運営の犬』とは運営の監視下の元ゲームバランスを整える人たちです。

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